口座数は2322万を超え、およそ5〜6人に1人が使っている新NISA(2024年3月現在)。NISAの枠内で同じ金額を投資したとしても、投資の仕方によって運用益には大きな差が出る可能性がある。いくつかの投資方法でシミュレーションしてみた。
NISAで毎月コツコツつみたて投資……30年後の運用益は
024年から1月から始まった新NISAでは、旧NISAのつみたてNISA、一般NISAがそれぞれ「つみたて投資枠」、「成長投資枠」に変わり、以前はいずれか一つしか選べなかったが、新制度で2つを併用して投資できるようになった。
つみたて投資枠の投資対象は長期の積立・分散投資に適した投資信託(ETF含む)で、年間の投資枠は120万円、非課税保有限度額が1800万円。このつみたて投資枠で毎月の給与から3万3000円、年間39万6000円を30年間積立投資した場合、運用総額はいくらになるだろうか。
まずこの期間、投資せずにお金を貯めただけだと元本は1188万円になる(銀行などに預けず利子がつかない場合)。
NISAの平均利回りは3~10%ほどが目安といわれているので、もし手堅く利回り3%としてシミュレーションすると、30年後には1914万4630円になる。そのうち運用益(ただ貯金した場合より多い額)は726万4630円という結果だ。
これが6%になれば運用総額は3231万5463円で、運用益は2043万5463円まで増える。
毎月3万3000円×12ヵ月×30年=1188万円(元本)
●つみたて投資枠
3%で運用……1914万4630円(うち利益は726万4630円)
6%で運用……3231万5463円(うち利益は2043万5463円)
NISAの成長投資枠でボーナスを一括投資……30年後の運用益は
新NISAの成長投資枠の特徴は、つみたて投資枠では買えない株式が買えることで、非課税保有限度額は1200万円までだが、年間投資枠は240万円まである。
もし年2回のボーナスからそれぞれ19万8000円ずつ投資したとしよう。1年のうち2回だけ、上のつみたて投資枠でのシミュレーションと同じ額(年間39万6000円)を投資するという想定だ。
これで30年間運用したとすると、利回り3%の場合運用総額が1940万5061円、運用益は752万5061円という結果になる。
利回り6%であれば運用総額3318万5464円に対して、運用益は2130万5464円だ。
毎月19万8000円×2回×30年=1188万円(元本)
●成長投資枠
3%で運用……1940万5061円(うち利益は752万5061円)
6%で運用……3318万5464円(うち利益は2130万5464円)
なお成長投資枠でも積立投資はできるが、毎月の投資費用を捻出するのが難しい人には一括投資のほうが便利かもしれない。
NISAで給与をつみたて投資&ボーナスを成長投資枠一括投資……30年後の運用益は
上のシミュレーションでは、つみたて投資枠と成長投資枠、それぞれで計算したが、実際には、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠を併用できる。つまり、月々の給与を積立ながらボーナスの一括投資ができるということだ。
併用によって年間投資枠も360万円に拡大するが、非課税保有限度額はつみたて投資枠の1800万円と成長投資枠1200万円のどちらか一方しか利用できないので最大1800万円は変わらない。
それではさらに、この2つの枠の併用でシミュレーションしてみよう。この場合も、年間の投資額は39万6000円に固定する。この内訳を、つみたて投資枠で月々1万3000円の年間15万6000円、年2回のボーナスから12万円ずつ、年間24万円を成長投資枠でそれぞれ運用したとする。
この場合、利回り3%では運用総額が1930万2467円、運用益が742万2467円となる。利回り6%の場合は運用総額3284万2737円、運用益は2096万2737円だ。
(毎月1万3000円×12ヵ月+12万円×年2回)×30年=1188万円(元本)
●つみたて投資枠と成長投資枠を併用
3%で運用……1930万2467円(うち利益は742万2467円)
6%で運用……3284万2737円(うち利益は2096万2737円)
以上のシミュレーションでは、もっとも運用総額が高くなるのは「成長投資枠のみでボーナス一括運用」、次が「投資枠と成長投資枠の併用」、最後は「つみたて投資枠のみでの運用」という結果になった。
運用総額が一番高かった成長投資枠での一括運用と、一番低かったつみたて投資枠で運用した場合の金額差は、利回り3%で29万431円(1940万5061円-1914万4630円)、利回り6%では87万円だ(3318万5464円-3231万5463円)。
年間にすれば約9681円と2万9000円の差ではあるが、せっかく将来に備えて投資をするなら運用額が少しでも増えたほうがいいのではないだろうか。
ただし、この結果はあくまでもシミュレーション。成長投資枠では個別株に投資すると、配当や優待がもらえることもあるが、それらは考慮していない。また、これまで実現できた利回りを今後も維持できるとは限らない。
あくまで参考にしながら、それぞれの経済事情や生活スタイルなどにあわせて、総合的に判断すべきだろう。
文・江口剛(フリーライター)
編集・dメニューマネー編集部