保険というと社会人や家庭を持つ人が入るものというイメージが強いのではないでしょうか。
大学生でも保険は必要なのか、まずはどんな点に注意をして保険を考えていけば良いのかを紹介していきます。
大学生の保険加入率の割合は?
保険の話をする場合、よく加入率が高いとか、データ的には……とかいった言葉を耳にしますが、当方としてはあまり意味がないと考えています。極端な話全く考えなくていいと思います。
いわゆる一般データといった類のものの場合、自分にとっての状況とは異なります。それを一般データに照らし合わせて「自分も保険に加入すべきなんだ」などと考えること自体無意味です。
それよりもどのようなリスクが高くなるのかを理解した上で、自分に必要な保障をカバーしてくれる保険をコストも含めて検討し採用することが大切だと考えます。
ちなみに生命保険に対する加入率は、生命保険文化センターによる全国実態調査によると、29歳以下の世帯主加入率は70.2%、90歳以上を含めた全体では89.8%ですが、これもしかり、このデータ数値より自分の置かれている環境を考えて何が必要か不要かを判断し、その上で加入検討をすることが大切です。
データとはあくまで結果であり、管理する側の指標であって、だから自分はこうすべきなんだといった指針ではありません。
参照:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
大学生に保険が必要な理由
ではどのようなことを考えるべきなのか……ですが、やはり大学生となると社会的にも子供というよりは大人に近い感覚で見られる場合が多いかと思います。
私も学生時代一人住まいを始め、夜遅くまで友人と出歩いたり、旅行に出かけたり、車を運転したり、と生活スタイルがそれまでとはかなり変化しました。
当然、自分自身の病気やケガのリスクもありますが、それ以上に周囲への賠償責任を伴うリスクが大きく増加していきました。
大学生となるとそういった環境の変化に伴い、保険というものを考える必要が大きく増すという事をまずご理解ください。
病気やケガになる可能性があるため
まずは自身の問題として病気やケガになる可能性です。大学生だから病気にかかりやすくなると言う訳ではありませんが、一人住まいで学生生活に入る方とご自宅通学で今までの生活環境を大きく変えずに学生生活を迎える人では、やはり少し異なります。
一人住まいの場合ちょっとした風邪でも対応を誤り大きな病気につながる可能性は、ご家族と一緒に生活されている方々より高くなります。
私自身もそうだったのですが、様々なコスト削減のため大学までバイクで通う人もいらっしゃると思いますが、それに伴い事故によるケガなどのリスクも高くなります。
また学生生活での運動系の部活動(高校時代以上に多岐にわたるクラブやサークルがあります。)によるケガなどの入院や通院リスクも高まります。
学費というとても大きな負担をかけている家族に、これ以上に経済的な負担や心配を背負わすことにならないように、日々の生活にはより一層の自己管理と、万が一このようなリスク状況に陥ったとしても、金銭的に対応できる保険は学生の方々にとっても必要になってくると考えます。
所有物が盗難される可能性があるため
また、学生ともなると社会的な交流も増え、お財布に入っている金銭もそれまでよりははるかに多くなります。
一人暮らしの場合、借りている部屋の管理も自己責任です。お財布や部屋での盗難なども自己管理のもと対応しなければなりません。
馬鹿な話ですが、学生時代に大学の近くまで行って暖房機の始末に不安を覚え、1時間以上かけて自分のアパートまで戻った記憶があります。火災など起こしたら大変なことになりますが、そのような場合でも対応できるような保険が必要かと考えます。
他人への賠償が必要になる可能性があるため
火災など他人への甚大な損害を与えるものは先に述べた通り、より意識高く自己管理するべきものですが、そればかりではありません。
通学時での混雑した駅やホームでの他人とちょっとした接触事故、バイクや自転車での接触事故、サークル活動中において第三者への賠償が発生する事例など、それまで以上にリスク頻度が高くなります。
そのような場合に金銭的な部分だけでも対応できるような保険は準備しておくべきだと考えます。
大学生に向いているおすすめの保険
ここまで述べてきた事例を考えて、どのような保障、保険が大学生に向いているのかを以下にご紹介させて頂きますのでご参考になればと思います。
生命保険
まずは学生の方自身の生命保険です。これまで述べてきた事とは視点が異なりますが、少し考えていただきたい事があります。
それは今の若い方が将来受け取る年金に対する社会の状況です。現在の日本は少子高齢化に伴い、老後の生活安定のための年金制度自体が非常に厳しい状況に置かれていることはご理解いただけると思います。
できうる限り若い時期から老後のための積立をすることの重要性もご理解されていると思います。
従ってまず1つ目のパターンは、万が一の死亡保障としての生命保険に加入する際、少し割高ではありますが積立部分の大きい死亡保障を選択されることをお勧めします。
世帯主の方と異なり、守るべき家族のいない学生の方々は大きな死亡保障は不要です。
その分を積立部分に回し、将来のための資産を若くてまだ保険料の安いこの時期から生命保険を活用し、準備していくという事です。
パターン2は逆にできる限り安い掛け捨ての定期保険で死亡保障を確保しておくという事です。
または学生の間だけと考えれば、大学に入った時に案内を受けるであろう、大学生協の学生生命共済も良いのではないでしょうか。これには死亡保障、入院時の保障なども付帯されています。
医療保険
ご自身の自己管理のもと体調管理を行うことは、社会人になる前の学生生活において身につけなければならない、学業とは違う大切な習慣です。
しかしサークル活動におけるケガや変化した生活環境からくる体調不良、自己の体調管理の未熟さから慣れない土地での入院や通院を余儀なくされる場合もある事から、万が一の入院などの保障としての医療保険への加入は大切です。
また昨今の医療保険は、入院を伴わなくとも、無料で24時間の医療相談が受けられる付帯サービスが付いている内容のものもあります。(非常に評判の良いサービスです。)
一人住まいの生活の場合、このようなサービスがあるととても重宝だと思います。
ちなみに医療保険は学生の時代だけ必要なものではなく、将来的にも考えなくてはならない保険です。
費用なども考えた上で、先に述べた大学生協の生命共済も含め、一般の医療保険など多くの生命保険会社のなかから、必要な内容の確認と合わせてご自身に合ったものなのかどうかを身近なFP、または既知の保険担当者にご相談されて検討されるとよいかと思います。
賠償責任保険
次に賠償責任保険ですが、大学に入ると学生生協から学生総合共済の案内を受けられると思います。
生命共済と火災共済ですが、加えて学生賠償責任保険があります。学生が日常生活や大学生活において他人にケガを負わせたりした場合の補償をしてくれます。
また示談交渉サービスなども付帯されているので、勉学等への影響も軽減されます。
ただ、ご両親が個人賠償責任保険など加入されている場合もあります。この場合大学生で一人暮らしをされていても補償範囲に含まれ、補償対象となるので重複して加入することもないのでその点は事前に確認しておかれるとよいと思います。
いずれにせよ、社会人としての責任を問われる場合も多くなるので、このような保険も検討しておく必要性も高いと考えます。
学生総合保障制度とは?
まず、学生総合保障制度とは何なのか。簡単に概要を述べると、学生時代だからこそ起こりうる不測の事態に対して備えておく保障制度で、その当事者本人のみならず同居の家族に対しても、もちろん一人暮らしの場合で生じるトラブルに対してでも24時間保障される制度です。
具体的に言うと、前述の医療保障や賠償責任保険の項目で説明したような、本人の病気怪我の入院や他人に対して何らかの損害を与えた場合の賠償保険等も含まれます。さらには扶養者の方が事故などで所定の重度後遺障害などを負って学生の育英資金の負担が厳しくなった時に育英費用もカバーされます。
学生総合保障制度のメリット
では、学生総合保障制度にはどのような加入メリットがあるのか、ですが、やはりコスト的なメリットが大きいと思います。この制度は団体割引が適用されます。
加えて一部の保険会社では、最近の学生生活で特に多い、SNSトラブル、いじめ被害、ストーカー被害に遭った場合の法的なトラブルにおける弁護士費用の補償を付加することもでき、感染症の入院や新型コロナウイルスに感染した場合の補償についても対応している点等、保障が幅広くカバーされている点も大きなメリットでしょう。
学生総合保障制度には入るべきか?
それぞれのリスクに対して個別に保険をフル加入する事が可能なほど余裕がある家庭は稀だと思います。まずはベースとしてこの学生総合保障制度は活用するメリットは大きいでしょう。
その上で不足している部分、もしくは将来のために早いうちから準備したい保障(若いうちに加入すると基本的に保険料は安く済むので)を先の項目で述べた部分を参考にしていただき準備する事をお勧めします。
まとめ
大学生となると、年齢的にも大人として見られることになります。自己管理も問われますし、また第三者とのお付き合いをする機会も多くなります。
いざという時ご両親に助けてもらう場合も出てくるでしょうが、基本的にはご本人自身が対応しなくてはならない場合が、大学生活前より多く発生する可能性が高いかと思います。
そのような場合、ここまで述べてきたようなリスクに対して、少なからずとも金銭面での最低限の保障部分は確保できるような保険を準備しておくことは必要かと思います。
この次のステップは社会人としての生活になる訳ですから、ご両親がすでに加入している保険を同じ目線で考えて、その上で金額等を学生で独身という見地で少し縮小して考えてみるのも良いかもしれません。
ポイントとしては
- この時期から将来を見据えて(若い時ほど生命保険の保険料は、基本安いので)今必要な保険を検討する。
- 個人として第三者との関わり方が大きく変化する中、賠償責任なども考慮した保険に加入を検討する。
- コストを考えて重複する補償にならないか、家族と今一度保険の中身を相談し、身近なFP、または保険担当者に相談して自分に合った保険を検討の上加入する。
でしょうか。
大学生活は楽しい部分が非常に多いことは、私の経験からも間違いありません。
ただ、行動範囲も交友関係も広がる中、その楽しい生活が事故や病気などを理由に経済的にマイナスの多いものになっては楽しくありません。
今回の話が、そのような事態からしっかりサポートしてくれる保険というものを考えるきっかけになれば幸いです。
執筆◎清水 要(ファイナンシャルプランナー)
サーフィンに明け暮れ外房と湘南に入浸り、先の事など考えない、いい加減な学生時代。卒業後は、仲間の影響で広告代理店に就職、その後外資系金融機関へ、全国転勤しながら「本気の仕事」を知る。
そして、当時日本立ち上げ草創期の外資系保険会社へ転職。札幌から福岡まで(人の羨むエリア)にて現場組織の立ち上げに従事。仕事もプライベートも充実した日々。近年、金融セミナー等を開催する講師育成に携わり、講師とクライアントの「信頼関係や繋がり」に思いが強くなり、自身も講師およびコンサルティング業務へ。現在は、情報還元も考え色々な面で、情報量の少ない故郷へ戻り、活躍中。自分自身が経験し知っているが故に「早いうちに将来の事を考える重要性」「将来の資金準備の重要性」を説いている。あの頃の友人達は今も現役のサーファーだ、人生一生青春!
■保持資格:トータル・ライフ・コンサルタント
(2024年3月5日公開記事)