イスラム武装組織とイスラエルの大規模衝突が勃発、直後の金融市場への影響は限定的のようだが、気になるのは戦争によって日経平均株価はどう推移するのかということだ。戦争が始まって株価が下がった場合、“株の買い時”と考えられるのか。
ハマスとイスラエルの大規模衝突の背景
中東・パレスチナ自治区のガザ地区で10月7日、イスラム組織(アラブ人)の武装組織ハマスが、イスラエル(ユダヤ人)への空爆を始めたと報じられた。
背景には、パレスチナにおけるイスラム教とユダヤ教の歴史的、宗教的な紛争がある。国連は1947年に解決策としてパレスチナの分割を提案。ユダヤ人は受諾して、1948年にエルサレムがある地域にイスラエルを建国したが、アラブ人は今でもイスラエルを認めていない。
大手紙の解説によると、ハマスは、1987年に結成されたアラブ人武装組織で、パレスチナのガザ地区、ヨルダン川西岸地域を実効支配しているという。このため、パレスチナとイスラエルで領土、国境の問題などの衝突が繰り返されている。
戦争は「原油高」「株売り」「債券買い」と言われるが、今回は──?
こうした状況は市場にも影響する。まず原油の主要産地である中東状勢の不安から、原油価格が高くなる。投資家がリスクを回避するため、株を売り、債券を買うため、株安、債券高(金利は低下)となるのが教科書的なお決まりの動きだ。
10月7日にイスラエル情勢が伝わると、週明けの10月9日に原油の指標であるWTI先物価格は1バレルあたり87ドル台になった。5%を超える急騰だ。
10月9日のNYダウは前日に比べ197ドル高だった。日本株はそれまで米国の調整に合わせて下がっていただけに、NYダウの反発をきっかけに上昇。10月10日の日経平均は751円高と今年最大の上げ幅だった。
ただ動きだけを見ると、戦争を受けた上昇とも見られるが、そうとも言えない。米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ長期化懸念の後退で上昇したという要素が大きいと考えられるからだ。
なお、ハマスによる大規模攻撃の報道を受けた10月10日の国内株式市場では、石油資源 <1662> が10.7%高、INPEX <1605> が8.6%高となり、資源系の銘柄に買いが集まった。
イラク戦争(2003年)やウクライナ戦争(2022年)時はどうだったか
投資の格言に、「遠くの戦争は買い」「戦争は号砲とともに買え」というものがある。なぜそう言われるかというと、地政学リスクによる株価下落は短期的には売られるが、買い場になることことが多いからだ。
たとえば、2003年3月から2011年まで続いたイラク戦争では、開戦した2003年3月がNYダウの底値だったが、開戦をきっかけに上昇に転じた。日経平均はおよそ1ヵ月遅れて4月に7603円の大底をつけた後、2007年2月の1万8300円まで2.4倍ほど上昇した。イラク戦争は“買い場”(投資チャンス)を提供したわけである。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の影響はどうかというと、NYダウは2023年10月安値までジリジリと下げている。これは米国の長期金利が上昇した影響が大きい。現在、NYダウはウクライナ侵攻前の水準を回復している。
一方、日経平均はどうかというと、2022年の安値は3月の2万4681円。開戦後2週間ほどで底打ちした。その後2023年6月に3万3772円と平成バブル崩壊後高値をつけるまで上がっている。過去2回を振り返ると戦争は“買い場”だったといえる。
ただし、足元の株式市場の動きを見る限り、市場関係者の懸念は戦争よりも米国の長期金利の動向にありそうだ。インフレに伴う米国の長期金利がさらに上がるのか、高止まりするのかが、戦争・紛争の行方以上に注視されている。
文/編集・dメニューマネー編集部
【関連記事】
・「老後破産」しないために読みたい
・ブラックリストでも作れるクレカ5選【PR】(外部)
・今持っている株を売って新NISAで買い直したほうがいい?
・会社に転職活動がバレない転職サイトの機能
・「dジョブスマホワーク」で高ポイントをもらう方法