選んだファンドが続けられなくなる? 運用会社の撤退という「盲点」
新NISAは制度自体は悪いものではない。ただ、1人1口座については改善の余地があるのではないか。最近は口座開設に際してマイナンバーカードの提示を求められるので、それを使えば複数金融機関でNISA口座を開設しても、名寄せは可能であろう。実現にはさまざまな課題があると考えられるが、今のNISA制度で唯一、改善してもらいたい点だと思っている。
また、2025年は運用会社の事業継続性がひとつのテーマになると見ている。
特にNISAのように、長期投資を前提にして利用する場合、運用会社の事業継続性には十分に配慮するべきだ。運用会社とは投資信託(ファンド)を作っている会社のことだ。
NISAで積み立てたり、運用したりしている途中で、自分が保有しているファンドの運用会社が事業から撤退してしまうと、運用の継続性が途切れてしまう。特に、長期投資を前提にしたNISAでは重要な問題となるだろう。
25年9月にPayPayアセットが業績悪化を理由に投信ビジネスから撤退する方針だが、同社よりもはるかに運用資産の少ない運用会社が複数社、存在しているだけに、この点には十分注意したい。
「トランプ・リスク」が気になる人のファンドの選び方
新NISA開始2年目となる25年は1月20日にトランプ氏の大統領就任式があり、それ以降の彼の言動が注目される。
関税率の大幅な引き上げ、不法移民の本国強制送還が行われればインフレ要因となり、株価にとっては一時的でもネガティブな影響がおよぶ恐れがある。
それを考慮すれば、一括で投資するよりも、定額積立もしくは自分の判断で複数回に分けて投資するなど、タイミング分散を前提にしてエントリーするのが無難であろう。
では新NISA2年目の運用については、S&P500に連動するインデックスファンドで十分だと思うが、25年に米国株で大きな調整が起こり、そこからのリカバリーを期待するなら、アクティブ型でしっかり銘柄選定を行っているファンドを選ぶのも一興だ。米国株でポートフォリオを組むなら、「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね」を組み合わせるのが良いだろう。
ただしアクティブファンドは、トラックレコードもさることながら、長期にわたってしっかり資金が入り続け、運用の継続性がある程度、見込まれるファンドでなければ買わない方が良い。設定されて間もない、あるいは設立されて間がない運用会社のアクティブファンドを買う場合は、購入資金を「お布施」と思って投じること。
鈴木 雅光氏 金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。