「子ども・子育て支援金」年収400万円で毎月650円の負担。ただし政府は「実質負担はゼロ」と説明、なぜ?

2024/04/11 07:00

児童手当の拡充など、少子化対策に充てられる「子ども・子育て支援金」の徴収が2026年度から始まり2028年度まで行われるが、徴収額の目安となる試算結果が公表され、被用者保険の被保険者一人当たりの2026年度の徴収額は、年収400万円の人で毎月400円。2027年度が月550円、2028年度が月650円と毎年増える見込み

児童手当の拡充など、少子化対策に充てられる「子ども・子育て支援金」の徴収が2026年度から始まり2028年度まで行われるが、徴収額の目安となる試算結果が公表され、被用者保険の被保険者一人当たりの2026年度の徴収額は、年収400万円の人で毎月400円。2027年度が月550円、2028年度が月650円と毎年増える見込みであることが分かった。

この「子ども・子育て支援金」は公的医療保険に上乗せして徴収されるもので、対象となる被用者保険とは、中小企業の協会けんぽ(全国健康保険協会)、大企業の健康保険組合、公務員などの共済組合。保険による額の差はなく、年収ごとに決まるという。

岸田首相はこの制度について「実質的な負担は生じない」と繰り返しているが、その根拠は分かりづらく、識者からも疑問の声が上げられている。

「もらえるお金」ではなく「払うお金」

岸田首相が「異次元」という言葉を掲げて議論が進められた政府の少子化対策は、「こども未来戦略」として2023年12月に閣議決定されている。

その内容は、児童手当の拡充(所得制限の撤廃、支給期間の延長など)のほか、出産費用の保険適用の検討、大学など高等教育費の負担軽減、男性の育休取得率の引き上げ──などが含まれている。

構想では、国と地方をあわせて新たに年間3.6兆円の予算を充てるとされており、財源確保の仕組みが整うのが2028年度。3.6兆円のうち約1兆円が、この「子ども・子育て支援金」からねん出される。

「子ども・子育て支援金」は“もらえるお金”ではなく、子育て世代のために“払うお金”なのだ。

公表額は参考、あくまで未定

徴収額は加入している保険ではなく、年収によって決まるといい、年収が高くなるほど負担が大きくなる。

年収400万円の人の徴収額は冒頭述べたとおりで、年収200万円の人は毎月200円、250円、350円(2026年度から2028年度。以下同じ)、年収600万円の人は600円、800円、1000円。年収800万円の人は800円、1050円、1350円。年収1000万円の人は1000円、1350円、1650円となっている。

ただし、公表されたこれらの徴収金額は、国会審議のために“機械的に”計算して出された参考だといい、徴収額として決まったわけではない。

「実質的な負担は生じない」とはどういうこと?

支援金についての政府の立場は、「歳出改革と賃上げで実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する」ため、「実質的な負担率は上がらない」というものだが、これはどういうことなのだろうか。

衆議院の予算委員会でも、「毎月支払う保険料が上がるのは国民にとっての『実質的な負担』ではないのか」(青柳仁士議員、日本維新の会)と指摘されているが、岸田首相は「収入や加入する保険の種類でデコボコが生じるが、全体として(社会保障)負担率は増えない」と答えたという。

説明によると、政府は「社会保障負担率」を、国民一人ひとりの保険料の負担ではなく、個人や企業など“国民全体の所得”に占める社会保険料の負担の割合と位置付けているという。

その上で、「保険料の負担増を、医療・介護の歳出改革で抑える」「国民所得を賃上げを進めて増やす」ことで、社会保障負担の上昇をできるだけ抑え、“抑えられた範囲内で”支援金を拠出してもらう考えだという。このため「支援金によっては負担率は上がらない」というのだ。

しかし、与党からも「分かりにくい」との批判が出ているほか、識者からは「医療保険料の上乗せによる徴収は、保険制度の趣旨にそぐわない。保険加入者は全員、支払った保険料に見合う医療サービスを受けられなくてはならない」といった声が上がっている。

文/編集・dメニューマネー編集部