退職・老後が近い

「60代の平均貯蓄額」と「老後の必要額」賢く準備する方法とは?

2021/09/28 16:00

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2019年6月に金融庁が出した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 」をキッカケに「老後2,000万円問題」が話題となり、自分の老後資金について不安を感じた人も多いことでしょう。そもそも不安とは「わからない」から生じるものです。自分の退職金、老後の必要資金などの収支を具体的に知ることで、漠然とした不安は払拭でき

2019年6月に金融庁が出した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 」をキッカケに「老後2,000万円問題」が話題となり、自分の老後資金について不安を感じた人も多いことでしょう。そもそも不安とは「わからない」から生じるものです。自分の退職金、老後の必要資金などの収支を具体的に知ることで、漠然とした不安は払拭できます。その点で「老後2,000万円問題」は良い効果を生み出しました。積み立て投信を始める人が一気に増えたのです。大手ネット証券4社では、20年3月の投信販売額は約2627億円と過去最高、積み立て投信の販売額も約407億円と9カ月連続で過去最高を記録しているのです。

老後に不安を持つ50代の投資初心者でも「必要資金を貯めるための考え方」や「資産形成へのアプローチ」を知ることで、老後の必要額を賢く準備する方法を解説します。

関連リンク:「老後に必要なお金」の目安と平均額 2,000万円?1億円?いくら?

2,000万円問題は投資の自助努力を支援

「老後2,000万円問題」は、「定年時に2,000万円ないと貧困高齢者まっしぐら」と間違えて解釈されて話題となった可能性があります。金融報告書では、夫65歳、妻60歳の夫婦で無職の世帯で、それまでと同じ生活を維持しようとすれば、世帯での月の平均不足額は約5万円、年間で約60万円になるという試算がベースです。人生100年時代を迎え、残りの人生を考えると、トータルでは1,300万円〜2,000万円が不足する計算でした。

夫65歳、妻60歳の夫婦でも、世帯収入がある場合も多いでしょうし、生活のレベルは今までと同じ必要もないでしょう、退職金や保険の存在を忘れている場合も多いではないでしょうか?

金融庁の報告書の目的は決して不安を煽ることではなく、早めに適切な備えをして、長期の資産形成の自助努力をすすめるという意図があったものなのです。

平均貯蓄額と金融資産の内訳を徹底分析

60代の平均貯蓄額と金融資産の内訳

金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2019)」によると、世帯主が60代の2人以上の世帯における金融資産保有額は平均で1,635万円になります。意外に多いので「自分は大丈夫だろうか?」と不安に思うかもしれませんが、これは「平均のマジック」であることに注意です。金融関係のデータは一部の資産家が平均を押し上げているので、平均値は実勢とは掛け離れています。中央値は650万円のためこちらが実勢に近い数値になります。

中央値の詳細データはないので、主な金融資産の内訳を平均値で見ていきます。預貯金が702万円(全金融資産の43%)、生命保険が324万円〔同20%)、株が184万円〔同11%)、投資信託が134万円(同6%)になります。

このデータはあくまで世帯のデータです。退職金を受けとれるなら預貯金部分が増えるわけですし、保険なども金融資産に含まれています。そう考えると、あなたの状態が中央値や平均値に近いなら、いきなり「貧困高齢者」になるとは考えづらいことがわかるのではないでしょうか?

50歳代の平均貯蓄額と金融資産の内訳

同じ調査で、世帯主が50代の場合を見てみましょう。金融試算保有額は平均で1,194万円になります。中央値は600万円です。

内訳は、預貯金が445万円、生命保険が324万円、株が145万円、投信が45万円です。50歳代と60歳代の間の差は、金融資産の総額が441万円、預貯金が257万円、保険は変わらず、株が66万円、投信が90万円増加しています。

すなわち平均像では、50歳代から60歳代の間の投資行動で、預貯金が257万円、株が66万円、投信が90万円を積み増しているわけです。子供の養育費や家のローンなどの支出のピークは確実に過ぎていきます。退職金を受け取る見込みがあるのなら預貯金増はそれほど難しくはないでしょう。50歳代からでもNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して投資を始めれば、税効果や資産形成が期待出来ます。60歳代の世帯平均の金融資産保有額達成がそれほど厳しいわけではないことがご理解頂けたでしょう。

それこそ、世帯主の年齢が若いのであれば、長期投資で平均以上の資産を形成することを必要以上に不安に思う必要はありません。投資への行動を始めればいいだけです。

老後のバランスシートを徹底分析

定年退職金はどれくらいもらえるの?

退職金とは、会社員が勤めていた企業を退職するときに支給される賃金です。その額は基本的には、務めた期間やその期間の基本給の水準によって様々です。定年時だけでなく、リストラによるアーリーリタイア、転職、家庭事情による自主退社の場合でも受領できるケースが多いです。いずれにしても、所属している会社の退職金制度を確認しておくことをお勧めします。

退職金の平均像もつかんでおきましょう。経団連の企業を対象とした「2018年9月度退職金・年金に関する実態調査結果」によると、大企業の高校卒勤続42年の定年時の退職金は2,037万7,000円、大学卒勤続38年で2,255万円8,000円になっています。大きい会社で定年まで勤め上げるのなら、老後の資産に対して大きな心配はいらないようです。

中小企業の場合はどうでしょう。東京都が実施している「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」によると、高校卒で定年まで勤務した場合で平均1,126万8,000円、大学卒の場合で平均1,203万4,000円です。中小企業の場合でも、60歳代での平均保有金融資産の達成のためには十分なのではないでしょうか?

雇用期間が短い場合は多くの退職金は望めません、また自営業の場合に退職金はありません。すでに金融資産が十分にあればいいのですが、不安な時はNISAiDeCoなどをフルに使って資産形成への行動を起こすべきでしょう。

老後(60代以降)の生活に必要な金額は?

老後の生活費はどれくらい必要なのでしょう。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年)」によると、夫婦2人で最低限必要な日常生活費の平均は22万1,000円です。「20~25万円未満」が29.4%と最も多く、「30~40万円未満」が17.0%、「25~ 30万円未満」が13.1%の順となっています。年間換算すると265万2,000円が平均の最低限必要な日常生活費です。

厚生労働省の「平成30年簡易生命表」によると、男性65歳の平均余命は19.70年、女性60歳は29.04年。20年で考えると最低限の日常生活費には世帯で約5,300万円が必要な計算となります。こう聞くと驚きますが、平均的な年金をもらえる世帯は十分に老後を送れることが次の章で解ります。

年金はどれくらいもらえる?

日本の年金制度は3階建てになっています。1階部分が国民の義務である国民年金(基礎年金)、2階部分が会社員なら厚生年金です。ここまでは公的年金制度と呼ばれるものです。そして3階部分は、企業型の確定拠出年金(DC)や個人型の確定拠出年金(iDeCo)などの私的年金制度です。

国民年金は20歳から60歳までの40年480カ月を完全に納入した場合の年間の上限が78万1,700円です。月6万5,141円です。2階部分は支払った額により大きく異なります。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年度)」によると、国民年金(基礎年金)の平均月額は5万5,708円(男子5万8,775円、女子5万3,342円)です。厚生年金の平均月額は基礎年金を含めて14万3,761円(男子16万3,840円、女子10万2,558円)です。したがって、夫が会社員、妻が専業主婦というケースだと、「16万3,840円+5万3,342円=21万7,182円)が月々の年金額です。 共稼ぎのケースだと、「16万3,840円+10万2,558円=26万6,398円)です。夫婦2人で最低限必要な日常生活費平均の22万1,000円はクリアできそうです。

ただ、夫婦とも自営業だったケースだと、(5万8,775円+5万3,342円=11万2,117円)だけになります。自営業で金融資産が少ない場合には、会社員の2階部分にあたる国民年金基金や3階部分のNISAiDeCoなどの、自助努力による老後資金を準備すぐに始めましょう。

賢く老後資金を貯めていくには?

不足分に対する考え方

上記の平均像で老後の生活を今一度予想してみましょう。夫が会社員、妻が専業主婦の場合、月に受け取る年金は平均で21万7,182円となります。夫婦2人で最低限必要な日常生活費の平均は22万1,000円なので、どうにか平均の場合で月々の収支のバランスはとれます。しかし、平均以下の年金受け取りの場合、住宅ローンに残債があったり、住居が賃貸だったりした場合は、明らかに不足することでしょう。さらに、病気や介護の状況によっては必要額が積み増しになります。毎月5万円不足で30年生きるなら1800万円、10万円不足で3600万円が不足するわけです。自分の状況から判断して、「貧困高齢者」「老後破産」を避けたいのなら、今からでも少しでも早く投資に着手した方がよいでしょう。

投資についての考え方

様々な考え方がありますが、一般的には、貯蓄とは「お金を蓄える」ことで、銀行の預金などがこれに相当します。一方、投資とは「利益を見込んでお金を出す」ことで、株式や投資信託などの購入がこの投資に当たります。投資には色々な種類があり、大きなリターン(利益)を生み出すものもありますが、同時に資産が減ってしまうというリスクも当然ながら存在します。資産を運用する場合は、比較的リスクの低い金融商品を組み合わせる分散投資で、バランスよく運用することを心がけましょう。

投資では一般的に、ハイリスク・ハイリターンの金融商品は株式投資、安定的に資産形成したいなら個人向け国債社債のような確定利付きの債券などだと言われています。現在は世界の多くの国が低金利であり、高い利回りを確保できる商品は多くはありません。株式投資でもディフェンシブな高配当銘柄への投資、確定利付きでは、インフラファンド、REITなども分散投資の対象として検討してみる価値はあるでしょう。

関連リンク:投資商品は色々あってわからない……「金融商品マップ」で一発理解!

年齢別の投資方針、対応策

40代以下の場合には資産形成できる期間が20年以上あるため、長期投資を始めれば老後資金形成には十分余裕があります。長期のため株式投資などある程度のリスクも取れます。

50代からの資産形成は、NISAiDeCoの優遇税制しつつ、自助努力が求められます。運用面では必要以上のリスクは取らず分散投資を心がけ、並行して倹約・貯蓄をしましょう。

60代から準備出来ることは労働です。副業などで世帯収入を継続すること、投資においては虎の子の保有資産を少しでも減らさないこと、生活自体をシンプルにして倹約することも大切でしょう。

冒頭に紹介した金融庁の報告書の「高齢社会における資産形成・管理」では、リタイヤ期前後の老後の資産形成・管理での心構えとして、主に3つのポイントにふれています。

① 60代には退職金が入り、働き方が変わるのでライフプラン、マネープランを見直す
② 収支の改善策として自助努力の資産形成を取り入れる
③ 長い人生を見据え資産を減らさぬように中長期的な運用の継続と計画的な取り崩しを実行

この3つポイントに沿って、具体的に自分の現状、将来像を「見える化」してみてはいかがでしょう。

ライフプランを立て目標に向かって実行あるのみ

今回の徹底分析で老後の収支についてかなり明確になってきたのではないでしょうか?
必要以上に不安になる必要はありません。適切なライフプランを立て、自助努力で目標に向かってとるべき行動を実行していきましょう。あなたの「人生100年時代」はそれでより充実したものになるのではないでしょうか。

2019年6月に金融庁が出した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 」をキッカケに「老後2,000万円問題」が話題となり、自分の老後資金について不安を感じた人も多いことでしょう。そもそも不安とは「わからない」から生じるものです。自分の退職金、老後の必要資金などの収支を具体的に知ることで、漠然とした不安は払拭できます。その点で「老後2,000万円問題」は良い効果を生み出しました。積み立て投信を始める人が一気に増えたのです。大手ネット証券4社では、20年3月の投信販売額は約2627億円と過去最高、積み立て投信の販売額も約407億円と9カ月連続で過去最高を記録しているのです。

老後に不安を持つ50代の投資初心者でも「必要資金を貯めるための考え方」や「資産形成へのアプローチ」を知ることで、老後の必要額を賢く準備する方法を解説します。

関連リンク:「老後に必要なお金」の目安と平均額 2,000万円?1億円?いくら?

2,000万円問題は投資の自助努力を支援

「老後2,000万円問題」は、「定年時に2,000万円ないと貧困高齢者まっしぐら」と間違えて解釈されて話題となった可能性があります。金融報告書では、夫65歳、妻60歳の夫婦で無職の世帯で、それまでと同じ生活を維持しようとすれば、世帯での月の平均不足額は約5万円、年間で約60万円になるという試算がベースです。人生100年時代を迎え、残りの人生を考えると、トータルでは1,300万円〜2,000万円が不足する計算でした。

夫65歳、妻60歳の夫婦でも、世帯収入がある場合も多いでしょうし、生活のレベルは今までと同じ必要もないでしょう、退職金や保険の存在を忘れている場合も多いではないでしょうか?

金融庁の報告書の目的は決して不安を煽ることではなく、早めに適切な備えをして、長期の資産形成の自助努力をすすめるという意図があったものなのです。

平均貯蓄額と金融資産の内訳を徹底分析

60代の平均貯蓄額と金融資産の内訳

金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2019)」によると、世帯主が60代の2人以上の世帯における金融資産保有額は平均で1,635万円になります。意外に多いので「自分は大丈夫だろうか?」と不安に思うかもしれませんが、これは「平均のマジック」であることに注意です。金融関係のデータは一部の資産家が平均を押し上げているので、平均値は実勢とは掛け離れています。中央値は650万円のためこちらが実勢に近い数値になります。

中央値の詳細データはないので、主な金融資産の内訳を平均値で見ていきます。預貯金が702万円(全金融資産の43%)、生命保険が324万円〔同20%)、株が184万円〔同11%)、投資信託が134万円(同6%)になります。

このデータはあくまで世帯のデータです。退職金を受けとれるなら預貯金部分が増えるわけですし、保険なども金融資産に含まれています。そう考えると、あなたの状態が中央値や平均値に近いなら、いきなり「貧困高齢者」になるとは考えづらいことがわかるのではないでしょうか?

50歳代の平均貯蓄額と金融資産の内訳

同じ調査で、世帯主が50代の場合を見てみましょう。金融試算保有額は平均で1,194万円になります。中央値は600万円です。

内訳は、預貯金が445万円、生命保険が324万円、株が145万円、投信が45万円です。50歳代と60歳代の間の差は、金融資産の総額が441万円、預貯金が257万円、保険は変わらず、株が66万円、投信が90万円増加しています。

すなわち平均像では、50歳代から60歳代の間の投資行動で、預貯金が257万円、株が66万円、投信が90万円を積み増しているわけです。子供の養育費や家のローンなどの支出のピークは確実に過ぎていきます。退職金を受け取る見込みがあるのなら預貯金増はそれほど難しくはないでしょう。50歳代からでもNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して投資を始めれば、税効果や資産形成が期待出来ます。60歳代の世帯平均の金融資産保有額達成がそれほど厳しいわけではないことがご理解頂けたでしょう。

それこそ、世帯主の年齢が若いのであれば、長期投資で平均以上の資産を形成することを必要以上に不安に思う必要はありません。投資への行動を始めればいいだけです。

老後のバランスシートを徹底分析

定年退職金はどれくらいもらえるの?

退職金とは、会社員が勤めていた企業を退職するときに支給される賃金です。その額は基本的には、務めた期間やその期間の基本給の水準によって様々です。定年時だけでなく、リストラによるアーリーリタイア、転職、家庭事情による自主退社の場合でも受領できるケースが多いです。いずれにしても、所属している会社の退職金制度を確認しておくことをお勧めします。

退職金の平均像もつかんでおきましょう。経団連の企業を対象とした「2018年9月度退職金・年金に関する実態調査結果」によると、大企業の高校卒勤続42年の定年時の退職金は2,037万7,000円、大学卒勤続38年で2,255万円8,000円になっています。大きい会社で定年まで勤め上げるのなら、老後の資産に対して大きな心配はいらないようです。

中小企業の場合はどうでしょう。東京都が実施している「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」によると、高校卒で定年まで勤務した場合で平均1,126万8,000円、大学卒の場合で平均1,203万4,000円です。中小企業の場合でも、60歳代での平均保有金融資産の達成のためには十分なのではないでしょうか?

雇用期間が短い場合は多くの退職金は望めません、また自営業の場合に退職金はありません。すでに金融資産が十分にあればいいのですが、不安な時はNISAiDeCoなどをフルに使って資産形成への行動を起こすべきでしょう。

老後(60代以降)の生活に必要な金額は?

老後の生活費はどれくらい必要なのでしょう。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年)」によると、夫婦2人で最低限必要な日常生活費の平均は22万1,000円です。「20~25万円未満」が29.4%と最も多く、「30~40万円未満」が17.0%、「25~ 30万円未満」が13.1%の順となっています。年間換算すると265万2,000円が平均の最低限必要な日常生活費です。

厚生労働省の「平成30年簡易生命表」によると、男性65歳の平均余命は19.70年、女性60歳は29.04年。20年で考えると最低限の日常生活費には世帯で約5,300万円が必要な計算となります。こう聞くと驚きますが、平均的な年金をもらえる世帯は十分に老後を送れることが次の章で解ります。

年金はどれくらいもらえる?

日本の年金制度は3階建てになっています。1階部分が国民の義務である国民年金(基礎年金)、2階部分が会社員なら厚生年金です。ここまでは公的年金制度と呼ばれるものです。そして3階部分は、企業型の確定拠出年金(DC)や個人型の確定拠出年金(iDeCo)などの私的年金制度です。

国民年金は20歳から60歳までの40年480カ月を完全に納入した場合の年間の上限が78万1,700円です。月6万5,141円です。2階部分は支払った額により大きく異なります。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年度)」によると、国民年金(基礎年金)の平均月額は5万5,708円(男子5万8,775円、女子5万3,342円)です。厚生年金の平均月額は基礎年金を含めて14万3,761円(男子16万3,840円、女子10万2,558円)です。したがって、夫が会社員、妻が専業主婦というケースだと、「16万3,840円+5万3,342円=21万7,182円)が月々の年金額です。 共稼ぎのケースだと、「16万3,840円+10万2,558円=26万6,398円)です。夫婦2人で最低限必要な日常生活費平均の22万1,000円はクリアできそうです。

ただ、夫婦とも自営業だったケースだと、(5万8,775円+5万3,342円=11万2,117円)だけになります。自営業で金融資産が少ない場合には、会社員の2階部分にあたる国民年金基金や3階部分のNISAiDeCoなどの、自助努力による老後資金を準備すぐに始めましょう。

賢く老後資金を貯めていくには?

不足分に対する考え方

上記の平均像で老後の生活を今一度予想してみましょう。夫が会社員、妻が専業主婦の場合、月に受け取る年金は平均で21万7,182円となります。夫婦2人で最低限必要な日常生活費の平均は22万1,000円なので、どうにか平均の場合で月々の収支のバランスはとれます。しかし、平均以下の年金受け取りの場合、住宅ローンに残債があったり、住居が賃貸だったりした場合は、明らかに不足することでしょう。さらに、病気や介護の状況によっては必要額が積み増しになります。毎月5万円不足で30年生きるなら1800万円、10万円不足で3600万円が不足するわけです。自分の状況から判断して、「貧困高齢者」「老後破産」を避けたいのなら、今からでも少しでも早く投資に着手した方がよいでしょう。

投資についての考え方

様々な考え方がありますが、一般的には、貯蓄とは「お金を蓄える」ことで、銀行の預金などがこれに相当します。一方、投資とは「利益を見込んでお金を出す」ことで、株式や投資信託などの購入がこの投資に当たります。投資には色々な種類があり、大きなリターン(利益)を生み出すものもありますが、同時に資産が減ってしまうというリスクも当然ながら存在します。資産を運用する場合は、比較的リスクの低い金融商品を組み合わせる分散投資で、バランスよく運用することを心がけましょう。

投資では一般的に、ハイリスク・ハイリターンの金融商品は株式投資、安定的に資産形成したいなら個人向け国債社債のような確定利付きの債券などだと言われています。現在は世界の多くの国が低金利であり、高い利回りを確保できる商品は多くはありません。株式投資でもディフェンシブな高配当銘柄への投資、確定利付きでは、インフラファンド、REITなども分散投資の対象として検討してみる価値はあるでしょう。

関連リンク:投資商品は色々あってわからない……「金融商品マップ」で一発理解!

年齢別の投資方針、対応策

40代以下の場合には資産形成できる期間が20年以上あるため、長期投資を始めれば老後資金形成には十分余裕があります。長期のため株式投資などある程度のリスクも取れます。

50代からの資産形成は、NISAiDeCoの優遇税制しつつ、自助努力が求められます。運用面では必要以上のリスクは取らず分散投資を心がけ、並行して倹約・貯蓄をしましょう。

60代から準備出来ることは労働です。副業などで世帯収入を継続すること、投資においては虎の子の保有資産を少しでも減らさないこと、生活自体をシンプルにして倹約することも大切でしょう。

冒頭に紹介した金融庁の報告書の「高齢社会における資産形成・管理」では、リタイヤ期前後の老後の資産形成・管理での心構えとして、主に3つのポイントにふれています。

① 60代には退職金が入り、働き方が変わるのでライフプラン、マネープランを見直す
② 収支の改善策として自助努力の資産形成を取り入れる
③ 長い人生を見据え資産を減らさぬように中長期的な運用の継続と計画的な取り崩しを実行

この3つポイントに沿って、具体的に自分の現状、将来像を「見える化」してみてはいかがでしょう。

ライフプランを立て目標に向かって実行あるのみ

今回の徹底分析で老後の収支についてかなり明確になってきたのではないでしょうか?
必要以上に不安になる必要はありません。適切なライフプランを立て、自助努力で目標に向かってとるべき行動を実行していきましょう。あなたの「人生100年時代」はそれでより充実したものになるのではないでしょうか。

(2020年7月31日公開記事)