セブン、ローソン、ファミマのコンビニ御三家が“次世代型コンビニ”を模索している。ファミマはユニクロを、ローソンは楽天やアマゾンを、セブンはイオンを狙い、小売りを変えようとしている。大量出店での成長にかげりが見えつつあるが、全国のネットワーク網と販売力は小売業界でも特別な存在だ。各社、どのような戦略でビジネスを展開していくのか。
セブン──次世代コンセプト「SIP」とは?
コンビニ最大手のセブン&アイ・ホールディングス <3382> は構造改革とグループシナジー強化に乗り出し、コンビニに経営資源を集中する。不採算のスーパーマーケット部門(イトーヨーカ堂が中心)を分離し、新規上場させる方針だ。
グループのシナジーを効かせるために、コンビニとスーパーの間のサイズのSIPストアを投入していく。SIPとは、「セブン-イレブン(S)とイトーヨーカ堂(I)によるパートナーシップ(P))」からくる造語だ。商品やサービスの相互供給、アプリを通じた相互送客、店舗オペレーションなどでグループシナジーを最大化する狙いだ。
ファミマ──アパレル進出の狙い
ファミマは「コンビニエンスウェア」が評判だ。「いい素材、いい技術、いいデザイン」がコンセプトのシンプルかつ定番ウェアのオリジナルブランドを投入した。普段使いのアパレルをコンビニで買うという文化を根付かせるのが目的で、狙いはユニクロと言われている。
アイテム数はすでに100点を超えた。全国約1万6000店で販売している。店舗数だけだとユニクロの約800店の20倍である。衣料品もカテゴリーを絞れば十分に市場を拡大出来ると見ている。
ファミリーマートは、2020年には伊藤忠商事 <8001> の完全子会社として上場廃止した。伊藤忠は総合商社のなかでも繊維に強いことからこの分野で勝機を探る。
ローソン──デジタルとの融合と物流革命を狙う
ローソン <2651> が狙うのはポンタ経済圏の拡大とクイックコマースだ。
ローソンは、2024年4月に三菱商事 <8058> の完全子会社となった。今後は上場廃止になり、三菱商事とKDDI <9433> による共同経営体制に移る。
KDDIのコンビニ参入は大手通信会社としては初となる。KDDIは通信事業を軸として、デジタル化でコンビニと通信を融合し、経済圏を作るのが狙い。KDDIとローソンが運営面で協力してきた「Ponta(ポンタ)ポイント」を強化することで、PayPay経済圏や楽天経済圏を追撃する。
また、クイックコマース(食料品や日用品などの即時配達)も強化する。アマゾンが得意とする日用品、食品、飲料などのクイックコマース市場を狙っている。
コンビニのインフラとしての未来
みずほ銀行の流通アナリストの中井彰人氏は、「国内でのコンビニの出店エリアが限られる中で、同じ業態では成長できない。今後のコンビニの成長余地を考えた場合、生鮮食品は不可欠だ」、「スーパーとコンビニの融合であるSIPストアが期待される」と分析している。
また、JPモルガンのアナリスト村田大郎氏は、「同じ小商圏型の小型店としては、イオン傘下の「まいばすけっと」が首都圏の都市部で集中的に出店している。後発の「SIPストア」がどれくらいのシェアを獲得できるか注目だ」としている。
コンビニは、消費という枠を越え、地域のインフラとして発展した。そのネットワークと販売力で、コーヒー、お惣菜、おにぎり、おでんなど、カテゴリーキラーとも言える新しい市場を造ってきた。今後も生鮮食品などを取り入れながら、地域経済圏の中心になりそうだ。
文/編集・dメニューマネー編集部