病気やケガなどで生活に支障が出ているとき、頼りになるのが「障害年金」です。申請して認められれば、障害の程度などに応じてお金が受け取れます。困ったときの生活の支えになってくれる障害年金ですが、受け取ることで発生するデメリットもあります。どんなデメリットがあるのか申請前に知っておきましょう。
障害年金とは
障害年金の基本をかんたんに整理しておきましょう。障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れます。老後に受け取れる「老齢年金」と違い、若い世代でも対象になります。
手・足・目・耳など身体の一部が不自由な方が受け取るイメージがあるかもしれませんが、がんや糖尿病、精神疾患や認知症などでも受け取れる可能性があります。受け取れる金額は、加入していた年金制度や障害の程度、家族構成によって違います。
後述するデメリットはありますが、困っているなら積極的に活用したい制度です。
デメリット1.扶養から外れる可能性がある
ここからはデメリットを見ていきましょう。まず1つめは、障害年金を受け取って収入が増えることで、扶養から外れる可能性があるという点です。
扶養に入れるかどうかは「年収180万円」が基準になります。通常は「年収130万円」ですが、障害年金を受給している場合は50万円緩和されます。障害年金だけでなくパートなど別の収入がある方はその合計額で考えましょう。
扶養から外れると健康保険料の負担軽減が受けられなくなります。ただし、扶養から外れて負担が増えたとしても、障害年金として受け取れる金額の方が大きいです。ちなみに障害年金は非課税ですので、所得税や住民税はかかりません。
デメリット2.死亡一時金と寡婦年金が受け取れなくなる
死亡一時金とは、自営業など第1号被保険者だった人が3年以上国民年金保険料を支払っていたのに老齢基礎年金を受け取らないまま亡くなったとき、家族に支給されるお金です。
寡婦年金は、第1号被保険者で保険料納付済期間と免除期間を合わせて10年以上ある夫が、老齢基礎年金を受け取らずに亡くなったとき、妻が受け取れるお金です。
これらはどちらも、障害基礎年金を受け取っている人が亡くなった場合は対象外です。ただ、死亡一時金と寡婦年金が関係するのはおもに「自営業で子どもがいない人」で、金額もそこまで大きくありませんので、障害年金を受け取る方がプラスになるでしょう。
デメリット3.手続きが煩雑で時間がかかる
障害年金を受け取るためには、所定の書類をそろえて申請の手続きをする必要があります。この手続きはいくつもの書類を用意する必要があったり、書類の書き方1つで受け取れる金額が変わってしまうことがあったり、なかなか複雑です。
また、一度受け取り始めてからも、基本的に更新の手続きを行っていく必要があります。心身に障害がある状態で行うこともあり、困難に感じる方も多いようです。
また、障害年金は初診日から原則1年6ヵ月を経過したあとでないと申請できません。ようやく書類をそろえて提出できたとしても、障害年金受給が認められるまでに3ヵ月、実際にお金が入ってくるようになるのはそこからさらに1ヵ月~2ヵ月程度かかります。
請求の手続きで困ったら、年金事務所などに問い合わせて確認できるほか、費用はかかりますが代理請求を専門にしている社会保険労務士に依頼するという方法もあります。
障害年金はデメリットよりメリットの方が大きい!
障害年金は手続きに手間と時間がかかるうえ、扶養から外れたり死亡一時金などが受け取れなくなったりする可能性もあります。ただ、それをおおいに上回るメリットがあります。「受け取れるかも」と思ったら、年金事務所やねんきんダイヤル(日本年金機構の電話相談窓口)に問い合わせてみましょう。
関西学院大学商学部卒業後、銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。
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