2024年前半のアメリカ株式市場は、主役の米エヌビディアを筆頭にAI関連半導体が好調で、その人気は日本の投資家の間でも高く、新NISAでの買い付け額はトヨタ自動車を上まわったほどだった。
しかし、6月のピークから8月の安値まで、1ヵ月半で5割を超える下げを見せた。エヌビディアのような半導体企業は“景気敏感株”といわれる。
新NISAで投資を始めたような初心者は、このような人気銘柄に目を取られることなく、景気に左右されづらい「ディフェンシブ銘柄」への投資を検討したほうがいいと言われる。ディフェンシブ銘柄どはどんなもので、どうやって選べばいいのだろうか。
景気に左右されづらい「ディフェンシブ銘柄」とは?
景気に左右されやすい「景気敏感株」と、景気に左右されづらい「ディフェンシブ株」はそれぞれどういう業界・産業を指すかというと、景気敏感株は、製造業、自動車、鉄鋼、素材産業などで、ディフェンシブ株は医薬品、飲料・食品、公共事業、通信、嗜好品、日常品などといわれる。
景気敏感株は、景気拡大期にその業績が伸びるので、株価も大きく上がることが多いが、逆に景気後退期には株価の下落も大きくなりがちだ。景気後退局面で景気敏感株に投資をすると痛い目に遭うだろう。
一方、ディフェンシブ株は、業績の波が少ないため、株価も比較的安定する傾向にある。株価の変動が比較的小さいため、リスクを抑えた運用が可能だ。長期的な視点で資産を守りながら増やしたい投資家にとって、ディフェンシブ銘柄は安定したリターンを提供する重要な選択肢である。
ディフェンシブ銘柄は割安銘柄であることも多い
ディフェンシブ銘柄は、いわゆる“成長セクター”の企業ではなく、高配当といわれる銘柄と重なることも多い。
たとえば通信株。通信需要は景気が後退してもそれほど落ちないため、ディフェンシブに分類される。最大手のNTT <9432> は、コロナ禍でも大きな減益にはならなかった。会社予想ベースで、PERは約11倍。配当利回りは約3.28%(8月末時点)と割安感がある。
薬品株もディフェンシブとされ、世界最大手の武田薬品工業 <5402> は、PER(株価収益率)が高い(利益に比べて株価が割高とされる)ものの、配当利回りは4.34%(8月末時点)。
このほかにも、食品や嗜好品も景気後退でも需要は落ちない。大手のJT <2914> のPERは14.91倍と平均的だが、配当利回りは4.69%と高い(8月末時点)。
メンタルの安定のためにポートフォリオにディフェンシブ銘柄を
こうした実態を踏まえて、投資家としてどうすればいいかというと、メンタルの安定のためには、安定した性格の、ディフェンシブ株を持てばいいのだ。
景気敏感株は、株価の上下が大きいため、買うタイミングを間違えると、高値づかみしてしまうことになる。この点、値動きの幅がさほど大きくないディフェンシブなら、買うタイミングも景気敏感株ほど難しくはない。
次のエヌビディアがどこか探すよりも、安定性のあるディフェンシブ株のポートフォリオを組むほうが、難易度は低いし、一喜一憂せずに長期投資できるのではないだろうか。
なお本記事の目的は、一般に「景気敏感株」と「ディフェンシブ株」に分類される銘柄の特徴を紹介することであり、一例として紹介したディフェンシブ株を推奨する意図はないので、その点は注意して欲しい。
文/編集・dメニューマネー編集部