「インボイス制度」は個人事業主だけの問題じゃない?会社員が考えるべき影響

2023/09/27 05:00

10月から始まるインボイス制度は、個人事業主だけでなく、実は会社員や公務員、一般消費者にも影響があります。 インボイス制度とは売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるために適格請求書が原則求められる制度のことです。会社員や公務員の場合は、経費の精算時にインボイスが必要になる場合があります。 そのほかさまざ

10月から始まるインボイス制度は、個人事業主だけでなく、実は会社員や公務員、一般消費者にも影響があります。

インボイス制度とは売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるために適格請求書が原則求められる制度のことです。会社員や公務員の場合は、経費の精算時にインボイスが必要になる場合があります。

そのほかさまざまな場面で影響があるので、個人事業主以外の人も制度のことを理解しておきましょう。

会社員や公務員、一般消費者への影響

インボイス制度は、会社員や公務員の場合は経費精算時の事務作業や経理業務、一般消費者はわずかですが電気代に影響があります。

経費精算でインボイスが必要な場合がある

会社員は、経費精算でインボイスが必要な場合があります。出張費や宿泊費、3万円未満の公共交通機関による移動はインボイスが免除されますが、タクシーによる移動や交際費は原則としてインボイスが必要だからです。

インボイスがない場合、出張に通常必要な費用とみなしてインボイス不要とするか、1万円未満の少額はインボイスが不要になる特例を利用して処理できます。

ただし、会社がインボイスを必要と判断した場合、インボイスを発行できるタクシー業者や飲食店などを利用する必要が出てくるでしょう。

経理部門に勤める会社員は業務が複雑になる

経理部門に勤める会社員の場合、業務が複雑になります。インボイスがある領収書やレシートはこれまで通り経費にできますが、それがない場合はインボイスが不要になる特例に当てはまるかを個別に判断しなければいけません。

当てはまらないものは、支払った消費税のうち80%までしか経費に算入できないため、別々に計算する必要があります。インボイス制度により1人当たり毎月1~2営業日の業務時間増となる調査結果もあり、経理部門の負担は大きいです。

経理部門以外の会社員も業務時間が増える

インボイスがある領収書とない領収書の仕分けをする必要があるため、経理部門以外の会社員も経費精算時の業務時間が増えます。

インボイスがない領収書の中でも、出張費にあたるものはインボイスが免除、交際費などは必要になり、領収書ごとに経費の申請方法が変わる可能性もあるでしょう。

会社員がインボイス制度対応で増える業務時間をコストとして計算すると月3,000億円を超えるともいわれており、インボイス導入により増える税収をたった1ヵ月で上回る見込みです。

インボイスで電気代がわずかながら上がる可能性も

会社員や個人事業主以外の消費者も他人事ではなく、インボイス制度によって電気代が上がる可能性があります。

電気代が上がる原因は、太陽光などの再生可能エネルギーを固定価格で買い取るFIT制度によるものです。FIT認定を受けた一般家庭などの太陽光発電で得られた余剰電力を電力会社が買い取ります。

余剰電力を買い取ってもらう一般家庭は、免税事業者であることが多く、資源エネルギー庁がインボイスの登録は不要と明言しているため、電力会社は支払った消費税分の80%までしか経費に算入できず、残り20%は電力会社の負担となります。

この負担分について、電気料金に加算して利用者に負担させる案が検討されており、仮に成立すれば月数円程度ではありますが電気代が上がる可能性もあるでしょう。

インボイス制度の問題点

インボイス制度には3つの問題点があります。直接報酬などに影響がある個人事業主だけでなく、間接的には会社員や一般消費者にまで影響が及びます。

報酬の減額を求められる懸念がある

個人事業主でインボイスが発行できない場合、取引先から報酬の減額を求められる懸念があります。

一方的な報酬の減額は独占禁止法上問題になるものの、公正取引委員会によると「双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではない」とのことです。

また、インボイスが発行できないことを理由とした報酬の引き下げは下請法違反ですが、質が落ちたなど個人事業主側に責任があったとして引き下げる場合は、必ずしも違法とは言い切れません。

このような理由から、個人事業主がクライアントから報酬の引き下げを求められる例があります。

2026年9月30日までは、インボイスがなくても消費税の80%までは経費に含められるので影響は少ないものの、2026年10月以降は50%、2029年10月からはインボイスがない限り経費にならないため、インボイスに登録していない個人事業主への影響は大きいでしょう。

個人情報が流出する可能性がある

個人事業主がインボイスに登録する場合、個人情報が流出する可能性があります。インボイス登録時は自分の名前、登録番号、登録年月日が公表されるため、ペンネームなどで活動している人は本名が第三者に知られてしまいます。

住所は公表されないものの、本名を隠したい人は法人になるか、インボイスを登録しないままでいるしかないでしょう。

経理や経費処理などの負担が増える

個人事業主に限らず、会社員も経理や経費処理などの負担が増えます。増えた負担を企業が商品やサービスの価格に上乗せする可能性も考えられるため、最終的には消費者にも負担増となって影響が出るでしょう。

たとえば、農産物は、農協や卸売市場に出荷する場合は特例によりインボイスは不要となるものの、直売所や道の駅が農産物を買い取っている場合は、インボイスの発行を求められる可能性があります。

農産物の仕入れなどで発生したコストを誰が負担するかによりますが、値上げをして消費者に負担を求める可能性も十分考えられます。

インボイス制度は間接的にみれば国民全員に影響がある

インボイス制度は、間接的にみれば個人事業主だけにとどまらず、会社員や一般消費者にも影響があります。

制度そのものは10月に始まるので避けようがありませんが、できる限り業務を効率化し、インボイスによるコストの増大を抑えていく必要があるでしょう。

文・北川真大(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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