株式投資をしていた親が亡くなると、株の相続手続きが必要になるのはNISAでもNISA以外の課税口座でも同じですが、相続してから株を売ったときにかかる税金には違いがあります。
株式投資をしていた親が亡くなった!相続手続きは?
株式投資をしている親が亡くなった場合、名義を相続人(相続財産を受け取る人)に変えなければいけません。相続人の名義に変えなければ、売れないので、たとえ親が持っていた株を相続人が持ち続けたくなくても、一度自分の名義にする必要があるためです。
相続税を出すときは、相続した株の評価額を計算し、株以外の相続財産(不動産や預金など)と合計して遺産総額を計算します。その金額が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の人数))より大きい場合、基本的に相続税がかかります。
上場株式の相続税の評価額は、次のうち最も低い金額です。それは、「亡くなった日の終値」「亡くなった月の毎日の終値の月平均」「亡くなった前月の毎日の終値の月平均」「亡くなった前々月の毎日の終値の月平均」です。
この手続きや株式の評価の方法は、親が株式を持っているのがNISA口座であっても、それ以外の、特定口座などの課税口座でも同様に扱います。ただ、親のNISA口座から相続人のNISA口座へは移せないので、課税口座で引き継ぐことになります。
NISAでは親の生前の利益には税金がかからない
親が持っていた口座が「NISA口座」か「課税口座」かで、相続人がその株を売るときの税額が変わります。なぜなら、NISA口座かどうかで、株の取得日(買った日)と取得価額(買付金額)の考え方が異なるからです。
親の口座が「NISA口座」だった場合、株の取得日は親が亡くなった日とされるので、取得価額は「亡くなった日の金額(終値)」となります。 しかし、「課税口座」の場合は、取得価額は「親が買ったときの金額」です。
たとえば、親が10万円で株を買い、20万円になっていたときに亡くなり、その後、相続人が自分の課税口座に移し、30万円で売ったとします。
この場合、親の口座がNISA口座だったら、相続人の譲渡益は10万円(30万円-20万円)ですが、課税口座で持っていた場合は、20万円(30万円-10万円)となり、NISA口座から相続した場合のほうが、所得税・住民税が軽くなります。
NISAを相続する場合、資産の値下がりに注意
このように、親の口座がNISAのほうが得になるケースはありますが、それは、「買った株が相続のタイミングで値上がりしていた場合」であって、反対に値下がりしてマイナスになっていた場合は、損してしまうかもしれません。利益がなくても税金がかかるかもしれないからです。
先ほど触れた例で、親が20万円で買った株が、亡くなった日に10万円になり、その後20万円で相続人が売ったとします。
この場合、親が株を課税口座で持っていた場合は、相続人の譲渡益は0円(20万円-20万円)ですが、親の口座がNISAだった場合、譲渡益が10万円(20万円-10万円)となってしまうので、相続人は実際には利益は得ていないのに、税金がかかってしまうのです。
相続で受け継いだ株は、値下がりして売っても実際には損をするわけではないので、状況によってはすぐに売ることを検討してもよいでしょう。
文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部