年金・iDeCo・保険を見直したい

失業給付を受けると年金が止まる⁉ 老後の生活のために再就職を目指す65歳男性が耳にした気になる“噂”、その真相は…

2025/03/28 18:00

「雇用保険の給付と年金は同時に受けられない」という話を耳にすることもあるでしょう。年金を受けられる人が退職後に再就職を考えている場合は気になるところですが、どこまで本当なのでしょうか。 65歳を過ぎても働きたい恵一さん 恵一さん(仮名、65歳)は、妻の綾子さん(仮名、61歳)と暮らしていました。64歳から65歳まで

「雇用保険の給付と年金は同時に受けられない」という話を耳にすることもあるでしょう。年金を受けられる人が退職後に再就職を考えている場合は気になるところですが、どこまで本当なのでしょうか。

65歳を過ぎても働きたい恵一さん

恵一さん(仮名、65歳)は、妻の綾子さん(仮名、61歳)と暮らしていました。64歳から65歳までは特別支給の老齢厚生年金(特老厚)が受けられ、65歳になってから老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取るようになっています。大学を卒業して以来、長く会社員を続けていたため、平日は仕事をするのが当たり前の人生。65歳を過ぎてから給与が大幅に下がりましたが、勤務を続けています。

しかし、今の会社との雇用契約はまもなく66歳になると満了することになり、その時点で退職することが決まっています。恵一さんは「65歳以降は、65歳前と比べると年金が多く受け取れるようになるけど、年金収入だけでは十分ではないな。それに仕事を辞めると何もやることがなくて暇を持て余すのは目に見えている。働く体力のあるうちは働いて稼ぎたい」と再就職の意欲を見せています。

そんな中、恵一さんは退職後に失業給付を受けられることを知ります。「雇用保険料が今まで毎月のように給料から引かれていた。幸い今まで失業なんてしたことなかったけど、退職後仕事を探しても見つからない場合は失業給付が受け取れるのか。それはいい制度だな」と興味を持つようになっていたところです。

失業給付と年金は調整されるとの情報が…

しかし、失業給付について気になるのは、失業給付と年金との調整のこと。失業給付を受けることになったら、年金は受け取れなくなると聞きました。1年前、同級生の友人が退職後に失業給付を受けたら、その間年金が受けられなくなったと言っていたことも思い出します。恵一さんは年金と失業給付の両方を受け取れない場合はその分収入の見通しが変わってくるだろうと考えます。

少しでも収入があるほうが家計的に助かるはずなので、本当に年金が止まるか気になった恵一さんは年金事務所へ足を運んで確認することにしました。

恵一さんは、窓口で早速、「失業給付と年金は一緒に受けられないのか」と職員に質問します。これに対し、職員は「それでしたら心配はないですよ」との回答をします。恵一さんは「あぁ、そうなのか。なら良かった」と安堵します。

そして、職員は続けて「雇用保険制度や失業給付の金額など詳しいことについては、ハローワークでお聞きいただければ」と前置きしたうえで、失業給付の概要と年金との調整について説明し始めました。

●恵一さんが求職活動に前向きになれた理由とは? 後編【「これなら頑張れる」退職後の求職活動には不安もあったが…65歳男性が“お金の悩み”を解消して新たな一歩を踏み出せたワケ】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。