野村證券の投信売れ筋ランキングの2025年3月は、トップに前月第2位から「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」が上がった。第2位には前月の第3位から「eMAXIS S&P500インデックス」が繰り上がり、前月トップだった「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」が第3位に落ちた。前月は第6位だった「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」が第4位に浮上した。前月第7位にまで順位を上げた「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」は第10位に下がった。

◆評価を落とした国内インデックスファンド
「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」が売れ筋ランキングのトップから第3位に落ちた。前月第5位だった「eMAXIS 日経225インデックス」も第7位に落ち、国内株インデックスファンドの人気が離れている。年初からの日経平均株価(日経225)の動きは、1月に前月末比0.81%安、2月は同6.11%安、そして、3月は同4.14%安で、2024年12月末比で10.72%安と3カ月間で2ケタマイナスの成績になった。これは2月、3月と続落し、3月末には2024年12月末比4.59%安になった米「S&P500」よりも大きな下落率になっている。
まして、3月はトランプ大統領の関税策が注目され、米国が輸入するすべての自動車に25%の関税を課すと発表されるなど、日本の基幹産業の1つである自動車業界に大きなマイナス材料が飛び出したこともあって日本株の先行きへの不安が大きくなったと考えられる。その不安は、4月2日に発表された「(米国)解放の日」の相互関税で、日本に24%という高い関税率が課されたことで現実化し、4月2日の発表以来、日経平均株価は3日続落し、この3日間に4589円、12.85%の急落となった。年初から3カ月で下げた以上の下げ幅をわずか3日間で超えてしまった。2024年7月の史上最高値からの下落率は26.26%に達した。
このような弱い国内株式の動きと比較すると、米「S&P500」は2月の下落率が1.42%、3月が5.75%の下落率で、3月末時点で2024年12月末からの下落率は4.59%にとどまっていた。トランプ大統領の大規模な関税策は米国経済にも打撃を与えると考えられ、「S&P500」は4月7日には4月3日以来3営業日連続安となり一時2月の高値から21.31%下落して「弱気相場」入りの水準となったが、終値では最高値から17.6%安の水準となった。
日米ともに株安になっているが、日本株と比較すると米国株に底堅さが感じられる。日本株インデックスのランクが下がる一方で、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」や「eMAXIS S&P500インデックス」、「フィデリティ・米国株式ファンド」など米国株を主体とするファンドが売れ筋ランキングで上昇したのは、株価が一時的に下がっても米国株式には回復期待が強いということだろう。
◆人気復活の「世界半導体株投資」
「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」が第4位に浮上した。同ファンドは2024年3月と6月に売れ筋のトップに立ち、2024年の夏までは売れ筋の上位をキープする人気ファンドだった。2022年11月30日に公開された対話型AI「Chat(チャット)GPT」をきっかけに生成AIブームとなり、生成AIに最適化された半導体の製造者としてエヌビディアが脚光を浴びるとともに、AIの浸透に伴う膨大な半導体需要が想起され、半導体産業の長期成長ストーリーが共有されるようになった。それが半導体関連株式を押し上げる力になり、「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」の基準価額は2022年12月末に5万7120円だったものが、2024年6月には19万1500円へと、わずか1年半で3.3倍に上昇した。
ただ、半導体関連株は、2024年半ばからはあまりの期待の大きさに株価が割高な水準になってしまい、増収増益の決算を発表しても市場が期待する業績の水準に達しなければ株価が下落するということになってきた。そして、2025年3月末時点の1年トータルリターンはマイナス2.84%とマイナス圏に落ち込んでしまった。過去5年の年率トータルリターンは39.47%と非常に高くなっているものの、2024年半ば以降の停滞が過去1年のパフォーマンスを押し下げている。
パフォーマンスが劣化するなかで売れ筋ランクが上がってきているのは、半導体産業の将来に対する期待の大きさの表れだといえる。足元の株価はさえないものの、将来の成長に期待して購入を考える投資家が少なくないということだ。4月には「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」の基準価額も一段と下落する展開になっているが、3月に上がったランクを4月も維持できるかどうか注目したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。