医療費控除と高額療養費の落とし穴 年間10万円・治療費月2万1000円でも戻らない?

2024/03/07 05:00

何かとかかる医療費を取り戻すには、確定申告をして「医療費控除」を申告するか、高額療養費を申請することになる。それぞれの条件としてよく言われるのが、医療費控除は「1年で10万円以上かかった場合」、高額療養費は「1ヵ月で2万1000円」で、「病院でかかった費用なら取り戻せるんでしょ?」と思われているが、決してそんなことはな

何かとかかる医療費を取り戻すには、確定申告をして「医療費控除」を申告するか、高額療養費を申請することになる。それぞれの条件としてよく言われるのが、医療費控除は「1年で10万円以上かかった場合」、高額療養費は「1ヵ月で2万1000円」で、「病院でかかった費用なら取り戻せるんでしょ?」と思われているが、決してそんなことはない。

医療費控除が適用されないケースも

医療費控除の対象になるのは、「治療目的」もしくはそれに準ずる場合のみだ。

よくある勘違いが「歯列矯正」だ。一般に子供であっても40万円から100万円近くとされるため、これが医療費控除の対象になるかどうかは、子育て中の世帯にとっては大きいだろう。この場合、子供の歯列が悪く、噛み合わせに支障が出るなどとして医師から勧められた場合は控除が適用されるが、見た目を整えるため、審美目的の歯科矯正は適用されない。

また、マッサージや鍼灸も同じで“治療として”ならば適用されるが、目的が“健康維持”なら適用外となる。治療や療養に必要なものであれば、風邪薬や医薬品のビタミン剤も控除対象だ。

さらに、人間ドックや健康診断も、通常なら対象外だが病気などが見つかり治療につながった場合は、控除の対象となる。

とにかく医療費控除の対象は、治療が必要なものか、治療に準ずるものとなっている。

高額医療費は計算方法に注意 複数の受診科や入院と外来の合算はNG

「高額療養費」はどうかというと、1ヵ月にかかった費用が2万1000円以上になったからといって、無条件で戻ってくるわけではない。受診科をまたいだり、別々の病院にかかったりした場合、その合計額が2万1000円になっても、対象にはならないのだ。

具体的には、受診者、受診科、入院か通院か──いずれかの項目での月額費用が2万1000円を超えている必要がある。

たとえば、ある病院に入院して5万円支払った場合は、2万1000円を超えた部分は対象となる。

しかし、同じ病院で、入院で1万円かかり、通院で1万5000円かかった場合は対象外。ほかにも対象外になるケースとして、内科と歯科にそれぞれ1万5000円かかった場合もある。たしかに合算すれば3万円だが、それぞれの診療科に支払った費用は2万1000円に満たないからだ(同一医療機関でも医科と歯科の医療費は別扱い)。

さらに、入院中の食事代や保険外治療などは対象外となる。

ただし、窓口の支払いが2万1000円に満たない場合でも、家族など同じ世帯の人が同じ月に、同じ病院の同じ診療科の窓口で支払いをした場合、世帯としての合算はできる(世帯合算)。

医療費控除と高額療養費は申告・申請先が異なる

医療費控除と高額療養費の申告・申請先は、異なっており、医療費控除は確定申告の所得税の還付になるので税務署だし、高額療養費制度なので「保険証の発行元」、具体的には健康保険組合などだ。

発行元は保険証に記載されている「保険者」「保険者住所」で確かめられる。

文/編集・dメニューマネー編集部