資産運用を始める新入社員の最初にして最大の壁。それが「どの制度にいくら積み立てる?」という悩みです。その疑問に対して、ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメント編集部ではためるとふやすを両方かなえる「最強ペア」を提案してきました。
<ためる・ふやすを両方かなえる最強ペア>

今回は最強ペアを使った運用方法(実践編)を解説(記事は全5回)。本稿では複数の制度を併用する「家計全体で考える運用」について詳しく説明します。
●前回記事:【資産運用は「年代に適した株式比率」を知れば迷わない! 20代・30代が持つべき株式の割合は…】
【若年層向け】とにかくふやす! ほぼ100%株式運用パターン
34歳までの若年層は、今後積み立てる掛金(将来掛金)がこれまで積み立てた資産(積立資産)よりも大きい期間。リスク許容度が高いことが強みなので、長期投資を前提に株式100%の運用を第一に検討します(個別株でなく投資信託を選択する)。時間が武器となるこの年代の方におすすめしたい運用方法は、利用できるほぼすべての制度で株式運用をするパターンです。
<若年層におすすめの運用パターン>

●ふやす
・従業員持株会→自動的に株式100%(個別株)の運用となる
・企業型確定拠出年金・iDeCo→原則60歳まで引き出せないため長期運用が大前提。ハイリターンを狙いやすいので、積極的に株式100%の運用を検討する(投資信託)
・NISA(つみたて投資枠)→基本は株式100%の運用を考える(投資信託)。ただし、性格的に大きな値動きに耐えられない人や近い将来に引き出し予定がある人は、この枠の一部で債券運用(投資信託)を検討する
●ためる
・財形一般、積立貯金→元本確保型の運用を行う
【中年層向け】守りと攻めを両立! 一定比率で債券を持つパターン
続いて、若年層が年代が上がるにつれて検討することになる「中年層のパターン」も確認しておきましょう。
64歳までの中年層はこれまで積み立てた資産が今後積み立てる掛金よりも大きくなる期間です。積立資産が増えた分ブレ額が大きくなり、リスクへの許容度が下がる点が特徴です。運用期間も後半となり、大きな暴落があった時にはマイナスを取り戻せるチャンスが少なくなります。この年代の方におすすめしたいのは、値動きへの備えるために債券を一定の割合で持つ方法です。
<中年層におすすめの運用パターン>

●ふやす
・従業員持株会→自動的に株式100%(個別株)の運用となる
・企業型確定拠出年金・iDeCo→原則60歳まで引き出せないため長期運用が大前提。そのためハイリターンを狙いやすく、積極的に株式100%の運用を検討する(投資信託)
・NISA(つみたて投資枠)→基本は株式100%の運用を考える(投資信託)
・NISA(成長投資枠)→この枠で徐々に債券比率(投資信託)を高めて値動きに備える。年齢や積立期間に応じて債券比率を高めることを考える。より債券の比率を高める場合はつみたて投資枠でも債券運用(投資信託)を検討する
●ためる
・財形一般、積立貯金→元本確保型の運用を行う
以上、若年層と中年層向けの家計全体で考える運用パターンをご紹介しました。
1つの制度内で資産配分を考えるのではなく「企業型確定拠出年金では投資信託を通じて株式を持つ」「NISAの成長投資枠で投資信託を通じて債券を持つ」など家計全体考えることで、商品選択をシンプルにできます。加えて、資産管理や商品の見直しがしやすく、万が一マーケットが下がった時にも影響を確認しやすいという利点もあります。
複数の制度を使い資産形成を行う際には、ぜひ本稿でご紹介した家計全体で考える運用方法を参考にしてみてください。
●「いまの自分の運用方法や資産配分って、このままで大丈夫?」と気になった時には、参考にできる情報源を知っておくと頼りになります。第4回【どの商品を何割持つ? 資産運用で配分に迷ったらまず確認したい「信頼できる情報源」】で詳説します。
ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメント編集部
「ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメント」は、事業会社の経営企画・人事部門向けの専門誌です。職場領域(職域)を通じた従業員への金融知識普及を目的とした、ファイナンシャル・ウェルビーイング・マネジメントに関する情報をお伝えします。人事部門で「福利厚生・報酬・企業年金」等の実務に携わる方々の声を元に、従業員エンゲージメントの向上につながる「実用性の高い記事」を作成、掲載。人的資本経営への高度化に資する情報を届けています。