「投資を勧めた政府に怒り」「投資は悪」etc.株価急落後のSNS“トンデモ”投稿を見て心がザワつく人に「今伝えたいこと」

2025/04/21 11:00

株価急落→SNSに“トンデモ言説”が続出、もはや風物詩 「マジで終わりました」 「(NISAなどで)投資を勧めた政府には怒り」 「NISAで買った銘柄を全部損切り」 「投資は悪」 トランプ米大統領の関税政策によって、4月に入ってからのマーケットは、株価も為替相場も乱高下を繰り返しています。米国現地時間の2日に、「相

株価急落→SNSに“トンデモ言説”が続出、もはや風物詩

「マジで終わりました」
「(NISAなどで)投資を勧めた政府には怒り」
NISAで買った銘柄を全部損切り
「投資は悪」

トランプ米大統領の関税政策によって、4月に入ってからのマーケットは、株価も為替相場も乱高下を繰り返しています。米国現地時間の2日に、「相互関税」が発表されたことを受けた3日の日経平均終値は、前日比990円安、4日は955円安というように、2日合わせて1945円の下落。とはいえ、ここまでは多くの市場参加者も、何とか持ちこたえられたようですが、週明け月曜日、7日の株式市場で、日経平均株価は前週末比2644円の大幅安となりました。

この急落を見て、昨年8月5日の急落を想起した人も少なくなかったでしょう。この時も週明け月曜日で、前週末比4451円安の大幅安でした。

NISAの制度見直しが行われた2024年1月から投資を始めた人にとって今回の急落は、はしごを外されたような感があるのかも知れません。

2024年1月の日経平均株価は3万3193円からスタートし、同年7月11日には4万2426円の最高値を更新しました。この間、恐らく多くの人が、「ああ、株式投資をしておいて良かった」と思ったことでしょう。

そしてその直後、8月5日に前述した株価急落があったものの、すぐにリバウンドし、2024年12月末の日経平均株価は、3万9894円まで回復したので、ひと安心された方は少なくなかったはずです。

ところが、今年に入ってから株価は下落の一途をたどり、4月7日の急落となりました。この日の最安値が3万792円でしたから2024年1月からNISA口座で日本株に投資していた人たちの大半は、含み損を抱えています。

もちろん損失を被っているのは、日本株に投資している人たちだけではありません。インデックスファンドを通じて、S&P500やオール・カントリーといった海外の株価指数に投資した人たちもまた、それなりに含み損を抱えていることでしょう。

特に海外市場に投資する場合、為替相場も影響してきます。昨年7月3日には1米ドル=161円、今年1月10日には1米ドル=158円という水準があったので、4月17日時点の1米ドル=141円台で為替差損を被っている人もいるはずです。

投資を続けていると、このような株価の急落には必ず直面します。そこで大事なのは、急落に直面した時、SNSとはやや距離を置くことです。

冒頭で取り上げたような、ネガティブな投稿を見て不安に駆られても、何のプラスにもなりません。そもそも書いている本人が、本当に悲惨な状況になっているのかどうかさえ、怪しいものです。自分の口座の中身をさらして、どれだけ損失を被ったのかを示したうえで書き込むなら、まだ多少なりとも信ぴょう性が出るかもしれませんが、それを一切せずに、「マジで終わった」、「損切りした」などと言われても、ソースとしてさほど信用できません。相手にするだけ時間の無駄というものでしょう。

特に「NISAで買った銘柄を全部損切り」と投稿している人もいましたが、そもそもNISAは長期で投資し続けて成果を得るための制度です。たまたま今回の急落に直面したからといって損切りするのは、NISAの本来の使い方を間違えていると言わざるを得ないでしょう。損失を被ることへの耐性を持ち合わせていない人は、“投資をするのには早い”のかもしれません。

また、「NISAで買った銘柄を全部損切り」という投稿を目にして、「私もそうしよう」などと、ほんの少しでも思った人も、同様かもしれません。投資判断はSNSの投稿に盲従するようなものではなく、あくまでも自分で考えて下すものだからです。

「政府が投資を勧めた」も怒りの矛先がズレている…

「投資を勧めた政府には怒り」という人も、「何だかな……」という感じです。「投資を勧めた政府」とおっしゃいますが、政府職員が“どぶ板営業”を行って、国民一人ひとりに投資を勧めて回ったわけではありません。

確かに、NISAや確定拠出年金のような、投資することで税制メリットを享受できる制度を作ったのは政府ですが、投資することを強制はしていません。最終的に投資することを選んだのは、その人自身であるわけですから、政府に怒りを覚えるのは“逆恨み”というものでしょう。

また、「投資は悪」とおっしゃるなら、資本主義体制の国で暮らしている、ということを思い出していただいたほうがいいでしょう。

日本で生活する以上、投資と無縁ではいられません。上場企業に勤務しているのであればなおのことです。上場企業は株式を介して事業資金を調達し、成長していきます。上場企業で働き、給料を得られているのは、その企業の株式に投資してくれている投資家がいるからです。

また、皆さんの老後生活を支えてくれる年金も、積立金の一部は株式で運用されています。現役世代が納めた年金保険料のうち、年金受給者への年金支払いなどに充てられなかったお金は、年金積立金として運用されています。それを運用しているのが「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」ですが、そのポートフォリオの50%前後は、国内外の株式で運用されていますし、日本の大学も自主財源を確保するため、株式などで寄付金運用を行っています。

このように資本主義である以上、私たちの生活はどこかで株式などの投資と紐(ひも)づいていいます。それを「悪」というならば、日本経済も私たちの生活も成り立ちません。

もちろん良い投稿も…「投資系」の投稿を見る際は“自分のフィルタリング”を持とう

もちろん、すべてのSNS投稿が悪だと言うつもりはありません。なかには、今回のような急落に直面した時に取るべき行動を冷静に呼びかける投稿もあります。誰が発信しているのか、その人のバックボーン、これまでの実績はどうだったのか、などを把握したうえで、信用できると思った人の投稿は大いに参考にするべきでしょう。

ただ、損をした人の「もうダメだ」、「家族のお金まで溶かしてしまった」、「投資なんてやるもんじゃない」などといった愚痴に付き合う必要はありません。そのような投稿をたくさん読んだところで、自分の投資収益には全くプラスにならないからです。

SNSには、ありとあらゆる人の投稿が、ほぼ何のフィルターも通さないまま流れています。

そこからいかに不要なものを捨て、自分にとってプラスになるものだけを抽出するか。そういう仕分けをしっかりできないと、冒頭のような“どうでもよい”投稿に翻弄(ほんろう)されて、間違った判断を下してしまいがちなのです。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。