計算方法・給付率・給付日数・申請方法を確認

3月で退職し、4月からはゆっくり過ごしたり違う職場で働いたりする人もいるでしょう。「再就職を目指す」「またよい条件の会社に巡り会えたら働く」など、働き方は人それぞれです。
なかにはすでに次のステップを目指そうと動き始めている人もいるのではないでしょうか。
会社員が退職し次の就職までに期間が空く場合、失業保険(失業手当)が受け取れます。もし60歳で退職し、新しい職場で働こうとする際、失業保険は受け取れるのでしょうか。この記事では、失業保険の概要や受給金額などを解説します。
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失業保険(失業手当)とは
失業保険とは、離職・失業時に受け取れる給付金のことで、失業手当、失業給付ともよばれます。正式名称は「基本手当」であり、雇用保険の給付のひとつです。
基本手当とは、雇用保険の被保険者が定年や倒産といった理由で離職や失業した際に、失業中の生活費を補償するものです。離職後の再就職を支援するために支給されています。
受給要件
基本手当を受給するための要件は、以下のとおりです。

- 離職の日より前の2年間に12ヵ月以上被保険者期間(※)があること。
- 倒産・解雇等による離職の場合や期間の定めのある労働契約が更新されなかったり離職理由がやむを得なかったりする場合は、離職の日より前の1年間に6ヵ月以上被保険者期間があること。
※被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1ヵ月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1ヵ月と計算します。なお、令和2年8月1日以降に離職した者について、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヵ月ない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月を1ヵ月として計算します。
離職前2年間で12ヵ月以上被保険者期間があれば、受給できます。
倒産や解雇により離職した人は「特定受給資格者」、有期雇用契約が更新されなかったりやむを得ない事情で離職したりした人は「特定理由離職者」に該当します。この場合は、離職前1年間で6ヵ月間の被保険者期間があれば受給可能です。
計算方法・給付率・給付日数
基本手当は、1日ごとに金額が決められ、一定期間支給が続きます。基本手当日額の計算方法は、以下のとおりです。

- 基本手当日額=賃金日額×給付率(50%〜80%)
※賃金日額=離職以前6ヵ月の合計賃金÷180
※賃金日額に掛ける割合は賃金額によって決まり、離職時の年齢が29歳以下の場合の給付率を採用する。
給付率は50%〜80%で、年齢ごとに賃金日額で決められています。ただし、60〜64歳で離職した場合の給付率は、45%〜80%です。

そして、手当の給付日数は離職理由によって異なります。

- 定年、契約期間満了や自己都合退職:90日〜150日
- 特定受給資格者、一部の特定理由離職者:90日〜330日
- 障がい者等の就職困難者:150日〜360日
最長でほぼ1年の受給が可能です。
給付の申請
手当の支給を受けるには、ハローワークで離職票を提出し、求職申し込みをします。求職申し込み後7日間の待期期間を経過したのちに、支給が始まります。
ただし、自己都合や懲戒免職での離職は、7日間の待期期間に加えて、そこから2ヵ月〜3ヵ月の給付制限の経過を待たなければなりません。

受給期間は離職日翌日から1年間です。受給期間を過ぎると、たとえ給付日数が残っていても手当は受けられません。
再就職した場合は「再就職手当」が受け取れる
基本手当の受給期間中に再就職した場合は、基本手当の代わりに再就職手当が受け取れます。再就職手当の受給額は、以下のとおりです。
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上:所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額
次章では、60歳で退職した場合の基本手当金額を計算します。
60歳で退職したら失業保険はいくらもらえる?
60歳で会社を退職した場合、基本手当(失業保険)はいくら受け取れるのでしょうか。実際に試算してみましょう。
この記事では、以下の条件で試算します。
- 離職前6ヵ月間の給与総額は270万円
- 離職理由は「定年」
- 雇用保険の被保険者期間は20年以上
はじめに、基本手当日額を計算するための賃金日額と給付率を確かめます。賃金日額は離職前6ヵ月間の賃金を180で割った金額です。よって、賃金日額は以下のとおりです。
- 270万円÷180=1万5000円
離職年齢が60歳で賃金日額が1万5000円の場合、給付率は45%となります。よって、基本手当日額は以下のとおりです。
- 1万5000円×45%=6750円
1日あたり6750円の基本手当を受け取れます。
離職理由が定年の場合、被保険者期間によって給付日数が変わります。今回の試算条件は被保険者期間が20年以上となっているため、手当の給付日数は150日です。よって、手当の合計受給金額は以下のとおりです。
- 6750円×150日=101万2500円
合計で101万2500円が受け取れます。
なお、基本手当の受給途中に再就職が決まった場合は、再就職手当が受給可能です。
給付日数が150日の場合、支給残日数が100日以上ある場合は基本手当の7割が、給付日数が50日以上100日未満の場合は基本手当の6割が残日数の分だけ支給されます。
次章では、基本手当(失業保険)を受給する際の注意点を解説します。
失業保険を受け取る際の注意点
基本手当(失業保険)を受け取る際の主な注意点は、以下の2つです。
- ハローワークに定期的に出向く必要がある
- 65歳になるまで年金との併給はできない
事前に確かめたうえで、受給手続きを進めましょう。
ハローワークに定期的に出向く必要がある
基本手当を受給するには、原則4週間に1回ハローワークで失業認定を受けなければなりません。失業認定を受けないと、それまで手当を受け取っていたとしても支給されなくなってしまいます。
認定日は、自身や家族の病気やケガ、再就職に向けた採用面接など、やむを得ない事情がある場合にのみ変更が認められます。変更の際は、次回の認定日前日までに、ハローワークから指定された書類を提出しましょう。
年金との併給はできない
基本手当は年金との併給ができません。もし65歳になるまでに年金を繰上げ受給していたり、特別支給の老齢厚生年金を受け取っていたりする場合は、年金が全額停止されます。
年金が停止される期間は、ハローワークで求職の申し込みを行った月の翌月から、給付期間が終了した月までです。年金の受給が再開するのは、受給期間の経過から3ヵ月ほどかかります。
なお、65歳以降に基本手当の代わりとして受け取れる「高年齢求職者給付金」は、年金との併給が可能です。
まとめ
基本手当(失業保険)は、中途退職だけでなく定年退職でも受給できます。
退職後に再就職を目指す人もゆっくり過ごそうと考えている人も、退職してからはすぐに基本手当の受給手続きを済ませておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「離職されたみなさまへ」
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和6年8月1日から~」
- ハローワーク新宿「失業保険のQ&A」
- 日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」
- ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」
(2025年4月3日公開記事)