■「自動運転レベル4」イメージ
レベル4自動運転社会への適合……運転者がいない車両と事故を起こしてしまったらどうなる?
未来の自動車はどんなシステムになっているのでしょうか?
近未来を舞台にした映画などでは、ドライバーの操作をまったく必要としない自動運転の車両がたびたび登場します。現実に「レベル4」に相当する自動運転のクルマの社会実験が進んでいますが、社会はまだ快く受け入れているとは言い難い状況です。多くのドライバーはわからないことばかりで不安が先行しており、自動運転社会への適合が追い付いていません。
もしレベル4相当の自動運転のクルマと交通事故を起こしてしまったとき、その責任は誰が負うのでしょうか?
「レベル4」はドライバー不要? 自動運転のレベル設定を知っておく
「自動運転」というとどうしても未来のクルマをイメージしがちですが、実はすでにみなさんの身近なところで実現していることに気付いているでしょうか?
たとえば、2021年11月以降にフルモデルチェンジした国産の新車には、すべて「衝突被害軽減ブレーキ(AEB)」の装備が義務付けられており、これはレベル1の自動運転に該当します。ほかにも、日産のプロパイロット2.0やトヨタのToyota Safety Sense、スバルのアイサイトXなどはレベル2の自動運転にあたるシステムです。
国土交通省が策定している自動運転のレベル分けによると、レベル4は限定的な条件下における完全自動運転とされています。レベル2~4は同じような表現が続いているのでわかりにくいかもしれませんが、もうすぐ高速道路の入口から出口までのすべてを自動運転に任せられる日が来る……と説明すれば理解しやすいでしょう。
すでに2024年11月には新東名高速道路の駿河湾沼津SA~浜松SAの区間で大型トラックによる自動運転の実証実験がスタートしており、運輸業界を悩ませている人手不足の解消に効果が期待されています。
自動運転のクルマと事故を起こしたら誰が責任を負うのか?
レベル4~5の自動運転が普及すると、道路を「ドライバーが運転していないクルマ」が走行している光景が当たり前になります。夢のように便利なクルマ社会がもう目前に迫っているわけですが、やはり「ホントに安全なの?」という心配は尽きません。
クルマを運転するときは、基本的な進む・曲がる・止まるといった操作に加えて、道路の環境、周囲の交通の状況、法令や標識・標示など、さまざまな情報をドライバーが有機的に処理しています。まさか、こんなに難しい情報処理を自動でできるなんて……という不安を抱くのは当然です。
自動運転のクルマが事故を起こした場合の責任については、すでにレベル3までについては法令が整備されて「運転者が負う」と明示されています。自動車運転処罰法の条文を借りると「クルマを運転するうえで必要な注意を怠った」という理屈です。
レベル4以上の自動運転でもドライバー(搭乗者)が責任を負う?
ではレベル4~5はどうなるのでしょう? ドライバーは「運転」をしていないただの搭乗者の立場になるので、レベル3までの理屈は通用しないことになります。
現在の状況だと、まずレベル4を実現するのは高速道路におけるトラックなどの業務運行です。道路交通法第75条の12第1項によると「特定自動運行(レベル4相当=ドライバーがいない状態での自動運行)」が公安委員会の許可制となっています。
さらに、特定自動運行をおこなう際は、特定自動運行主任者や現場措置業務実施者も指定しなければなりません。ドライバーが存在していなくてもこれらの責任者が事故の責任を負うことになるので、自動運転のクルマと事故を起こしても誰も責任を取ってくれないという事態は避けられそうです。
国外の事例ですが、2023年10月にアメリカで完全無人タクシーが別のクルマによってはねられた歩行者を轢き、約6メートルにわたって下敷き状態で引きずった事故で、運行会社が多額の和解金を支払ったと報じられました。国内でも同様の事故が起きた場合は運行会社が責任を負うことになるでしょう。
自家用で自動運転のレベル4以上が実現したら社会はどうなる?
現行法では、レベル4以上の自動運転は運送会社や旅客会社といった事業者による運行を想定して整備されています。つまり、自家用でのレベル4以上の利用にはまだ適応していません。どうやら、自由に生きたい場所まで自動運転で移動するというのはもう少し先の話になるようです。
とはいえ、レベル4以上の自動運転が社会で受け入れられるまでには、確実に法律が整備されるでしょう。責任の所在があいまいなままで社会にリリースされるはずはありません。
また、すでに多くの保険会社は、自動運転を対象とした自動車保険を提供しています。損保ジャパンの「自動運転専用保険」やイーデザイン損保の「&e(アンディー)」などは、自動運転のシステム欠陥や不正アクセスなどによる事故でも被害者を救済するため早期に補償する商品です。
まだレベル4以上のクルマ社会の姿は未知数ですが、自動車メーカー・国・保険会社などが協力しあい、誰もが安心して自動運転を活用できるかたちになっていくでしょう。
レポート●鷹橋公宣