中国銀行の投信売れ筋ランキング(窓口販売)の2025年2月のトップは前月の第2位から「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」が浮上した。前月トップの「ROBOPROファンド」が第2位に後退し、第3位、第4位の「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(隔月決算・予想分配金提示型)」と「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Eコース隔月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は前月同様の順位だった。第5位に前月の第8位から「ちゅうぎん日経225インデックスファンド」がジャンプアップした。

(出所)公表データに基づき編集部作成
◆NISA成長投資枠でなくとも売れ筋トップの理由は?
中国銀行の売れ筋上位にはグローバル株式アクティブファンドが並ぶが、その多くはNISA成長投資枠の対象である「隔月決算型」のファンド群だ。第3位の「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(隔月決算・予想分配金提示型)」、第4位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Eコース隔月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」、また、第6位の「アライアンス・バーンスタイン・米国割安株投信(隔月決算・予想分配金提示型)」は、いずれも隔月で決算し、基準価額が一定水準以上であれば分配金を払い出すタイプだ。隔月決算とすることで、NISAの対象銘柄にすることができる。NISA対象となることで、毎回の分配金から約20%のキャピタルゲイン税が差し引かれないことの効果は大きい。中国銀行が本店を置く岡山県などの地方都市では、投資信託の購入者は高齢者が多いと考えられる。「資産形成」をめざす若年層に対して、高齢者層は「資産活用」(使いながら運用し、なるべく資産価値を減らさずに資産を長持ちさせる)を重視しているだろう。その際に毎月や隔月など多頻度の決算で分配金が払い出されることは魅力的だ。
実際に、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Eコース隔月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の2025年2月まで1年間の分配金合計額は1万口当たり1700円で、2月末の基準価額11224円で計算した分配金利回りは約15%になる。成長投資枠の年間限度額240万円を購入していた場合の年間の分配金額は36万円で、毎月3万円を生活費に上乗せできる計算だ。同様に「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(隔月決算・予想分配金提示型)」は、1月時点で1年間の分配金合計額が1700円。2月末時点の基準価額11983円で計算すると分配金利回りは約14%だ。「アライアンス・バーンスタイン・米国割安株投信(隔月決算・予想分配金提示型)」は1月時点で年間分配金額が1300円。2月末時点の基準価額11345円で計算すると分配金利回りが11%になる。
売れ筋トップの「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」は、2020年から毎月150円の分配金が継続し、年間1800円の分配金が出ている。2月末時点の基準価額8996円で計算すると、分配金利回りは20%になる。毎月分配のファンドはNISA対象外となるため、実際には分配金には20%が課税され実質的な分配金利回りは16%だ。しかし、同ファンドに投資している投資家にとっては、安定した分配金が継続していることのメリットが大きいだろう。同ファンドでは、銘柄を選定する際に「成長」「配当」「割安」という3つの観点で厳選している。銘柄選定の条件に「配当」と「割安」という観点が入っていることは、米国の景気の先行きに懸念がもたれるようになり、米国株が下落している現在の環境にあっては心強い。過去の運用成果でも下落時にインデックスよりも下落率が抑えられているという特徴がある。
◆AIは運用にも生かせるか?
売れ筋ランキングで前月トップとなり、2月も第2位と高い位置をキープする「ROBOPROファンド」は、AI(人工知能)の予測に基づいて毎月資産配分比率を大胆に見直しながら運用するファンドだ。投資資産は「米国株式」「先進国株式」「新興国株式」「米国債券」「ハイイールド債券」「新興国債券」「不動産」「金」の8資産だ。それぞれの資産の代表的なETFを投資対象としている。3月12日に実施されたリバランスでは、「米国株式」を2月の3.5%から21.2%に大きく引き上げ、「新興国株式」を40.6%から29.6%に、「ハイイールド債券」を25.9%から16.1%に、「金」を30.1%から26.2%に引き下げた。また、2月時点では保有していなかった「不動産」を6.9%の比率で保有した。米国株価が下落し、新興国の株価がやや上昇したため、割安感の出た米国株に資金をシフトしたと考えられる。「金」に資産の30%程度を振り向けていることも含めてメリハリの利いた運用をしている。
2月末時点での過去1年間のパフォーマンスは20.03%となり、これは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の16.10%を上回っている。「S&P500」は2月半ばから大きく値を下げており、「ROBOPROファンド」が価格を保っているためにパフォーマンスの逆転が起きた。今後も米国株式市場が不安定な値動きを続けるようであれば、世界のさまざまな資産に収益機会を求めている「ROBOPROファンド」への期待が高まるかもしれない。
同ファンドが参照しているAIモデルは、先行性の高い40種類以上のマーケットデータを使い、約1000種の特徴量を組み合わせて多角的に解析している。そして、導き出した予測結果については機械学習によって継続的に改善していくという作業を続けている。予測の精度は年月を重ねるほどに向上が期待される。同ファンドの運用期間は、2023年12月28日の設定から1年余りしかないが、同ファンドと同じAI予測エンジンを使うフォリオ社の「ROBOPRO」サービスは2020年1月15日から約5年の実績がある。それによると、2025年2月末時点までで「TOPIX(東証株価指数)」が54.93%の上昇率だったことに対し、「ROBOPRO」は105.57%という成績を残している。「S&P500」は5年で186%という成績だったため、それと比較すると物足りないかもしれないが、世界の資産に幅広く分散投資している運用姿勢は、中長期の運用を任せる1つの選択肢にはなり得るファンドといえそうだ。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。