あなたはどっち派?「今もらえる10万円」VS「1年後にもらえる11万円」

2021/09/18 10:20

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「今もらえる10万円」と「1年後にもらえる11万円」が選べるとしたら、あなたはどちらを選びますか? 約1年前、政府が全国民(正確には2020年4月27日において住民基本台帳に記録されている者)に10万円の特別定額給付金を配ったことは記憶に新しいところです。仮定の話ですが、「いま受け取らなかった人は1年後に11万円をもら

「今もらえる10万円」と「1年後にもらえる11万円」が選べるとしたら、あなたはどちらを選びますか?

約1年前、政府が全国民(正確には2020年4月27日において住民基本台帳に記録されている者)に10万円の特別定額給付金を配ったことは記憶に新しいところです。仮定の話ですが、「いま受け取らなかった人は1年後に11万円をもらえます。いま10万円を受け取るか、来年11万円を受け取るか、どちらにしますか?」と聞かれていたら、どのように判断しますか。

この質問には資産運用を考えるヒント、特に利回りの妥当性を考えるヒントが隠されています。一緒に考えていきましょう。

キーワードは「リスクフリーレート」

この質問に答えるために理解しておきたいキーワードが「リスクフリーレート」です。

リスクフリーレートとは簡単にいうと、無リスク(リスクフリー)に近い金融商品から得られる利回りのことをいいます。極端に言うと、何もリスクを取らずして得られる利回りです。

世界のあらゆる金融商品を比べて投資判断するときは、米国10年債利回りを使うことが一般的です。しかし、上記の質問は日本国内の話なので、大手金融機関の普通預金の金利や、日本国債10年債利回りを使えば良いでしょう。それぞれ2021年3月下旬現在で、

 大手金融機関の普通預金の金利:メガバンク3行とも0.001%
 日本国債10年債利回り:0.119%

となっていますので、より高い日本国債10年債利回りを基準にします。日本国債10年債利回りは日々変動しますが、ざっくり0.1%だとしましょう。

10万円を日本国債で1年間運用したら、単純計算で10万100円に増えることになります。

経済的合理性が高いのは「1年後にもらえる11万円」

「今もらえる10万円」と「1年後にもらえる11万円」を比べると、1年間で1万円増えていることが分かります。元本10万円に対して、利回りは10%です。

先程、日本のリスクフリーレートは約0.1%であることを確認しました。リスクフリーレートとの利回り差(スプレッド)は約9.9%、倍率は約100倍です。そのため、リスクフリーレートの観点から考えると、「1年後にもらえる11万円」を選ぶほうが、基本的には経済的合理性が高いと言えるでしょう。

なお、今回は架空の設定のため、1年後に「絶対に」11万円がもらえることを前提に考えました。しかし、現実の世界では、相手が約束通り払ってくれない債務不履行リスク(信用リスク)も存在します。

通常はその信用リスク分も利回りに内包されています。「その利回りは信用リスク分も加味した数値になっているか?」という視点を常に持つことも大切です。

リスクフリーレートと比較しておトクかどうか

日本人はゼロ金利政策に慣れすぎてしまい、「リスクフリーレートとの比較」という観点を持たない人が多い印象を受けます。利回りの妥当性を検討する際は、「その利回りはリスクフリーレートと比べて本当におトクといえるのか」という視点を持つことが重要です。

これは海外の金融商品や資産を検討するときも同様です。例えば、借金が多く倒産の噂がある米国企業が、米ドル建て社債を5%の利回りで発行していたとします。低金利時代において、利回り5%の社債は魅力的に映るかもしれませんが、米国のリスクフリーレートである米国10年債利回りは1.730%なので(2021年3月下旬現在)、その差は3.27%です。

この妥当性を判断するのは高度な知識が求められますが、少なくとも「リスクフリーレートよりも3.27%高い利益を取る見返りとして、倒産によって全額もしくは一部が返ってこないリスクを背負っているのだ」という認識を持つことが投資判断の第一歩です。

重要な要素を理解して合理的な資産運用を

多くの人にとって「1年後にもらえる11万円」を選ぶほうが、経済的合理性が高いはずです。しかし、なかには「自分は投資に精通しており、1年間で11%以上のリターンをあげる自信がある。だから今10万円もらおう」と判断する人もいるかもしれません。

また、「Cash is King(現金は王様)」という言葉があるように、手元の現金を厚くしたほうが良いケースもあるでしょう。

「今もらえる10万円」と「1年後にもらえる11万円」どちらを選ぶべきか、それは各人の状況によって変わります。いずれにせよ重要な要素は「リスクフリーレートとの利回りの差」です。この考え方を理解して、合理的な資産運用を進めていきましょう。

文・菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部

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