修繕積立金が不足しているマンションは34.8%(国土交通省、2018年度)もあるというが、管理費の見直しをすることで、年間270万円以上もマンションの財務を改善できるかもしれない。潜在的には9割のマンションが修繕積立金不足ともいわれているなか、管理費を減らすにはどのような方法があるだろうか。
複数の管理会社から見積もり────15年で管理費4000万円節約も
マンション購入時に決まっている管理会社は販売側の系列会社であることが多く、管理費も売り手の基準で決められているため、他の管理会社と相見積もりをとれば安くできる可能性が高い。
横浜市にある戸数35のマンションが複数の管理会社から見積もりをとったところ、年間で約270万円も管理費を減らせたというケースがある。
大規模修繕工事のタイミングを15年とすると、この間に減らせる管理費は最大で4050万円になる計算だ(実際にこれだけ安くなったケースが確認できているわけではない)。
相見積もりを頼むときのコツは、書式を統一することだ。そうすると、組合で見積内容を比較・検討しやすくなるからだ。マンション管理業協会が定めた「マンション管理業務共通見積書式」に準ずるといいかもしれない。
また見積もりを出すためには業者の現地調査が必要になるが、その際には各社別々の日程で調整するのがいいだろう。現地調査には理事の立会いが求められるため、まとめて一度に済ませたいところだが、裏で口裏をあわせられる心配がないとはいいきれないからだ。
管理費の算出には複数の業者が絡み時間がかかるため、余裕をもって頼むのも大切だ。
管理作業の人件費を見直し────15年で340万円減らせるかも
管理費を減らすには、作業内容とともに人件費の見直しも必要かもしれない。
実際に作業をしてくれる人は管理会社が委託した専門業者から派遣される場合が多いが、最近では現場近くに住む人に依頼する「ご近所ワーク」というサービスがある。
ご近所ワークは作業員が現地に通う交通費を抑えられるうえに、管理マージンを削れるため従来よりも安く頼める可能性がある。
もし世帯数10程度のマンションを週1回清掃する場合、清掃会社であれば料金は月額2万3000円ほどが見込まれるが、ご近所ワークであれば日常清掃1回につき910円(税込み、以下同じ)からだ。
月4回の清掃でも月額3640円で済むので、その差は1万9360円となり、年間なら23万2320円、15年では348万4800円違ってくる計算になる。
ただしゴミ集積場の清掃などは別料金となるので、こうした作業も含めるならもう少し金額が上がるが、それでも相当な節約にはなるだろう。
ご近所ワークでは他にも管理人業務や電球交換などを別料金で頼めるので、予算に応じて頼む作業を検討するのもいいかもしれない。
自分たちでマンション管理────15年で管理費用6400万円浮く?
さらに、マンションの管理を管理会社に委託せず、一部またはすべてを組合で管理すれば大幅に管理費を浮かせられるだろう。
分譲マンション管理費の平均が1平方メートル217円という調査結果(国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」)を元にすれば、戸数20戸、床面積70平方メートルほどのマンションであれば1世帯当たりの管理費負担は1万7780円になる。
全世帯の合計では1ヵ月35万5600円となり、すべてを組合で管理する「自主管理方式」であれば、この金額を丸々減らせるかもしれない。この場合、年間の削減額は426万7200円となり、これを15年続ければ6400万8000円になる。
マンションの大規模修繕工事費用の相場が中央値で7600万円~8700万円といわれており、小さくない金額といえるのではないだろうか。
管理業務の一部だけを管理会社に委託する「一部委託管理」であっても、相応の節約につながるはずだ。
マンションを自分たちで管理すると費用面以外にも、管理意識の高まりや、入居者どうしの交流が深まるといったメリットがある。
一方で管理がずさんになるとマンションの資産価値が下がるリスクがあることは認識しておいたほうがいいだろう。
国交省は今後、修繕積立金の増額幅を当初の約1.8倍までにする方針を打ち出しており、修繕積立金不足は社会問題化している。修繕積立金の増額を避けるためにも、一度管理費を見直してみてはいかがだろうか。
文/編集・dメニューマネー編集部