- 借金には「良い借金」と「悪い借金」がある
- 「良い借金」とは
- 「悪い借金」とは
- 不動産投資ローンは悪い借金か?
- 不動産投資でローンを活用するメリット
- 不動産投資でローンを利用する際の5つの注意点
- 安定した家賃収入を得られる物件を選ぶ
- 毎月のローン返済額をシミュレーションする
- ローン以外の費用も理解する
- 金利上昇リスクもあることに注意する
- 頭金を入れて借入額を少なくする
- 不動産投資で借金地獄になってしまった5つの事例
- 事例1:金利が高いローンを利用してしまった
- 事例2:物件を相場より高い値段で購入してしまった
- 事例3:その地域での状況が変わってしまった
- 事例4:魅力のない物件を買ってしまった
- 事例5:ローンを支払うための自己資金がなくなった
不動産投資は首都圏や都市部の物件であれば、安価な物件でも一般的に1,000万円以上の投資が必要となり、現金一括でなくローンを利用する場合がほとんどです。その中で「借金=悪」というイメージから、ローンを組んで投資をすることに対して借金を抱えるという不安を感じる人もいるかもしれません。
本コラムでは、不動産投資で借金をすることが悪いことかどうか、借金をして失敗した事例も含めて解説します。不動産投資を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
借金には「良い借金」と「悪い借金」がある
「不動産投資ローンが悪い借金か」を説明する前に、借金には「良い借金」と「悪い借金」があることを理解しましょう。ほとんどの人は日々何かしらの借金をしながら生活しています。例えばクレジットカードや奨学金、住宅ローンや自動車ローンなどサービスを受けて後払いをするものは「借金」といえます。
「これらの借金は悪い借金か?」と聞かれて「悪い借金」と断定する人は少ないのではないでしょうか。借金自体が悪なのではなく、その借り方や使い方に「良い借金」「悪い借金」という考えがあります。
ここでは、良い借金・悪い借金とはなにか、それぞれの違いを理解し、借金の中には良い借金と悪い借金があることを解説します。
「良い借金」とは
「良い借金」という定義は明確にはありませんが、ここでは自分が無理なく返済できる範囲内での借金を「良い借金」と定義します。自分の収入の中で支払える範囲内での借金であり、生活を豊かにしてくれるものや生活上必要な借入を「良い借金」とします。
また、無理なく返済できる範囲でレバレッジを効かすことができる借金は「さらに良い借金」といえます。レバレッジとはテコの作用になぞらえて小さい力で大きな効果をもたらすという意味で、不動産投資では「小さい資金で投資額に対して数倍の投資をして収益性を高める」ということになります。自己資金に借入金を加えることでより大きな利益を生み出す投資をすることができます。
「悪い借金」とは
ここでは毎月の返済が困難で生活に支障をきたす可能性のある借金を「悪い借金」と定義します。例えば、借金返済のために食費などを過度に切り詰めるような借入や、最悪の場合返済できないような借金のことをいいます。
さらに、その借金が収益を生み出すものではなく自分の欲求を満たすものの場合は、人生設計を奪ってしまうこともあります。このように自身の生活に支障を与え、将来的な幸せを奪いかねない借金は「悪い借金」だといえるでしょう。
不動産投資ローンは悪い借金か?
不動産投資ローンは適切な物件に投資した場合には賃料収入によって返済が賄われ、レバレッジを利かして将来的な資産を生み出すため、前述の定義からいくと「良い借金」に当てはまります。
例えば月々の家賃収入9万円、不動産投資ローンの返済額が10万円の場合は、月々1万円の返済で家賃9万円の物件を購入できることになります。月々少額の投資だけで物件を手元に残して将来への備えをすることや節税効果の恩恵を受けることができます。また、ここでは、返済以外の費用を考慮していないため、実際には修繕費用や突発的な費用の計算も必要となります。
このように不動産投資は収入が安定的に確保できる物件に投資をすれば、少ない手出しで将来に向けた大きな資産とすることができます。なお、以下のコラムで資産運用しないほうがいい人の特徴を紹介しています。
【関連記事】資産運用しないほうがいい理由とは?しないリスク・向いていない人を解説
不動産投資でローンを活用するメリット
不動産投資では投資用物件を購入するために利用する「不動産投資ローン」を活用することが一般的です。また、ローンを利用して不動産投資を行うメリットは、例えば以下のようなものがあります。
・少ない自己資金で物件を購入できる(レバレッジ効果がある)
・手持ちの資金を残せる
・生命保険代わりになる
・支払利子などを経費として計上できる
なお、不動産投資ローンと似たもので「住宅ローン」がありますが、自己居住用物件の購入のみを対象とするため、住宅ローンを活用して投資用物件を購入することはできません。
以下のコラムで不動産投資ローンについて詳しく解説しています。
不動産投資でローンを利用する際の5つの注意点
ここからは、不動産投資を「良い借金」とするために注意すべきポイントを5つ解説します。
・安定した家賃収入を得られる物件を選ぶ
・毎月のローン返済額をシミュレーションする
・ローン以外の費用も理解する
・金利上昇リスクもあることに注意する
・頭金を入れて借入額を少なくする
安定した家賃収入を得られる物件を選ぶ
不動産投資の成功率を上げるには、まずは安定した家賃収入を得られる物件を選ぶことが最重要です。安定した家賃収入を得られる物件とは、入居率が安定していることで、継続して家賃が得られる物件のことをいいます。
例えば駅近物件などのアクセスのよい物件や、人口の多い首都圏や大都市の物件であれば賃貸需要を見込みやすく安定した入居率が期待できます。また、ファミリー層が多い場所ではファミリー向けの物件に投資するなど、地域のニーズを把握することも重要です。
以下のコラムで不動産投資の成功率や成功の基準、失敗する人の特徴を解説しています。
毎月のローン返済額をシミュレーションする
不動産投資ローンの月々の返済が生活の負担にならないよう、金利や借入額、返済回数をもとに毎月の返済額をシミュレーションしましょう。物件の購入価格や頭金、ローンの金利、返済期間などを考慮して、毎月の返済額を計算します。さらに、予期せぬ空室や修繕費などのリスクを考慮することも大切です。万が一、家賃収入が減少した場合に備えた予備資金も計算に入れましょう。
金融機関に相談することでシミュレーションを支援してくれることもあります。もし毎月の返済額が多くて「悪い借金」になりそうな場合は、その物件への投資を諦めたり、頭金を用意して借入額を減らしたり、返済期間を長くするといった調整をしましょう。
ローン以外の費用も理解する
不動産投資では初期の物件購入費のほかにも費用が発生します。ランニングコストの目安は家賃収入の20〜30%程度が一般的です。例えば以下のような費用があります。
・管理費:管理会社に管理を委託する場合の費用
・修繕費:将来の改築や修繕に備えた費用
・保険料:火災保険などの損害保険料
・税金:固定資産税・都市計画税
・突発的な支払い:空室時のローン返済補填や賃貸募集広告費用 など
賃貸募集広告費用は不動産会社に相談をすることで事前に目安額の確認が可能です。ローン返済額だけでなく総合的な費用を把握し、適切な予算管理を行うようにしましょう。
金利上昇リスクもあることに注意する
不動産投資ローンを利用する場合は金利上昇リスクを考慮することも重要です。金利には「変動金利」と「固定金利」の2つがあります。
変動金利は経済状況や政策金利の変動に影響を受け、金利が上昇するとローンの金利も連動して上昇しますが、固定金利であれば金利の上昇があっても返済額は変わりません。しかし、固定金利は変動金利よりも利率が高く設定されていることが多いため、金利が上昇しない場合はその分毎月の返済額が多くなります。
そのため、固定金利を選択し毎月の返済額は高くなるものの、金利上昇リスクを避け緻密な返済計画を練る、あるいは変動金利を選択して毎月の返済額は抑えられるものの、金利上昇リスクに備え余裕のある返済計画を立てるといった対策を考える必要があります。
頭金を入れて借入額を少なくする
頭金を入れることで借入額を少なくし、ローン返済リスクを下げることも有効です。借入額が少なくなることで金利上昇時の毎月返済額への影響を抑え、前述の金利変動リスクを軽減することができます。
借金を抱えることに不安がある場合は、借金の金額自体を少なくするために頭金の活用も検討しましょう。
以下のコラムで不動産投資ローンにおいて頭金を入れるメリットやデメリットを解説しています。
不動産投資で借金地獄になってしまった5つの事例
不動産投資で借金地獄に陥ってしまうことは資産形成を目指す不動産投資の中で最も避けたいリスクの一つです。ここではそうした問題に直面しないため、不動産投資ローンで借金地獄になってしまった事例を紹介します。
前述のように不動産投資ローンを借りることが悪いことなのではなく、その借金の内容や投資先が上手くいかなかった場合に「悪い借金」になります。事例を参考にして投資計画の慎重な検討とリスク管理の徹底をしましょう。
・事例1:金利が高いローンを利用してしまった
・事例2:物件を相場より高い値段で購入してしまった
・事例3:その地域での状況が変わってしまった
・事例4:魅力のない物件を買ってしまった
・事例5:ローンを支払うための自己資金がなくなった
事例1:金利が高いローンを利用してしまった
月々の返済額を気にせずに金利が高いローンを利用してしまい、日々の支払いが圧迫されてしまったケースです。金利が高いローンは返済額の大部分が利息に充てられるため、元本の返済が進まずに長期間にわたり高額な返済が続くことになります。これにより家賃収入がローン返済をカバーしきれず、赤字が続く状況に陥ることがあります。
そのため、ローンを選ぶ際には各金融機関の金利条件を比較検討し事前にシミュレーションを行いましょう。また、ローンを借りた後にも条件を見直すことは重要です。もし、金利や返済期間などをより有利な条件のローンに変更したい場合は、「ローンの借り換え」を検討するのも一つの手です。しかし、借り換えには金融機関へ支払う事務手数料や抵当権の抹消及び設定に係る登記費用などがかかります。そのため、購入前に十分な試算を行い検討することが重要になります。
以下のコラムで、住宅・不動産投資ローンの借り換え手数料の種類や借り換えのメリット・デメリット等について解説しています。
事例2:物件を相場より高い値段で購入してしまった
周囲の物件に比べて高い値段で購入してしまったために、想定の家賃収入が得られず売却もしにくくなってしまったケースです。過大評価された価格で物件を購入してしまうと、購入時点で物件の価値がローン残高を下回り売却してもローンを完済できない状態に陥ってしまうことがあります。
そのため、周囲の物件やその地域の特性(単身者とファミリー層のどちらが多いかなど)を必ず不動産会社に確認し、築年やエリア、広さにおいて同レベルの物件と大きく乖離した値段で売られていないか比較しましょう。
また、不動産会社からの情報のみを頼りにするのではなく、不動産情報サイトを閲覧し購入検討している物件の周辺における販売事例や賃貸募集事例を参考にしてみたり、現地調査をして最寄り駅からの導線に気になる点や周辺に嫌悪施設がないか、また騒音などがないかを事前に確認したりすることも重要です。
以下のコラムで、不動産投資の落とし穴と良い物件の選び方について解説しています。
事例3:その地域での状況が変わってしまった
購入時と数十年後では状況が変化していることもあります。例えば、近くにあった会社や大学などが移転したり、新しい駅や道路の建設計画が白紙になったりすると、その地域の魅力が減ってしまい、賃借人が見つからず空室が増加して家賃収入が減少することがあります。
地域の将来を見通すことは難しいですが、リスクを軽減するために地域の経済状況や開発計画の情報収集を行いましょう。また、投資する不動産がその地域の属性に強く依存する場合はこうしたリスクがあることを重々意識することも重要です。
事例4:魅力のない物件を買ってしまった
郊外の物件や中古物件は高利回りになる傾向がありますが、不動産投資を行ううえでは入居者が決まりにくい物件を取得してしまうリスクについても認識しておく必要があります。魅力のない物件とは立地が悪かったり、築年数が古くて設備が劣化したり十分な管理が行き届いていない物件を指します。こうした物件は賃借人が見つかりにくいだけでなく、売却時にも買い手がつきにくく価格が下がってしまうこともあります。
そのため、購入検討物件周辺の賃貸募集事例や人気の物件の賃料を事前に調べて、購入検討物件の現在賃料が周辺物件と大きく乖離していないかを確認しましょう。特に中古で一棟マンションやアパートなどの高額な収益物件を購入する場合は入居者やテナントの契約状況の一覧表であるレントロールから賃借人の属性も必ず調べましょう。
以下のコラムでレントロールのチェックポイントや確認すべき重要項目について解説しています。
事例5:ローンを支払うための自己資金がなくなった
転職等で給与が減少し、当初支払うことができていたローンやその他の費用を補填するための自己資金がなくなったケースも少なくありません。例えば企業のリストラや個人的な健康問題、転職などによって本業の収入が減少し、補填していたローンの返済を支払えなくなる場合です。
そのため、死亡や高度障害時など万が一のことがあった場合にローン残債が完済される「団体信用生命保険(団信)」に加入したり、将来的な個人のキャリアも考えて投資をするかどうかを検討したりすることが重要です。
- コラムに関する注意事項 -
本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
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