奨学金の一部または全部を勤め先が代わりに返済してくれる制度があり、この制度を取り入れている企業へ就職すれば、奨学金の返済による生活の負担を軽くできるかもしれない。実際に取り入れている企業では、借入額のどれくらいの割合を返済してくれるのだろうか。
奨学金の平均借入額はおよそ310万円
日本学生支援機構(JASSO)に奨学金を返済している1万6,000人以上を対象にした調査によると、奨学金の平均借入額はおよそ310万円だった。
また、毎月の平均返済額は1万5,000円、平均返済期間は14.5年となっている(2022年に労働者福祉中央協議会が実施)。
「奨学金代理返還制度」を使うと勤め先がJASSOに直接送金する
奨学金の一部または全額を勤め先が代わりに返済する取り組みは「奨学金代理返還(返還支援)制度」と呼ばれ、勤め先からJASSOに直接送金される点が特徴だ。
以前は社員の給与振込口座などに支援金を支給する方法しかなかったが、2021年4月より企業からJASSOに直接送金できるようになった。
これには、社員の所得税や社会保険料の負担が抑えられるというメリットがある。
支援金が給与に上乗せして振り込まれると、所得税や社会保険料の計算対象となってしまうからだ。
企業から直接送金すれば通常の給与と分けて考えられ、税金などの計算対象にならない可能性が高い。
実際に制度を取り入れている上場企業もある
2023年12月時点で全国の1,463社がこの制度を導入しており、その中には上場企業もある。
かっぱ寿司や、牛角などの飲食店を経営する株式会社コロワイド <7616> などだ。
2022年4月から運用を始め、2022年4月1日以降にコロワイドグループに新卒として入社した社員のうちJASSOの奨学金を利用している人を対象に、月の返還額の50%を負担している。
コロワイドの制度では支援金が所得としてみなされず、所得税や住民税、社会保険料の負担を抑えられる点がメリットだという。奨学金の返済に何年かかるのか、どれくらいの社員が使っているのかは明らかになっていない。
勤め先でこの制度を使うときに注意しなければならないのが、企業によっては支援金を給与に上乗せして支給している場合もある点だ。
この場合、奨学金の負担は軽くなる一方で、支援金をもらわなかったときと比べて所得税などの負担が増える可能性が高い。
どのような企業がこの制度を取り入れているのかは、JASSOのWebサイトから確かめられる。大学卒業後に発生する奨学金の返済に不安があるなら、このような制度を導入している企業への就職を考えるとよいだろう。
文・廣瀬優香(フリーライター)
編集・dメニューマネー編集部