新NISAでは累計で1800万円まで投資できます。年間の投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。双方を併用すれば最短5年で1800万円を投じることができます。SNSなどでは、しばしば「最短で枠を使い切ることが新NISAの秘訣」といった論調が見られます。
なぜ枠を早く使い切ることが成功につながるのでしょうか。また、枠を使い切らないと成功できないといわれるのでしょうか。簡単に説明します。
早く枠を使い切ると利益は大きくなる ただし「利回りがプラス」なら
新NISAの枠を最短で使い切るべきといった論調があるのは、利益が大きくなることが期待されるためだと考えられます。資金を早く投じることで運用期間が長くなり、より大きな利益を得られる可能性があります。
投資の利益は、利回りが同じなら運用期間に比例します。運用期間が長くなるほど、利益が積み上がっていくイメージです。
しかし時間は有限です。大きな利益を得たいからといって、運用期間を無限に延ばすことはできません。運用期間を長く取るためには、資金を早く投じることとなります。新NISAの枠を最短で使い切るべきといわれるのは、これが背景になっていると考えられます。
ただし、運用期間に比例して利益を増やすためには、利回りが常にプラスであることが条件です。利回りがマイナスなら、むしろ投資が早いほど損失が大きくなります。
とはいえ、投資家が資金を投じるのは、利益が得られると期待するためです。投資は利回りがプラスという前提で行われるでしょう。合理的な投資家なら、利益が期待できないものに資金を投じることはありません。できるだけ早く資金を投じるべきという論調は、利益を期待する投資家には支持されやすいと考えられます。
新NISAは枠を使い切らなくても意味がある
資金をできるだけ早く投じることには一定の合理性があります。ただし、必ずしも新NISAの枠を最短で使い切る必要はありません。
先述の通り、利回りがプラスなら利益は運用期間に比例して大きくなります。これは、新NISAの枠を使い切らなくても同様です。早く資金を投じれば運用期間が延び、利益が大きくなることが期待できます。
つまり、新NISAは投資枠を最短で使い切るばかりが成功の道ではありません。5年の投資額が1800万円未満でも、投資額に応じた利益が期待できます。未使用の投資枠が生じても、制度を活用する意味は十分にあるといえるでしょう。
そもそも、5年で1800万円の投資ができる人は少数派だと考えられます。新NISAは2024年6月末までの投資額が10兆円を超えていますが、1口座あたりの平均は42万円ほどです。
投資額は、自身の投資計画に基づいて決定しましょう。目標の金額や時期を設定し、そこから逆算して投資額を決定します。新NISAの投資枠を埋める目的で決める必要はありません。
新NISAは、年間投資額にかかわらず、誰でも累計1800万円まで投資できます。年に360万円を投じれば5年で使い切ることができますが、年100万円の投資で18年かけて使い切っても構いません。また、1800万円の投資枠を使い切る必要もありません。
制度に引っ張られず、身の丈に合った投資計画を立てるようおすすめします。