2024年12月20日に「令和7年度税制改正大綱」が公表されました。iDeCo(個人型確定拠出年金)についても改正案が記載されています。最終的に法案となって可決されないと成立しませんが、税制改正大綱に記載されている内容をもとに、今回の改正点をまとめてみました。
※2024年12月24日時点の情報をもとにまとめたものであり、実際の改正には確定拠出年金法の改正などが必要で、詳細は変わることもあります。
拠出限度額の引き上げ
企業型確定拠出年金と国民年金第2号被保険者(会社員・公務員)のiDeCoを合わせた拠出限度額が月額5万5000円から6万2000円に引き上げられました。これにより、DB(確定給付企業年金)など他制度掛金相当額、企業型DC(企業型確定拠出年金)の事業主掛金・加入者掛金、そしてiDeCoの掛金の合計が6万2000円以内であればよいことになります。
これまで全体の枠のほか、例えば、2024年12月現在、全体で5万5000円の枠があっても、企業年金ありの会社員・公務員のiDeCo掛金は最大月2万円まで、というようにiDeCo独自の上限も設けられていました。今回は全体の枠を7,000円引き上げ6万2000円にするだけでなく、”穴埋め型”とすることで、iDeCo独自の壁をなくし、残った枠を埋めていくかたちとなります。
そのため、多くの人はiDeCo掛金の上限額が増えますが、中でも、企業年金のない会社員は月額2万3000円から6万2000円へと大幅に上限額がアップします。公務員も、例えば国家公務員共済組合・地方公務員共済組合に加入する人は他制度掛金相当額が8,000円ですので、月額5万4000円が上限となります。
①自営業などの第1号被保険者
月額6万8000円→月7万5000円に引き上げ(国民年金基金との合計)
②企業年金のある会社員と公務員
月額5万5000円-(各月の企業型DCの事業主掛金+DB等の他制度掛金相当額)
*ただし2万円が上限
→月6万2000円-(各月の企業型DCの事業主掛金+DB等の他制度掛金相当額)
*2万円の上限なし
③企業年金のない会社員
月額2万3000円→月6万2000円に引き上げ
加入年齢の引き上げ
現状、iDeCoの加入年齢は「65歳未満」ですが、「70歳未満」に拡大されます。対象はiDeCoに加入していた人、またはiDeCoに企業年金の資産を移喚できる人で、老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受給していない場合に限られます。つまり、これまで加入していた人は延長ができる、ということです。
給付時の改正
今回の改正により、拠出限度額が増えることはメリットではあります。例えば、拠出時の掛金は全額「所得控除」の対象となるため、その年の所得税や住民税が軽減される効果があり、掛金をふやすとその効果は大きくなります。一方で、iDeCoは課税の繰り延べのため、受取時は課税が原則です。一時金で受け取る場合には退職所得控除、分割で受け取るときには公的年金等控除の対象になるということです。
今回の改正の注意点としては、iDeCoや企業型DCを老齢一時金として受け取った後の翌年から9年以内に、退職一時金・企業年金等の一時金を受け取った場合は、退職所得控除の計算において勤続(加入)期間の重複を除くものとされたことです。
現在は「4年以内」とされているため、例えば、60歳のときにiDeCoで運用してきた資産を老齢一時金として受取り、退職一時金やDBを65歳以降に受給することで、退職所得控除の枠を両方使うことができましたが、この手法は使えなくなります(10年以上の期間をあける必要があります)。もともと退職金がない・少ない、企業年金がないという会社員の方には影響はほとんどありませんが、退職金一時金が多い、複数の企業年金に加入しているなど、退職給付が手厚い会社員はNISAを優先する選択肢もあります。
竹川 美奈子 LIFE MAP合同会社代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト