もらえる年金額を増やすには、受給を66歳以降に繰り下げる方法がありますが、誰にでもメリットがあるわけではありません。繰り下げ受給をするならやっておきたい2つのことがあります。
年金を繰り下げ受給すると最大84%増える
年金の繰り下げ受給とは、通常65歳からもらえる公的年金の受け取り開始を遅らせることで、繰り下げた月数に応じた額が年金に上乗せされる制度です。
2022年度からは、もともと70歳までだった上限年齢が75歳まで引き上げられました(ただし1952年4月1日以前生まれの人、または2017年3月31日以前に年金を受け取る権利が発生している人を除く)。
具体的には、繰り下げた月数×0.7%が加算され、最長の75歳まで繰り下げると、受け取れる年金が84%も増えます。たとえば、月に15万円の年金がもらえる予定の人が75歳まで繰り下げると、月に27万6000円にまで増えるのです。
繰り下げるためにすべき2つのこと
繰下げ受給をするためには、年金がなくても生活できるだけのお金が必要です。そのためにできる2つの方法があります。
方法1 66歳以降も収入を得続ける
働き続けられる体力と環境があるなら、収入を得続けましょう。そうすることで、年金ををもらうタイミングを遅らせても、生活を安定させられるでしょう。
多くの企業が60歳で定年退職となりますが、政府は企業に対し、65歳まで雇用の機会を確保するよう義務付けています。また、努力義務ではありますが、企業には、70歳まで働き続けられる制度を整えるよう課せられています。
ただしこの方法については注意点もあり、繰り下げをしても年金額が増えない可能性があるので、後ほど詳しく紹介します。
方法2 私的年金や年金保険などを準備しておく
受給開始までの間、つなぎの年金として、DC(企業型確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などを用意しておくのも一つの方法です。
個人年金保険や貯蓄も用意しておきたいところです。
いずれにせよ、生活に必要なお金を把握しておくことが先決です。万一の生活防衛費も含め、家計のキャッシュフローを見直しておきましょう。
繰り下げ受給の注意点
繰り下げ受給をすると年金額は増えますが、注意点もあり、まず受給期間が短くなります。
もらい始めて約11年経たないと、せっかく年金が増えても受け取る総額は少なくなります。
次に、もらえなくなるお金があることにも注意しましょう。
たとえば、加給年金(厚生年金の被保険者に65歳未満の扶養者がいる場合もらえる年金)は、繰り下げしている間は支給が止められます。配偶者との年齢が離れている人は損するかもしれないので、慎重な判断が必要です。
さらに、66歳以降に仕事をする人は繰り下げをしても年金額が増えない可能性があります。なぜなら、在職老齢年金制度というものがあり、報酬月額と年金額の合計が50万円を超えた年金はカットされ、その部分は繰り下げの計算から除かれるためです。
繰り下げ受給を目的として66歳以降も働こうと考えている人は、給与の額によっては繰り下げの恩恵を受けられないかもしれないので、不安なら専門家に相談して試算しておくとよいでしょう。
文・中山 葉月(フリーライター)
文/編集・dメニューマネー編集部