高級住宅地を歩いていると、豪邸のガレージにフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレン、アストンマーティン、ポルシェなどの1台2,000万円を超えそうなクルマたち、いわゆる“超高級車”を見かけます。

なぜ富裕層は超高級車を所有するのでしょうか。見栄を張りたい気持ちや、経済的余裕から単純に贅沢をしたいという気持ちもあると思いますが、その他にも富裕層ならではの理由があります。

理由1 法人名義で購入することで節税になる

法人名義で購入する目的はいくつかありますが、その主な理由のひとつが「節税」です。そのカラクリを理解するためのキーワードが「減価償却」です。

富裕層の多くは会社経営者や開業医などの法人オーナーです。豪邸のガレージに格納されているフェラーリやランボルギーニは実は個人名義ではなく、法人名義で購入されている可能性もあります。

減価償却とは、クルマなどの固定資産の購入費用を使用可能期間に応じて費用計上する会計処理です。簡単に説明すると、法人名義でクルマを購入した場合、購入費用が経費扱いになり、法人の利益を押し下げ、支払う法人税が減って節税になるのです。

経費と認められるためには毎日の通勤や顧客訪問に使うなど、事業目的のみに使用する必要があります。法人でフェラーリを買って法人税を節税しつつ、プライベートな旅行やデートに使うことはできません。

理由2　値崩れしにくい（投資目線）

実はフェラーリをはじめとした超高級車は、その希少性ゆえに値崩れしにくく、中古市場（セカンダリーマーケット）で高値で売却しやすいという特徴があります。

富裕層には費用対効果を厳しくジャッジする人が多いです。必要なものにはお金を惜しまない一方、価値のないものには一銭も出さないという人もいます。それはクルマを買うときにも当てはまるのです。

ずっと同じクルマに乗る人は少なく、たいていは定期的に買い替えをするでしょう。例えば、高級外車の人気ブランドであるメルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどの800万円クラスの新車を5年使用した後、中古市場で売却するとします。このクラスのクルマは供給量も多く5年後の中古市場では大きく値下がりしてしまうことが多いです。仮に売却代金が200万円だったとしましょう。

一方、3,000万円で買ったフェラーリを5年使用した後、中古市場で売却するとします。フェラーリは年間の供給量が絞られているため、あまり値崩れしません。仮に2,700万円で売却できたとしましょう。

前者は実質600万円（800万円-200万円）で5年間乗れたことになり、後者は実質300万円（3,000万円-2,700万円）で5年間乗れたことになります。ランニングコストを勘案しなければ、フェラーリのほうが半分の金額で済みます。フェラーリに乗る精神的な満足感や、その他のメリットも加えれば、後者のほうが経済的であると判断する富裕層が多いというわけです。

　800万円クラスの新車メルセデスを5年使用→　売却額 200万円=実質600万円
　3,000万円の新車フェラーリを5年使用→　売却額2,700万円＝実質300万円

また、超高級車のなかには、値崩れしにくいどころか値上がりし続けている車種もあります。投資目的でクルマを購入することは「クラシックカー投資」とも呼ばれており、一部のクルマ好きの富裕層の間で行われています。

理由3 超高級車はコミュニティへの参加チケット

実は、超高級車のオーナー（所有者）のみが参加できるコミュニティが数多く存在しており、超高級車を所有することが、このようなコミュニティへの参加チケットになっているのです。

コミュニティのイメージとしては、「○○地域でフェラーリを所有している人のみ参加できる交流クラブ」といったものです。そのようなコミュニティ内でツーリングやパーティーを企画し、会員同士で交流を楽しむのです。

富裕層は資産をたくさん持っているがために、否が応にも色々な人が寄ってきてしまいます。そんな富裕層にとって、同じレベルや目線で会話できるコミュニティは貴重です。新たな刺激を得たり、ときには仕事のパートナーになったりすることもあります。

超高級車を所有する理由は見栄やぜいたくだけではない

富裕層がフェラーリなどの超高級車を所有する理由を解説してきました。見栄やぜいたくもあるでしょうが、それだけの理由で所有しているわけではありません。豪邸のガレージで超高級車を見かけたら、どのような人がどのような目的で所有しているのか、考えてみてはいかがでしょうか。

文・菅野陽平（ファイナンシャル・プランナー）
編集・dメニューマネー編集部

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（2021年3月23日公開記事）