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大谷選手・元通訳、水原一平被告のスキャンダルで話題、「ギャンブル」と投資の違い

2024/06/07 17:00

違法賭博にあてるお金を盗むため、大リーグ・大谷翔平選手の口座からお金をだましとるなどして、銀行詐欺の罪などで起訴されている元通訳・水原一平被告のスキャンダルで、“ギャンブル”への注目が集まってます。 ギャンブルとよく比べられる「投資」は、「大損しそうだから怖くてできない」という人が少なくないですが、一方で、これぞギャン

違法賭博にあてるお金を盗むため、大リーグ・大谷翔平選手の口座からお金をだましとるなどして、銀行詐欺の罪などで起訴されている元通訳・水原一平被告のスキャンダルで、“ギャンブル”への注目が集まってます。

ギャンブルとよく比べられる「投資」は、「大損しそうだから怖くてできない」という人が少なくないですが、一方で、これぞギャンブルといえる「宝くじ」については、「損をしそうで怖い」という話は聞かれません。なぜそうなるのでしょうか。

ギャンブルは胴元だけは必ず儲かるゲーム

ギャンブルにはいくつも定義があり、アメリカ精神医学会では「より価値のあるものを得ることを目的に、自分にとって価値あるものを危険にさらす行為」とされ、日本のギャンブル等依存症対策基本法では、「競馬など法律の定めるところにより行われる公営競技だけでなく、パチンコ屋にかかる遊戯その他の射幸行為」とされています。

“射幸行為”とは、偶然に得られる利益や成功を狙うことであり、必ず勝てるわけではありません。

ただし、ギャンブルで必ず儲けられる人がいます。それは胴元(主催者)です。

たとえば国内最大の「年末ジャンボ宝くじ」の1等賞は7億円です。大卒サラリーマンの生涯年収約2.7億円の2倍以上の賞金が、一回で当たるかもしれませんが、当選確率は2000万分の1です(4億6,000万枚の発行で、1等賞は23枚のため)。「死ぬまで買い続けても当たらない」くらいの確率です。

特に宝くじは、当選金額の還元率が50%以下とされるなど、数あるギャンブルの中でも、勝てる確率が低いといえます。

「当選金額の還元率が50%以下」とはどういうことかというと、売り上げの半分以上が主催者の収益やくじの印刷代などの経費になり、参加者(購入者)に還元されるのは半分以下ということです。

この点、競馬、競輪、ボートレース払戻率は70%〜80%なので、宝くじの還元率は20から30ポイント近く低いのです。

ギャンブルは、結果がどうなろうと胴元が最初に手数料や売り上げを取り(胴元の取り分を「テラ銭」といいます)、残ったお金を参加者が奪い合うゲームです。

つまり、ギャンブルでは(胴元を除く)参加者の勝者と敗者の損益を合計すると必ず”マイナス”になります。これを応用数学や経済学では「マイナスサムゲーム」と呼びます(サムとは合計のこと)。

これに対して「投資」は? 「株券が紙くずになる」のではないか?

これに対して「投資」では、投資家全員が利益を得る可能性があります。

企業は胴元ではないので、集めたお金は設備投資や新規ビジネスに使い、業績がアップして株価が上がれば、株主は利益を得られます。こうして勝者と敗者の損益合計がプラスになる可能性がある投資は、「プラスサムゲーム」なのです。

たしかに投資で損をする人もいますし、「倒産すれば株券は紙くずになる」という人がいます。その可能性はゼロではなく、企業は倒産するかもしれません。

しかし、株主のために企業価値、株価を高める責任を負った経営者が、株主総会で交代させられるかもしれない中で、業務に取り組んでおり、そう簡単に株券がハズレた宝くじや馬券のように紙くずになるわけではありません。

投資は過去の経験や知識が生かせる

また投資がギャンブルと違う点はほかにもあり、それは過去の経験や知識が生かせるところです。

たとえば、FX(外国為替証拠金取引)のような金融商品は、レバレッジが使えることから、ハイリターンを狙ってハイリスクな投資ができるため、「投資はギャンブル」の事例に使われてきました。

しかし、政治や経済の動向、国による政策金利の違い、政府要人の発言などファンダメンタルズ分析や、過去の値動きから、相場トレンドやパターンを予測するテクニカル分析を使って利益獲得が狙えます。

また相場予想が外れたときに備えて、「損切り」注文を出し、損失リスクを低く抑えることもできます。「運任せ」の宝くじとは大違いなのです。

人間は本質的に損失回避を選ぶ

このように投資とギャンブルは異なるところだらけなのに、多くの人が混同してしまうのは、人間が必ずしも”経済合理的な行動を取らないから”でしょう。

人間は本質的に「損失回避的」な行動を優先するそうです。たとえば、持っている株の価格が少しでも上がると、「もっと上がるかも」と思う反面、「利益はわずかでも失いたくない」との気持ちから、“ちょっとだけ売る”(チキン利食い)ということをしがちです。

反対に損が出ていると、たとえ「当分、上がらないかも」と思っても、持っている株を売って(損切りして)損失を確定するのを嫌います。そうして、いやいやその株を持ち続けるか、少しでも早く損失を取り返そうと、(上がるかどうか自信がないままに)さらに投資額を増やそうとしてしまいます。

確率が正しく認識できない

行動経済学によると、人間は、損得を判断する際、確率を客観的に判断できなくなるそうです。

たとえば、客観的な確率(勝率)が40%を超え、100%に近くなるほど、主観的な確率は低くなり、確率が40%よりを下回り、0%に近づくほど主観的な確率は高くなる傾向を示すそうです。

これはどういうことかというと、「人は確率が低いときに大きく評価し、確率が高いときには小さく評価する」ということです。

だから、0.00000005%の確率でしか当たらない年末ジャンボ宝くじの1等賞を、多くの人たちが「自分だけは当たるかもしれない」と思い込んで買ってしまうのでしょう。

だからといって「宝くじは買うべきではない」と言いたいのではありません。宝くじの収益金はさまざまな公共事業に使われていますし、実際に数億円の当選金を得る人も生まれています。「一攫千金を夢見る」ことが悪いわけではありません。

大切なのは、人間が(自分が)必ずしも合理的な判断ができないものだということを踏まえて、大切な資金を何に投じるかを自己判断で決めることです。

文・神部 旬(ライター・映像プロデューサー)
編集・dメニューマネー編集部

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