「NISAで投資するなら、とりあえず“オルカン”と”S&P500”で決まり」。人気の高さからこんなふうに考えている人も多いだろうが、過去の投資パフォーマンスが優れているからといって、今後もそうなるとは限らない。それでは何をどれくらい買えばいいのか──。ポートフォリオの考え方はたくさんあるが、一つの参考として、投資のプロの手法を見てみよう。
「オルカン」「S&P500」のリスクと分散投資の重要性
新NISAで人気の「オルカン」「S&P500」は、どちらの商品も米国株、特にGAFAを始めたとしたハイテク銘柄への投資比率が高いことがリスクだ。米国の経済成長が止まった場合や米国の大企業が失速した場合のリスクが高く、長期運用に欠かせない分散投資ができない。
オルカンは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託の略称だ。全世界(日本を含む先進国・新興国)の株式に投資するファンドだ。先進国の比率が約85%、うち62%が米国株である。
一方、「S&P500」は米国の代表的な500社からなる株価指数で、それに連動する投信の略称だ。アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、アルファベット(グーグル)、メタなど上位7社だけで、なんと約25%も占める。分散投資のつもりが、実は米国株に偏った投資になる。
長期で安定した成果を出したいなら、複数の資産に分散投資を行うべきだ。そこで参考にしたいのが投資のプロである“GPIF”の運用方針だ。
運用額世界一、投資のプロ「GPIF」の運用方針:高い資産を売り、安い資産を買う
GPIFとは、Government Pension Investment Fundの略で、年金積立金管理運用独立行政法人のこと。日本の公的年金(国民年金など)を運用している。
254兆円(2024年度第1四半期末)の資金を運用しており2001年の開設以来の累積収益額は162兆7708億円(年率4.47%)にのぼる。、その運用額の大きさから“投資のクジラ”とも呼ばれる。なぜそう呼ばれるかというと、豊富な資金でたくさんの銘柄を買うこと、そして周りに大きな影響を及ぼすことなどのようだ。
GPIFの基本ポートフォリオ(積立金の基本となる資産構成割合)は、次のように国内外の債券と株式をバランスよく25%(±6〜8%)で構成されている。
国内・債券:25% ±7%
国内・株式:25% ±8%
外国・債券:25% ±6%
外国・株式:25% ±7%
長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて、長期間維持していくほうが効率的で良い結果をもたらすからだ。
ポートフォリオは資産の上下動によって変化する。そのため、定期的にウエートが高くなった資産を売り、低くなった資産を買う“リバランス”をおこなっている。
たとえば、株が大きく上げ、債券が下がった場合、株を売り、債券を買う。その結果、常に高い資産は売り、安い資産を買うことになるので運用成績が安定するというわけだ。
GPIFに学ぶことでプロの投資方針を簡単に取り入れられる。GPIFはウェブサイトで運用の基本方針と運用資産の構成割合(ポートフォリオ)を公開しているので、参考にしてみてはいかがだろうか。
文/編集・dメニューマネー編集部