三菱アセット・ブレインズがまとめた2025年1月の公募ファンドの純資産残高は111兆5648億円で前月比1兆3378億円増加して史上最高を更新した。増加額は前月の3兆円超からは大きく減少した。資産別には「外国株式型」が約64兆919億円と前月から1兆8916億円増加した。前月は残高が2番目に大きかった「国内株式型」は約459億円残高が減少し12兆1466億円で第3位に後退。「複合資産型」が約639億円増加し約12兆2526億円で第2位に上がった。
資金流出入額は約2兆130億円で前月の約7420億円から大幅に増加し、過去最大の資金流入額を記録した。三菱アセット・ブレインズによると、1月6日からの初週の資金流入額が約1兆円と全体の半分を占めたという。同社は「新年を迎え、新NISAの当年分の成長投資枠が利用可能となったため、年初のなるべく早いタイミングで投資枠を利用したいと考える投資家が多かった」と推察している。その投資家の向かった資金の先は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に4050億円、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に3758億円と米国を中心とした株式インデックスファンドになり、米国株高に対する投資家の期待感の強さを感じる。
NISA制度のお手本とした英ISA制度においても、投資枠の利用開始月には大きな資金流入の波がやってくる傾向があるため、1月の動きは制度上の特徴ともいえるが、その流入増が前年同月(1兆1830億円)の約2倍の水準に拡大しているという熱の強さは警戒感に値するだろう。個人投資家が熱狂するほどに確信をもって動いた時は、相場の転換点になりやすい。史上最高の資金流入額になったという事実は意識しておきたい。
資産別にみると流入額の大きな資産クラスは「外国株式型」が約1兆8640億円と前月(約1兆550億円)から約8000億円増加し、流入額全体の9割を占めた。次に「複合資産型」の約1140億円(前月は約370億円)だった。資金流出は「外国債券」(約240億円)、「不動産投信型」(約190億円)などだった。

◆資金流入額ランキング・トップ10は全て「外国株式型」
際立って大きな資金流入となった「外国株式型」では、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」に続いて「iFreeNEXT FANG+インデックス」への資金流入(約1097億円)が目立った。「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信 Dコース(為替ヘッジなし、毎月決算、予想分配金提示型)」にも1054億円という大きな資金流入が続いているが、トップ3はインデックスファンドで固まった。
また、資金流入額の増加で目を引くのは、流入額ランキングで第9位になった「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」だ。1月の流入額は約343億円と直近3カ月の合計634億円の半分に相当する。アライアンス・バーンスタインの「米国成長株」、インベスコの「世界のベスト」に続く人気銘柄として「宇宙関連株」が定着するものか、今後の動向が注目される。
一方、資金流出額の上位には「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」(流出額は約104億円)、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(ヘッジなし)」(同104億円)、「グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド」(同98億円)などが並んだが、いずれも流出額の規模が小さかった。
◆パフォーマンス上位には「為替ヘッジあり」
個別ファンドの月間騰落率(ブル・ベア型、通貨選択型を除く)では、「外国株式型」の「ブラックロック・ゴールドメタルA(為替ヘッジ付き)」の12.88%がトップだった。次いで、「グローバル・フィンテック株式ファンド(ヘッジあり、年2回)」の10.60%、「グローバル・フィンテック株式ファンド(ヘッジあり、年1回)」の10.37%、「ブラックロック・ゴールドメタルB(為替ヘッジなし)」の10.17%。そして、「エマージング株式型」の「HSBCブラジルオープン」の10.15%が続いた。
「外国株式型」では「為替ヘッジあり」の方が高いパフォーマンスになった。1月のドル円は、年末の1ドル=156.23円が1月末には154.71円へとやや円高が進んだ。1月24日に日銀が0.5%への利上げを実施するなど日銀の政策は金融引き締めを志向し、反対に米FRBは金融緩和の方向にある。政策金利の変更については、そのタイミングや変更幅についてさまざまな可能性がある。ただ、日本が超低金利を維持してきた状態とは異なる金融環境となり、これまでのように円安方向に振れやすいということはなくなってきている。今後、期間によっては円高の局面も現れることに留意しておきたい。
◆「フィデリティ・グロース・オポチュニティ」が分配金利回りでトップ
分配金利回りのトップは前月に続いて「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド D」の34.98%だった。利回りの水準は前月の36.07%からやや低下した。第2位も前月同様に「JPMアメリカ成長株ファンド(ヘッジなし、毎月)予想分配金提示型」の31.39%だった。前月3位の「GS日本株・プラス(通貨分散コース)」は28.09%で第5位に後退した。前月第4位だった「フィデリティ・米国株式ファンド F」が29.13%で第3位に、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 D」が28.27%で第4位に上がった。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。