「医療保険はどんどん新しくなる」といったことを聞いて、医療保険の見直し、切り替えなどを検討したいと思っている方もいるでしょう。
しかし、現在加入している医療保険の保障内容を見直したいと思ったときに、せっかく今より年齢が若いときに加入した保険を解約して切り替えてしまうことは本当に正しい選択と言えるのでしょうか?
解約のタイミングによっては、取り返しのつかないほどの損をしてしまう場合もあります。
今回は、医療保険の解約を考えている方に向けて、解約前に必ず確認してほしい解約のデメリットについて解説していきます。
また、実際に解約する場合にもらえる可能性のある解約返戻金や、具体的な解約方法についても合わせて解説しています。
この記事を読んでいただくことで、今加入されている医療保険を本当に解約するべきかどうかが明確になることでしょう。
医療保険の解約とは?
医療保険の解約の概要
医療保険には、保険期間が予め定められている『定期型』と、保険期間の定めがない生涯保障タイプの『終身型』があります。
そして、医療保険の解約は、大きく2つに分けることが出来ます。定期型の保険期間が満了(更新)するタイミングで契約更新をせず保障を終了させる方法と、定期型の保険期間や終身型で保障期間中に解約請求書を提出して解約する方法です。
また保険をすべて解約しなくても、必要な保障部分のみを残す方法もあります。それは現在の保障内容を縮小する『減額』という方法や、特約部分のみを解約する『部分解約』という方法で、一口に解約といっても様々なパターンがあることをご理解ください。
医療保険の解約に解約金(違約金)はかかるの?
医療保険の解約には、どこの保険会社も『解約金』や『違約金』といった保険会社への支払いが生じるペナルティは設けていませんのでご安心ください。
医療保険を解約する3つの理由
現在契約している医療保険を解約する理由としては、一般的に以下の3つが大きいと思います。
①生活環境の変化
②定期型保険の満期
③より魅力的な保険を見つけた
生活環境に変化があった
加入したときはその保険料で大丈夫と考えていても、時間が経ち生活環境や考えが変化して節約する必要が出てきたりする場合もあるかと思います。
契約はしているものの、実際に入院や手術をしない限り給付金を受取る事がない医療保険だけに「出費項目の何かを削る」場合には真っ先に候補に上がる事も良くわかります。
例えば『結婚』・『出産』・『転職』・『退職』といった人生の中での重要なイベントの際には、自分の生活環境が大きく変わるとともに経済的な事情も大きく変化します。
そういった変化のタイミングに応じて保障内容も見直す必要が出てくるので、必然的に医療保険の解約(減額・部分解約)という流れになるかと思います。
定期型保険が満期を迎えた
定期型保険は、保障の期限が設定されている分、終身型保険よりも保険料が安く設定されている点が大きなメリットです。
しかし、定期型保険の満了に伴う更新の時は、その時点での年齢で保険料を再計算されるため、保険料が思ったよりも高くなることもあり、年齢が上がるにつれて保険料が安いというメリットも小さくなってしまうという問題点があると言えます。
定期型保険が満期を迎えたときは、見直しの大きなタイミングの一つです。
より魅力的な保険を見つけた
医療保険は各保険会社が数年単位で新商品を投入してきます。これはもちろん、その時々の医療事情に合わせて研究開発されているものです。新たに発売された保険商品は、魅力的に感じるかもしれません。
例えば、現在加入中の保険会社の営業マンが新商品を薦めてきた場合など、薦められた内容で良いと判断できたのであればそのまま切り替えても良いと思います。
ただ、切り替える場合には現在加入中の医療保険との違いを整理するのが良いと思います。と同時に良い商品と思っても既契約と比較して問題点があれば他社商品も扱う代理店などに相談するのも一つかと考えます。
医療保険の解約返戻金とは?
医療保険の解約返戻金の概要
解約返戻金とは、保険の解約時に契約者に払い戻されるお金のことを言います。
医療保険では、一般的に解約返戻金は発生しないことが多いです。医療保険は、病気やケガでの入院や通院に備えるための保険という性質を持っているので、基本的には途中で解約してもお金が戻ってこない「掛け捨てタイプ」がほとんどです。
一方で、満期時や途中で解約してもお金が戻って来る「積立型タイプ」の医療保険もあります。
ただ、積立型といっても満期保険金や健康還付金といった名目で支払った保険料の総額程度が戻ってくるタイプが多く、資産運用を目的にできるような貯蓄性はありませんのでご注意ください。
医療保険の解約返戻金は確定申告が必要なの?
一般的に医療保険には解約返戻金は発生しませんので解約してもほとんどの場合所得税の課税対象にはなりません。
ただし上述の通り、積立型の医療保険を解約する等の場合には解約返戻金が発生する可能性があります。
この場合は所得税の課税対象となり、確定申告が必要なケースがあります。
しかしながら、保険の解約返戻金は一時所得となるため、解約返戻金から既に支払った保険料を差し引いた残額からさらに50万円の特別控除を差し引き、その額に1/2を乗じた金額が課税所得金額になります。
また、給与所得者であれば、給与所得以外の所得が20万円以下の場合は確定申告そのものが不必要となります。従ってこういったケースでは解約返戻金を受け取ったとしても結果的に所得税は非課税となる場合が多いということになります。
医療保険を解約する3つのデメリット
上述の通り、医療保険を解約すること自体にペナルティは存在しません。しかしながら医療保険の解約については慎重に考えていく必要があります。
これから説明する通り、いくつかのデメリットが存在しているからです。
不利益になることを考慮に入れた上で、最終的な判断を下すようにして下さい。それでは、医療保険を解約するデメリットを見ていきましょう。
一度解約したら元には戻せない
保障を見直すために現在加入中の医療保険を解約する場合、一般的に、若い時に加入した保険より新たに加入する保険の方が保険料は高くなることが多いと思います。
また、現在の健康状態によっては新たな保険に加入できない、あるいは加入できても何らかの条件が付く可能性があります。
また、主契約を解約すると特約も同時に解約となるため、特約部分に必要な保障がある場合についても要注意です。
保険は一度解約の手続きを取ってしまうと元には戻せないため、保障見直しの際の保険解約については、十分注意を払って手続きを行う必要があります。
新たな保険に加入するまでの無保障期間
加入中の保険を解約して新しい保険に乗り換える際は、新しい保険の契約が成立する前に元の保険を解約してしまうと保障の空白期間が生じます。ですから、必ず新しい契約の成立を確認した後に解約の手続きを行うことが重要となります。
通院をして治療を受けている方や、薬を服用しているという方は、新たに医療保険に加入ができない可能性がありますので、加入中の保険を解約して新しい保険に切り替える際は、解約の前に自分の現在の健康状態を必ず確認し新たに医療保険に加入できるか確かめる必要があります。
それ以外にも、年齢・職業などによる加入制限もあるので、解約する場合は必ず「新しい契約が成立した後」にしましょう。
元保険の解約と新たな保険の契約のタイミングによっては、両方の保険の保険料を払うことになるかもしれません。しかし、無保障期間をなくすための必要経費だと捉えるようにして下さい。
解約後過去の請求漏れは取り戻せない
医療保険を解約する際は、給付金(入院給付金、手術給付金等)の請求漏れがないか確認してからにしましょう。
手術給付金を請求できることに気づかず半年以上も請求しなかった実例もあります。人間ドックで大腸の精密検査を受けるよう指示された方で、内視鏡で精密検査を受けた時に大腸ポリープが発見された際にその場で切除されました。
これはれっきとした手術で多くの場合手術給付金を請求できますが、この方の場合、精密検査は麻酔で眠った状態で行われ、本人は手術を受けている認識もなかったので手術給付金を請求されませんでした。
なお、解約日前に入院したり手術を受けたりした場合、解約後であっても給付金を受け取れる可能性があるので保険会社に問い合わせてみることをおすすめします。
医療保険を解約する以外の代替案
ここまで、医療保険を解約する場合のデメリットを解説してきました。医療保険を解約する際のデメリットは思ったよりも大きいと感じられた方も多いのではないでしょうか。
では、医療保険自体を解約する以外に月々の保険料を減らす方法はあるのでしょうか。ここでは医療保険の解約に変わる解決策を提示したいと思います。
医療保険の減額
医療保険契約においては前述の通り、保険をすべて解約しなくても必要な保障額を残す『減額』という方法があります。(入院保障日額10,000円を5,000円に引き下げる等)
この方法では加入中の保険の保障額を減じることになるため、結果的に支払う保険料を抑えることができます。
医療保険の特約の解約
一般的に医療保険には、主契約である入院保障に様々な特約が付帯している場合が多いと思います。例えば、がん・心疾患・脳血管疾患等の三大疾病に対する保障(一時金特約等)や、就業不能特約、先進医療特約等といったものです。こういったケースでも上述の通り、不要な特約部分のみを解約する『部分解約』という方法が使えます。
こちらも保険の特約部分のみを解約することで、保険料を抑えることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
様々な理由で医療保険の解約を検討する場合には、違約金やペナルティは存在しないものの上述の通り注意するべき点がたくさんあります。
実際に新しい保険商品を比較検討し、現在契約中の医療保険を解約するか、また減額・部分解約で対応するか等の決断はなかなか難しいかもしれません。
こういった場合には、まず手始めに自分がどういった医療保険に加入しているかの現状分析を信頼のおけるファイナンシャルプランナーにご相談されることをお勧めいたします。
執筆◎猿渡 久人(ファイナンシャルプランナー)
1992年大学卒業後、大手証券会社入社。個人営業・法人営業を経験後、1999年外資系生命保険会社へ転職。以降福岡にて14年間勤務。2013年総合保険代理店(株)アイ・ティ・コンサルティング入社。MDRT成績資格終身会員。力の限りお客様に寄り添う営業スタイルをモットーに、ビジョン実現のお手伝いをさせていただきます。
■保持資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格、トータル・ライフ・コンサルタント