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ツウは知っている「豊田通商」株価5年で2倍に上昇&配当利回り3.7% 株式分割で新NISAでも買いやすく 将来担う「再エネ」に1兆円投資

2024/11/05 06:00

初の株式分割を実施 新NISAでは900株まで投資OK、予想配当金9万円 豊田通商は2024年5月、同社として初の株式分割を公表しました。実施は同年6月末、分割割合は1:3で実施されました。 豊田通商の株価は2023年から大きく上昇しています。5年騰落率は110%、つまり5年で2.1倍に値上がりした計算です(202

初の株式分割を実施 新NISAでは900株まで投資OK、予想配当金9万円

豊田通商は2024年5月、同社として初の株式分割を公表しました。実施は同年6月末、分割割合は1:3で実施されました。

豊田通商の株価は2023年から大きく上昇しています。5年騰落率は110%、つまり5年で2.1倍に値上がりした計算です(2024年10月31日終値)。今回の分割で株価は3分の1に調整されたことから、投資家のすそ野の拡大が期待されます。

【豊田通商の株価チャート(過去5年間)】

・株価:2643円(2024年10月31日終値

出所:Tradingview

分割で投資単位が低下したことから、豊田通商は新NISAでも投資しやすくなりました。足元の株価水準なら、成長投資枠で900株まで購入できます。

豊田通商は今期(2025年3月期)に1株あたり100円の配当金を予定しています。900株なら9万円の配当金を受け取れる計算です。新NISAを通じた配当狙いの資金も、ある程度は豊田通商に向かうことが予想されます。

【豊田通商の予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:100円
・予想配当利回り:3.78%

出所:豊田通商ホームページより著者作成

豊田通商への投資の前に、同社がどのような事業を展開しているのか、業績はどうなっているのか知っておきましょう。また豊田通商の成長可能性について、同社が重点的に取り組む再生可能エネルギーへの投資から探ってみましょう。

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トヨタの総合商社、グループの影響強め ビジネスは自動車以外も広く展開

豊田通商はトヨタグループの総合商社です。トヨタ自動車は豊田通商の議決権の約21.8%を所有しており、豊田通商はトヨタ自動車の持分法適用会社となっています。

業績においてもトヨタグループの影響は大きめです。豊田通商の売り上げに占めるトヨタグループの割合は単体で35.3%、連結では17.4%となっています(2024年3月期)。過半はグループ外から得ているとはいえ、業績はトヨタグループの動向に左右されることとなるでしょう。

取り扱う商材も自動車に関連するものが多くなっています。しかし自動車以外のビジネスも多く展開しています。鋼材や穀物などの売買ほか、空港の運営事業や発電事業なども手掛けています。総合商社らしく、事業ポートフォリオは多様です。

【セグメント純利益(2024年3月期)】
・金属:607億円
・グローバル部品・ロジスティクス:455億円
・モビリティ:559億円
・機械・エネルギー・プラントプロジェクト:279億円
・化学品・エレクトロニクス:550億円
・食料・生活産業:118億円
・アフリカ:691億円 

出所:豊田通商 決算短信

なお、豊田通商は今期(2025年3月期)にセグメント名称を変更しています。また新たに「サーキュラーエコノミー」セグメントを設け、従来の金属と化学品・エレクトロニクスから一部を振り替えています。

出所:豊田通商 決算説明会資料より著者作成

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3期連続で最高益、今期も増益を計画 セグメント別に業績を確認

次に豊田通商の業績を解説します。

直近10期を振り返ると、豊田通商は2022年3月期以降に大きく成長していることがわかります。純利益は2024年3月期まで3期連続で過去最高を更新しました。なお、2016年3月期の最終赤字は、資源価格の下落に伴う減損などが主因です。

出所:豊田通商 有価証券報告書より著者作成

2022年3月期に大きく成長したのは金属セグメントです。主に自動車の生産に関連する取り扱いが増加したこと、また市況が上昇したことなどから急拡大しました。

2024年3月期はアフリカセグメントの成長が顕著です。西アフリカ地域を中心に自動車販売会社の取扱台数が増加したことが主因です。純利益はセグメントの中で最大となりました。

出所:豊田通商 決算短信より著者作成

今期(2025年3月期)は中間決算まで公表しています。中間までの実績ではライフスタイル(旧・食料、生活産業)セグメントが最も大きく成長しています。

【豊田通商のセグメント純利益(2025年3月期 第2四半期)】
・メタル+(Plus): 234億円(+25.2%)
・サーキュラーエコノミー: 256億円(-22.1%)
・サプライチェーン: 239億円(+4.2%)
・モビリティ: 290億円(-2.8%)
・グリーンインフラ: 121億円(-5.2%)
・デジタルソリューション: 153億円(+9.8%)
・ライフスタイル: 89億円(+32.6%)
・アフリカ: 396億円(+7.1%)
※()は前年同期比 

出所:豊田通商 決算短信

全体の通期の業績予想は純利益のみ開示しています。前期より5.6%増益の3500億円を計画しており、第2四半期までの進捗率は51.8%です。消化はおおむね順調といえるでしょう。着地が予想どおりなら、4期連続の最高益となる見込みです。

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成長戦略は再生可能エネルギー 2030年までに1兆円を投資

豊田通商は次の成長戦略として再生可能エネルギーを掲げます。2021年に公表した「カーボンニュートラルロードマップ2030」の投資額を引き上げ、2030年までの10カ年で1兆円を再生可能エネルギーに投じます。

【豊田通商の脱炭素社会に関連する主な投資計画(2021年~2030年)】
・再エネ、エネマネ(※1):1兆円
・バッテリー:4500億円
・水素・代替燃料:2000億円
・資源循環・3R(※2):2500億円
・Economy of Life(※3):1000億円
※1.再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント
※2.リビルド、リユース、リサイクル
※3.ヘルスケアや食料等、人々の日々の生活に不可欠であり、快適で健やかな未来社会の実現に貢献するビジネス 

出所:豊田通商 「カーボンニュートラルロードマップ2030」の更新について

投資はM&Aを中心に行われています。2022年8月には風力発電で国内首位のユーラスエナジーHDを完全子会社化、2024年4月には太陽光発電で国内首位のテラスエナジー(旧・SBエナジー)を完全子会社化しました。これらの買収で、豊田通商グループの発電容量は、風力と太陽光のいずれも国内最大級となりました。

豊田通商は、ほかに水力発電やバイオマス発電の施設を保有します。発電所は国内外に存在しており、グループの総発電容量は2024年1月末で4.5ギガワットに上ります。これは原子力発電4基分に相当します。豊田通商は、2030年3月期までに10ギガワット以上へ引き上げる計画です。

豊田通商が買収したユーラスエナジーHDとテラスエナジーは、ユーラスエナジーHDを存続会社とし2025年4月に統合される予定です。豊田通商によると、統合によりバリューチェーンの強化と経営資源の最適化といったシナジーが期待できます。シナジーが発現すれば、豊田通商の再生可能エネルギー事業はさらに拡大しそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。