1月から始まった新NISAは、対象の公募株式投資信託(投信)への資金流入額が約1兆3700億円と高水準で、好調なスタートを切ったといえる。この特需が、世界株高や円安を演出した可能性も高い。新NISAで注目されているのが、「オルカン」だが、人気投信を買う際に注意点はないのだろうか?
新NISA効果で2007年8月ぶりの資金流入 人気はオルカン・S&P500
新NISAが始まった2024年1月のNISA対象投信への資金流入額は、約1兆3700億円だった(日興リサーチセンター)。投信の新規設定額から解約・償還額を差し引いた資金純増額は、約1兆2700億円と2007年8月以来17年ぶりの高水準だった。
なかでも人気を集めた投信が「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(通称オルカン)と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」だ。このファンド2本で、流入額の約45%を占めた(オルカン 約3400億円、S&P500 約2000億円)。
オルカンは2018年10月に設定され、設定来2.2倍、過去3年で68%高、過去1年で32%高とパフォーマンスが非常に優れている。対象としている指数の上昇率が高く、円安もサポートしている。さらに同シリーズは手数料が安いことでも注目されている。
資金流入額ベスト10の投信うち、9銘柄が全世界や米国株に投資するファンドだった。
投信の分類別では、「グローバル株式(為替ヘッジなし)」型に約 1 兆 2000 億円が純増となった。この期間に、NISAへの新規資金で外国株投信を1兆2000億円ほど買ったことになる。
国内株式型へも約1400億円あったが、グローバル株の人気が圧倒的だった。
日本人マネーが世界の資金動向を変える?
新NISAの資金で、世界の投資資金の流れも変わった。米国株を中心に世界に流れ、世界株高の一因となった可能性もある。
また外国株を買うためには、円を売り、外貨を買う必要がある。ブルームバーグの報道では、1月月間では新NISAによる円売りが8000億円に上ったとの推計もあるという。
日本株でも、新NISAによる買い付けは、投信の1300億円に加え、個別銘柄にも高水準の新規資金が入ったようだ。日本株34年ぶり高値の一因となったとの見方も強い。
人気のオルカンにも死角あり! 投資先は米国株に集中
人気のオルカン・S&P500だが、注意点も当然ある。特に米国株の下落リスクだ。
商品名称に“オールカントリー”とあるが、1月末時点でのポートフォリオは米国株が約63%、日本株が約5%、新興国が約10%と米国株に大きく偏っている。リスク分散投資のつもりで買っている人は見落としがちなので注意したい。
日本人が米国株に投資をする場合、円安が反転し、円高になったときは円換算で損が広がる。もし円高になれば日本株のパフォーマンスのほうがよくなることもありえる。
NISAは長期の資産形成のための投資制度で、特に「つみたて投資枠」では、上がっている市場を飛びついて買うよりも、安いところをしっかり投資することの効果が大きい。
オルカンとS&P500へ投資を集中させることが、長期運用という目線で分散投資したことになるとはいいにくい点には注意したい。
文/編集・dメニューマネー編集部