著名人の画像や動画を使い、SNSで投資を誘う詐欺が広がる中、芸人・タレントの厚切りジェイソンさんが、金融教育ベンチャー・ABCash Technologiesが開いた特別講座に出席、昨年から自身の画像を使った詐欺広告が増えており、所属事務所に「厚切りジェイソンを名乗る人にお金を振り込んだ」という電話があったことを明かした。
詐欺の中には、海外から日本人をだましてお金を送らせようとするケースもあることから、自身のネタをを引き合いに、「『WHY JAPANSE PEOPLE?』(なんで日本人はそうなの?)では片付けられなくなっている。そうした詐欺はSNS が対処しきれていないので、自分で自分を守るしかない」と訴えた。
被害にあってもあきらめずに連絡を。お金が戻る可能性もある
厚切りジェイソンさんが特別講師として登壇したのは、4月24日に開かれた「投資詐欺にだまされないためのABCash特別講座」。冒頭、ABCashのファイナンシャルコンサルタントである阿久津由貴さんが、SNS型投資詐欺について、2023年には280億円ものが被害あったと報告。特に2023年下半期からの増加が著しいが、2024年に入って新NISAが始まり、投資への関心が高まったこともあってか、増えていると話した。
『ジェイソン流 お金の増やし方』(ぴあ)などの著書がある厚切りジェイソンさんは、個人投資家からも支持されている。そうした背景を見込んでか、投資詐欺に広告が不正利用されているケースが増えているという。
講義では、詐欺かどうかを見極めるポイントとして、詐欺師は、広告を個人名で出していることが多いことから、「誰が広告を出しているのか」「金融庁に登録されている会社・業者かどうか」を確かめるよう呼びかけられた。
阿久津さんはよくある詐欺の手口を紹介。それによると、①SNSで著名人が登場した広告を掲載、「プロが教える厳選10銘柄、LINE追加で無料で提供します」といった形でLINEに誘導する、②著名人のアシスタントを名乗る人物から、株式市場の動向やおすすめ銘柄などの情報、ときには著名人の音声メッセージ(ディープフェイク。AIを使った偽物の画像や動画)などが送られてくる、③グループLINEに招待される(そこでは参加者たちが得られた情報に絶賛している)、④投資サイトへ誘導して入金を求めてくる、⑤入金後、値上がりしていると伝えられるが、お金は引き出せず、出金しようとすると高額な手数料がかかったり、連絡しても反応がなかったりする──という。
その上で、もし詐欺にあってしまってもすぐにあきらめずに「振り込んでしまった金融機関に電話してお金の流出を防ぐこと。法律によって 口座が凍結され、被害回復分配金が戻ってくるかもしれません。そして、警察に被害を出すこと。怪しいが詐欺とは断定できない場合は、金融庁の金融サービス相談室、消費者ホットライン、法テラスなどに連絡しましょう」と訴えた。
投資詐欺にあわないために必要なことは?
投資詐欺にあわないために、厚切りジェイソンさんは「勉強して欲しい。少なくとも、現実的な投資リターンがどれくらいなのかを把握したほうがいい。それを超えるものは危険だと思う」と指摘。「自分はアメリカの金利が5%くらいだから、それのプラス1%くらいならともかく、それ以上は現実的じゃないと思っている」と話した。
また、芸能界の大物の先輩に「お金を渡すから運用してくれ」といわれ、「それは違法ですよ」と断ったエピソードを明かし、「そういう理解がないんだなと驚いたことがある」と振り返った。
阿久津さんは、「『必ず儲かる』『あなただけに教える』と言われたら詐欺。被害にあった方の個別相談にのると、手口はとても似ている。まずそれを知ること。詐欺にあうと、せっかく貯めてきたお金がなくなるだけでなく、自尊心も傷つけられてしまう。そういう人が一人もいなくなるように発信していきたい」と話していた。
厚切りジェイソンさんは、自身の著書を読んで欲しいと伝えた一方で、詐欺広告の画像の中には、自分が実際に言っていることに近いことを書いていることがあると指摘。たとえば、「長期分散投資が大事」といったもので、そういう詐欺もあることから、「『これは本人が言っているのかも』と思ってしまうかもしれない」と嘆き、「そういう、大胆(な内容)じゃない、区別しづらい広告が悪質」と主張した。
さらに、AIの技術が高くなっていることから、「詐欺師がAIをつかえばジェイソンの言葉、音声をつかって、ジェイソンがいかにも言ってるように見せかけられる。見分け方が今のうちに知っておくのが非常に大事」などと呼びかけた。
文・濱田 優(dメニューマネー編集長)
編集/写真・dメニューマネー編集部