「ファイナルアンサー?」
司会が出演者に問うこの言葉が流行語となった「クイズ$ミリオネア」が、フジテレビ系でレギュラー番組として放送されたのは2000年から2007年まで。リーマン・ショックよりも前のことだと聞けば、「そんなに昔?」と驚く人もいるかもしれない。
ミリオネアは「億万長者」とあてられることもあるが、正確に言えばミリオンは「100万」だ。100万米ドルは日本円でおよそ1億円。1億円といえば十分に大金だが、最近ではMEGA BIG(メガビッグ)の1等が最高12億円で、「1億円」は聞いただけで驚くような額ではなくなっている。
今やお金持ちといえば「ミリオネア」よりも上の「ビリオネア」のことを言うのかもしれない。ビリオネアとは、資産10億(ビリオン)を持つ富裕層のこと。そんな超・大金持ちを資産額でランキングにしているのが米国の経済誌『Forbes』(フォーブス)による「世界長者番付」だ。日本では「長者番付」とされるが、オリジナルは「WORLD BILLIONAIRE'S LIST」。
その2021年版「The Richest in 2021」がこのほど発表された。
フォーブスが発表した「世界長者番付」顔ぶれは変わらず
上位の顔ぶれは毎年の恒例だ。首位は4年連続でAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏。保有する株式の価格が上がったことから、1年で資産を7兆円増やし、現在は20兆円近く保有していることになるという(なお番付の資産額はは2021年3月5日の株価と為替レートに基づいて算出されている)。
ベゾス氏以下10位までみると、2位がテスラのイーロン・マスク氏で、前年31位からの急上昇。3位はLVMH(ルイ・ヴィトンなどのグループ)のベルナール・アルノー氏と家族。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏までがトップ5だ。
6位にはバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏が入った(氏が5位以内に入らなかったのは約20年ぶりだそうだ)。オラクル共同創業者のラリー・エリソン氏、そしてGoogle共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン両氏、10位はインド最大の民間企業、リライアンス・インダストリーズ会長のムケシュ・アンバニ氏となっている。
今年リストに入ったビリオネアの数は2755(人といえないのは「家族」もあるから)で、過去最多を更新。また、中国の数が745人にで初めて米国(724人)を抜いて国別で最多となったという。
さてここまで見てくれば、超・大金持ちになるには起業家になる選択肢しかないことがよく分かる(バフェットは起業家というより投資家と呼びたいところだが)。そして、ここまでトップ10しか見ていないが、11位以下も起業家が名を連ねている。
たとえば今年仲間入りした有名人に、リアリティショーで人気のキム・カーダシアン氏がいるが、氏も芸能人・タレントとして番組出演料だけで稼いでいるわけではなく、化粧品ブランド「KKWビューティー」や補正下着「スキムズ」などを立ち上げるなど実業家として収入を得、資産を築いている。
日本のトップ10はどうか?
ところで日本の状況はどうだろうか。トップの10人の保有資産と、各氏が立ち上げた企業は次のとおり。日本のランキングも上位はビジネスを起こして成功した人物ばかりだ。
1位 孫 正義氏/454億ドル(ソフトバンク)
2位 柳井 正氏/441億ドル(ファーストリテイリング)
3位 滝崎武光氏/258億ドル(キーエンス)
4位 永守重信氏/87億ドル(日本電産)
5位 高原豪久氏/79億ドル(ユニ・チャーム)
6位 三木谷浩史氏/67億ドル(楽天)
7位 似鳥昭雄氏/52億ドル(ニトリ)
8位 重田康光氏/49億ドル(光通信)
9位 安田隆夫氏/43億ドル(ドン・キホーテ)
10位 伊藤雅俊氏/40億ドル(セブン&アイ・ホールディングス)
10位 森 章氏/40億ドル(森トラスト)
10位 野田順弘氏/40億ドル(オービック)
こうやってみてくると、そもそも起業以外に超・大金持ちになる選択肢などなかったのだとあらためて気づかされる。
「起業無関心層」の割合、米中は2割なのに日本は7割
「超・大金持ちになるには起業家になる選択肢しかない」と書いたが、番付に名前が載った起業家たちも「お金持ちになりたい」と事業を起こしたわけでもないだろう。
起業した理由はそれぞれだろうが、おそらくは、「人生で成し遂げたい目標ができ、その達成のために起業した」、「直面した課題を解決したり誰かを助けたりするための手段として起業しかなかった」といったことではないだろうか。単に「お金持ちになりたい」だけでここまで桁外れの資産が築けるとは思いがたい。
さて「巨額の資産を築くには『起業』しかないぞ」などと言われても、そもそも「超・大金持ちになんてなりたくない(ならなくていい)」という人もいるだろう。また「起業しても成功するとは限らない(失敗が怖い)」という考もあるだろう。「サラリーマンのほうが気楽でいい」という意見ももっともではある。
サラリーマンがサラリーマンとして働けるのは、サラリーマンを雇う起業家・オーナーがいるからだが、それはさておき、誰もがオーナー・雇う側になりたいわけでも、向いているわけでもない。
しかし、起業をするつもりや、超・大金持ちになりたい気持ちがない人でも、こうした成功者たちにに学べることはあるはずだ。アントレプレナーシップは企業や組織の中でも発揮できる。
ただ残念なことに、日本には「起業に対する意識が低い」という実態がある。スタートアップ界隈でよく嘆きの声とともに聞かれるのが、「アメリカでは優秀な学生は起業し、日本で優秀な学生は大企業や役人になる」と言われることだ。これを裏付けるデータもある。中小企業白書に示された「起業無関心層」の国際比較を見ると、米国や中国は2割程度しかいない起業無関心層が日本は7割を超えている。
働き方は多様化している。起業すること、お金を稼ぐことへの意識にも変化を
2020年は新型コロナウイルスの感染が拡大し、リモートワークが一気に広がった。新卒採用された企業で定年退職まで勤め上げるという、ひと昔前の常識は今、決して当たり前ではなくなってきている。副業や復業を大手企業が認めるようになった。このように、働き方、仕事観は明確に変わってきている。
いつ働くか、どこで、どう働くかを(昔と比べればきっと)柔軟に自分で決められるようになっている。少なくとも「超・大金持ち」になりたいなら起業するしかないだろうが、とはいえ起業を選ぶか、組織の一員となることを選ぶのか、いずれも選んで副業・複業の道を歩むのか、選択肢は人それぞれだ。誰もが起業を目指す必要はない。大企業や官庁に勤めて生きる能力もあるだろう。誰もが超・お金持ちを目指すべきだとも思わないし、そもそも幸せの尺度がお金だけということもない。
しかし、起業無関心層が多いからかどうかは分からないが、起業家に対するリスペクトが足りないのではないかと感じることがある。
たしかに「起業する」も「起業しない」と同じ選択肢の一つではある。ただ社会、経済に与えるインパクトは異なる。だから、たとえ自分が業を起こすことに関心がなくとも、リスクをとって起業している人に対するリスペクトはもっとあってもいいのではないだろうか。付言するなら、とかくネガティブにとらえられがちな「お金を稼ぐこと」に対するイメージも、もっと前向き、ポジティブなものになっていいのではないだろうか。
そうした変化は、きっと国を豊かにし、未来を明るくするはずだ。dメニューマネーではそうした前向きな変化につながるような記事やサービスを届けていきたい。
文/編集・濱田 優(dメニューマネー編集長)
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