連載 「逆張り」常識の反対を行って勝った人たち
ぎゃく—ばり【逆張り】(取引用語)相場の人気のよいときに売り、悪いときに買うこと。(広辞苑第7版)。←→順張り。
景気低迷によって事業環境が著しく悪化すると、多くの経営者が守りの戦略にでる。経費削減、雇用抑制、サービス縮小、といった具合だ。しかしこのコロナ禍という未曾有の状況の中、逆張りで攻めの手を打つ企業・経営者も少なからず存在する(文中敬称略)。
新規ホテルを続々開業──アパホテル、星野リゾート
宿泊業界は新型コロナウイルスによって多大なダメージを受けた。訪日観光客がいなくなったことによってインバウンドの売上はほぼゼロと化し、国や自治体による移動の自粛要請によって国内客も期待できない状況となった。「コロナ倒産」するホテルも続出した。
そんな中でも元気な宿泊業界の企業がある。「アパホテル」を運営するアパグループ(代表:元谷外志雄)や星野リゾート(代表:星野佳路)だ。売上が激減している中では新規投資は抑制したいところだが、この両社はホテルを続々新規開業させている。
アパグループがこのような逆張り投資をしているのは、他社が新規開業を抑制しているときこそ、自社のシェアを伸ばす絶好の機会だと考えているからだ。元谷代表はメディアによるインタビューでそう明言している。
星野リゾートは、コロナ禍の収束後に訪日客が戻ることを見据え、都市型ホテルの新規開業に余念がない。コロナ禍で経営に行き詰まったホテルを引き継ぎ、自社ブランドとして展開する戦略を立てていることも興味深い。コロナ過だからこそ「引き継ぎ候補」が多数出てくる。
利用者激減でも国内線強化──ピーチ・アビエーション
「なぜこの時期に新規路線を就航するのだろう」。格安航空会社(LCC)大手のピーチ・アビエーション(代表取締役CEO:森健明)にこうした印象を持った人も少なくないはずだ。同社はコロナ禍で利用者が激減している中、「中部〜新千歳」などの路線を新たに就航させている。
その理由は、フルサービスキャリアの日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)が路線の供給を絞っていることと、コロナ禍の収束後は国際線より国内線の需要が先に復活すると見込まれていることの2点から、いまが路線拡張の最大のチャンスと見込んでいるからだ。
国際線を軸に成長を果たしてきたピーチ・アビエーションは、国内線の拡張時期をこれまで見計らってきた。コロナ禍は同社の業績に大きなダメージを与えたのは間違いないが、国内線事業の強化という意味では、絶好のタイミングが訪れているととらえているようだ。
あえて初の新卒採用──ミダスキャピタル
平時において、新卒採用を一切していない企業もある。理由はさまざまだが、教育コストがかかることや、即戦力を求めるなら中途採用の方が適していると考え、そういう結論に至っているケースが多い。
高級ポップコーン店を運営する日本ポップコーンを買収したことでも知られる投資ファンドのミダスキャピタル(代表取締役:吉村英毅)も、2017年に創業してから新卒採用をしてこなかった。しかしコロナ禍の中、新卒採用を始めた。
先ほど説明したように、新卒は教育コストがかかるのに、なぜだろうか。その背景には、コロナ禍によって他の企業が採用を抑えていることから、内定を獲得できていない優秀な人材が数多く残っている状況があるとみられる。
こうした状況は見方を変えれば、優秀な人材を採用するチャンスでもある。ミダスキャピタルは学生向けのビジネスコンテストを開催し、インターンを経て内定をオファーする取り組みを行った。
そもそも少子高齢化の日本で働き手自体が不足する中、優秀な人材獲得のチャンスを逃すまいという見事な一手ではないだろうか。
コロナ禍というピンチをチャンスに
事業環境が悪化し、ライバル企業が攻めの手を緩めたときが最大のチャンス──。4社の逆張り戦略から感じる共通点だ。コロナ禍というピンチをチャンスに変えることができた企業が、この未曾有のコロナショックを勝ち抜いていけるのだろう。
文・岡本一道(経済ジャーナリスト)
編集・dメニューマネー編集部
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