自民党総裁選で、石破茂元防衛相が9月27日(金)、第28代自民党総裁に選ばれ、その後の金融市場は円高、株安というネガティブな反応を示した。翌30日の日経平均株価も大幅に下落している。石破新総裁誕生に市場がこのような反応をしたことについて、エコノミストなどの見方を紹介する。
株式市場にとって石破氏がネガティブな理由
新総裁が誕生した9月27日、為替市場は対ドルで4円の円高、翌30日の日経平均株価も大幅に下落した。同日の終値は3万7919円55銭と、下落幅は過去5番目の大きさだった。金融課税強化や日銀の追加利上げを容認する発言など、金融市場に対する引き締めを警戒しての動きだろう。
石破氏は、経済対策が必要とすることは認めながらも、財政再建や金融課税強化、日銀追加利上げ容認などのスタンスを示しており、これに市場が失望したかたちだ。
というのも、総裁選の第1回投票では対立候補の高市早苗経済安全保障相がトップだったが、この間、円安が146円まで進み、日経平均900円高となっていた。
それだけに、決選投票での石破氏の逆転勝利は反動が大きくなった。
識者の見方──最初はネガティブ、政策が明らかになるにつれて巻き戻し
エコノミストなど識者の見方としては、最初はネガティブな反応を示すが、人事・政策次第で落ち着くとの見方が主流だ。
基本的にはアベノミクス継続、総選挙での自民党の勝利確率は上がり、人事で高市氏や小泉進次郎元環境相らをうまく配置できれば結束も高まるとしている。
主なエコノミストのコメントをロイターが紹介しているので、見てみよう。
第一生命経済研究所 主席エコノミスト熊野英生氏「金融所得課税の強化への賛意がマイナス」
「候補者の中で、ただ1 人だけ金融所得課税の強化にも賛意を示していた。これは株式市場にとってマイナスだが、石破氏は富裕層などから負担を求めることには必ずしも消極的ではないスタンスなのだろう。
SMBC日興証券 金融財政アナリスト 末澤豪謙氏「追加利上げ観測が再度浮上」
石破氏の場合は公約で「金融政策は日銀の独立性を尊重し、経済を冷やさない速度での正常化を期待」するとしており、マーケットでは追加利上げ観測が再度浮上し、短期的にはここまでのトレードの巻き戻しが起きやすい。
三井住友トラスト・アセットマネジメント チーフストラテジスト 上野裕之氏「いったん慎重ムードに支配される」
東京株式市場はいったん慎重ムードに支配されることが見込まれるが、その後は石破氏次第とみている。
自民党総裁選後の株価は上昇しやすいが、米大統領選挙の動きにも注意
自民党総裁選は1956年以降、28回あり、総裁選から1ヵ月後までの日経平均は約6割の確率で上昇しているようだ。総裁の決定で不透明感がなくなることや、新しい政権への期待感が膨らむからだろう。今回も当初はショックとなったが、石破首相の政策が見えてくれば、相場は落ち着くのだろう。
政治の行く末で気になるのは日本だけではなく、アメリカも同じで、米大統領選もあと1ヵ月に迫ってきた。
大統領選も選挙までは不透明で株式市場が下げることも多いが、選挙後は不透明感がなくなり、新大統領を祝福するムードで株式市場は上げることが多いという。
投資を考える上で、こうした政治の動きはしっかりとおさえておきたい。
文/編集・dメニューマネー編集部