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楽天グループが3390億円の赤字決算から急騰、優待「楽天モバイル1年無料」が人気

2024/02/28 05:00

楽天グループ <4755> が2月14日に発表した2023年12月決算で、モバイル事業の苦戦で最終赤字は3394億円と5期連続の大幅赤字だったが、1年4ヵ月ぶりの安値圏にあった株価が、翌日から3日で28%高と急騰した。なぜ市場の評価が一転したのか? 最大の注目は株主優待「楽天モバイル、1年間無料」 SNSで

楽天グループ <4755> が2月14日に発表した2023年12月決算で、モバイル事業の苦戦で最終赤字は3394億円と5期連続の大幅赤字だったが、1年4ヵ月ぶりの安値圏にあった株価が、翌日から3日で28%高と急騰した。なぜ市場の評価が一転したのか?

最大の注目は株主優待「楽天モバイル、1年間無料」

SNSで話題になったのは株主優待変更だ。今までの年間配当4.5円を無配にするかわりに、株主優待として楽天モバイルの「音声+データ(30GB/月)プラン」を株主全員に1年間無料で提供することにした。

今までも株主優待による楽天モバイルの特典はあったが、データ通信のみの無料提供で、保有株式数、保有期間により3ヵ月から半年の期間だった。

楽天の「音声+データ通信(30G)」の料金は月2780円、年間では3万3360円だ。2月22時点の株価は763.5円。7万6350円(手数料抜き)で最低単位の100株が買える。楽天モバイルの利用者にとっての無料通信代分の優待実質利回りは4.3%と魅力的だ。

もし株価が上がるなら、売買益も期待できる。これが楽天グループ株の評価が一転した最大の要因だったようだ。

楽天モバイルの契約回線増

株高の要因は株主優待だけではない。赤字ながら業績に改善の兆しがあったことも一因だ。

まず楽天モバイルの契約数が伸びている。2022年の「0円プラン廃止」で減少する時期もあったが、増加に転じている。2023年12月末の契約数は596万回線となった。2022年末比で150万回線(34%)増えた。

つながりにくいなど通信品質を理由とした解約率が8%台だった時期もあるが、2023年12月期の解約率は1.1%にまで低下した。

月間のコストもKDDI <9433> との契約によるローミングなどで、2022年9月比で160億円の削減を達成している。株主優待で契約回線数の増加が加速する可能性がある。楽天では、2024年12月には800~1000万にまで契約回線数を増やしたいとしている。

楽天モバイルの赤字が大きく縮小している

楽天グループの2023年12月期の決算は、売上高が7.8%増の2兆713億円、本業の利益である営業利益は2128億円の赤字だった。楽天モバイルの巨大な先行投資がまだ回収できていない。

しかし、前の期の3716億円の赤字からは赤字幅が1587億円も縮小した。うちモバイル事業は3375億円の赤字、前の期の4792億円の赤字からは1417億円改善している。

楽天トラベル、楽天市場などのインターネットサービス部門、楽天銀行、楽天証券、楽天カードなどフィンテック部門は好調だ。問題のモバイル部門は、契約数増とコスト削減で赤字幅が改善しはじめた。

楽天グループの2023年12月期の第4四半期(10〜12月期)だけの営業赤字は332億円にまで減ってきた。四半期ベースの営業赤字幅はピークが2021年第4四半期(10〜12月期)の1186億円だった。黒字化も期待出来るレベルになってきている。

営業利益に減価償却費分をもどした利益をEBITDAという。楽天のように大きな設備投資をして減価償却が多い企業は、EBITDAに着目したほうが実際の業績が見えやすい。

楽天では、2024年中に月次でEBITDAの黒字化、2025年に通年での黒字化を目標としている。もしその可能性が高まるなら株価の水準訂正もあるかもしれない。

文/編集・dメニューマネー編集部