50歳代の平均貯蓄額は「単身世帯1391万円・二人以上世帯1147万円」

物価高や少子高齢化、社会保険料の増加など、将来や老後の生活に対する不安要素はさまざまあります。
2024年10月からは、従業員数51人~100人の企業等で働くパート・アルバイトの方が新たに社会保険の適用となることが決定。
年収が106万円を超えて社会保険に加入した場合、手取り収入が減らないように事業主の負担による「社会保険適用促進手当」の支給が認められています。
しかし、「社会保険適用促進手当」は事業主の判断で、事業主から労働者へ向けて支給されるもの。
新たに社会保険の適用となり、事業主の判断によって「社会保険適用促進手当が支給されない」と、手取り収入が少なくなってしまいます。
厚生年金保険に加入すると将来もらえる年金が増えるメリットがありますが、社会保険料は事業主と折半で支払わなければなりません。
そのため、新たに社会保険の加入対象となるパート・アルバイトの方は、月々の手取り収入が少なくなる可能性が懸念されています。
また、年金のみで老後の生活を過ごすことは厳しい傾向にあるため、将来に向けて貯蓄や資産形成などに取り組む人が増加中です。
そこで今回は、老後を意識する人が多くなる「50歳代の平均貯蓄額」をご紹介し、50歳~65歳までに新NISAの制度を利用した積立投資で「1000万円つくるのに必要な積立額」をシミュレーションしてみます。
新NISA制度や利用方法についてもわかりやすく解説するので、将来や老後の生活に向けてご活用ください。
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50歳代の貯蓄事情「平均貯蓄額は1391万円」
50歳代になると、定年後の生活を考えはじめる方が増えてきます。
老後に向けた貯蓄をはじめている人もいるかもしれませんが、同年代はどれほど貯蓄できているのでしょうか。
ここからは、金融広報中央委員の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」より、50歳代の貯蓄額を「単身世帯」と「二人以上世帯」に分けて見ていきます。
※本章で確認する貯蓄額(金融資産保有額)には預貯金以外に株式・投資信託・保険などの金融商品残高が含まれます。

【50歳代の単身世帯】平均貯蓄額・中央値
- 平均:1391万円
- 中央値:80万円
金額階層別|世帯割合
- 金融資産非保有:38.3%
- 100万円未満:11.2%
- 100~200万円未満:5.2%
- 200~300万円未満:2.7%
- 300~400万円未満:3.6%
- 400~500万円未満:3.8%
- 500~700万円未満:4.6%
- 700~1000万円未満:5.5%
- 1000~1500万円未満:4.9%
- 1500~2000万円未満:4.1%
- 2000~3000万円未満:4.4%
- 3000万円以上:9.3%
50歳代・単身世帯の「平均貯蓄額は1391万円」です。
ただし、あくまでも平均額なので、貯蓄が多い世帯も含めた金額となります。
より実態に近い数値と考えられている、50歳代・単身世帯の「貯蓄額中央値は80万円」です。
また、貯蓄額ごとの世帯割合を見ると、38.3%の世帯が貯蓄ゼロとなっています。
次に、50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額を見てみましょう。
50歳代・二人以上世帯の貯蓄「平均値・中央値」はいくら?
「50歳代・二人以上世帯」の貯蓄額は、以下のとおりです。

【50歳代の二人以上世帯】平均貯蓄額・中央値
- 平均:1147万円
- 中央値:300万円
金額階層別|世帯割合
- 金融資産非保有:27.4%
- 100万円未満:9.1%
- 100~200万円未満:6.4%
- 200~300万円未満:3.8%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:3.8%
- 500~700万円未満:5.6%
- 700~1000万円未満:5.5%
- 1000~1500万円未満:8.9%
- 1500~2000万円未満:4.2%
- 2000~3000万円未満:5.4%
- 3000万円以上:11.2%
50歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1147万円、中央値は300万円でした。
50歳代の単身世帯・二人以上世帯ともに中央値を見ると、老後の生活に不安を感じる水準ではないでしょうか。
また、貯蓄ゼロ世帯も多く、50歳代単身世帯の38.3%、50歳代2人以上世帯の27.4%が貯蓄ゼロという結果でした。
50歳代は収入が高くなる傾向にありますが、子どもの教育費や車の買い替え、住宅ローン、冠婚葬祭など、支出が多くなりやすい年代でもあります。
また、家計をやりくりして毎月の貯蓄を増やしたとしても物価の上昇が続いている昨今では、預金だけでお金を増やすには限界があります。
そこで資産形成として注目を集めているのが、「新NISA」制度を活用した積立投資です。
日本証券業協会の「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年5月末時点)」によると、 NISA制度を利用して資産形成に取り組む人が増えています。
次章で、NISAの口座開設数と買付け額の推移を見ていきましょう。
NISAの口座開設数と買付け額の推移

日本証券業協会の「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年5月末時点)」によると、 2024年3月末時点で「NISA口座数は2323万口座」となっています。
2023年12月末時点と比べ、わずか3か月で「NISA口座は187万口座増加」。
NISAは1人1口座という決まりがあるため、3か月の間に187万人がNISA口座を開設したことになります。
将来や老後の生活に向けた資産形成に取り組む人が、増えていることがわかりますね。
新NISAの制度を利用した積立投資で、50歳から65歳までに「1000万円」つくりたい場合、毎月いくら積み立てればよいのか次章でシミュレーションしてみましょう。
【新NISA】50歳から65歳までに積立投資で「1000万円」貯める!積立額シミュレーション
2014年~2018年にかけて一般NISAやジュニアNISA、つみたてNISAが開始されましたが、2024年1月からは新NISA制度がスタートしました。

新NISAとは、少額投資非課税制度のことです。
投資による利益には通常20.315%の税金がかかります。
しかし、新NISA制度を利用すると、投資で得た利益はすべて非課税になります。
そのため、新NISAは一般口座や特定口座での資産運用と比べ、利益に対する税金が非課税となる分、資産形成を行いやすいのが特徴です。
では、老後資金として「50歳から65歳までに1000万円を確保したい」と考えた場合、毎月必要な積立額はいくらでしょうか。
利回り「1%~10%」でシミュレーションしてみます。

運用利回り別|50歳から65歳までの15年間で1000万円つくるのに「必要な毎月の積立金額」
- 1%:5万1516円
- 2%:4万7684円
- 3%:4万4058円
- 4%:4万635円
- 5%:3万7413円
- 6%:3万4386円
- 7%:3万1549円
- 8%:2万8899円
- 9%:2万6427円
- 10%:2万4127円
上記は、あくまでシミュレーション結果となります。
運用利回りは、スタート時点で確定されたものではありません。
日々の生活を送るうえで、毎月無理なく積立投資ができる金額を試算し、許容できるリスクについてもよく検討しておくことが大切です。
なお、金融庁「長期・積立・分散投資とNISA制度」によると、世界の主な株価指数に20年間(1998~2017年)つみたて投資をした場合「国内(日経平均)」で5.5%、「米国(S&P500)」で9.1%のリターンとなっています。
一見するとアメリカへの投資がリターンが高いように見えますが「ハイリスク・ハイリターン」と言われるように、高いリターンが期待できる商品は、リスクも比例することを覚えておきましょう。
リスクを軽減させるには、投資対象の国を分散させたり、株や債券など幅広い資産に分散投資することが大切です。
なお、投資には元本割れリスクが伴いますが、投資の方法や市場などの影響により物価上昇を上回るペースで資産が増えることが期待できるのも資産運用の1つの魅力となっています。
次章では、新NISAを利用する手順について、わかりやすく解説していきます。
新NISAを利用するには?

ここまで、新NISAを利用した積立投資で、50歳から65歳までに「1000万円」貯めるための積立額のシミュレーションを確認しました。
では、新NISAを利用するには、まず何をしたらよいのでしょうか。
新NISAを利用することができるのは、「日本国内に住んでいる18歳以上の方」です。
また、新NISAの口座は「1人につき1口座のみ」と決まっています。
新NISAの口座を開設する金融機関は、年単位で変更可能です。
なお金融機関ごとに、新NISAの対象となる金融商品や手数料などが異なります。
「新NISAを利用する手順」は以下のとおりです。
新NISAを利用する手順
税務署による確認で、NISAが二重口座であると判明した場合、たとえ新NISA口座で金融商品を買付け済みだったとしても、特定口座もしくは一般口座へ移管されます。
その場合、NISAの特徴となる「利益に対する20.315%の税金が非課税」は適用されなくなります。
「新NISAは1人1口座のみ」ということを覚えておきましょう。
まとめにかえて
本記事では、50歳代の貯蓄事情を踏まえ、新NISAを活用した積立投資のシミュレーションを行いました。
50歳代になると老後の生活をより意識する方が増えてきます。
新NISAの制度を利用して、積立金額を増やしたり、利回りのパーセンテージが大きいものを選んだりすると15年間で1000万円をつくることが期待できるでしょう。
ただし、期待できる利回りのパーセンテージが大きな金融商品は、リスクも比例して高くなります。
投資におけるリスクとは、値動きのブレのことです。
高いリターンが期待できる金融商品は、リスクも高くなる傾向にあります。
そのため、新NISAの制度を利用するときは、ご自身のリスク許容度と合わせて投資先を検討することが大切です。
また、生活費や万が一に備えての生活防衛資金を新NISAへあてるのではなく、余剰資金で資産形成を行うように心がけましょう。
豊かな老後の生活を目指し、まずは情報収集からはじめてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」
- 金融庁「つみたてシミュレーター」
- 金融庁「長期・積立・分散投資とNISA制度」
- 金融庁「NISAを知る」
- 日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年5月末時点)」
- 厚生労働省「社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について」
- 政府広報オンライン「「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?」
- 厚生労働省「社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」
- 厚生労働省「社会保険適用促進手当に関するQ&A」
(2024年9月17日公開記事)