『あんぱん』のぶは嵩の恋心にいつ気づくのか? 登美子がいる柳井家は相変わらず険悪

2025/04/21 12:00

『あんぱん』写真提供=NHK 女学校を卒業すると結婚するのが当たり前の時代に、学校の先生になるという夢に向かって走り出したのぶ(今田美桜)。その姿に感銘を受けた千尋(中沢元紀)は社会的弱者を救うため、法律家になると家族に宣言する。一方、まだ将来を決めかねている嵩(北村匠海)は、登美子(松嶋菜々子)に柳井医院の後継ぎとし
『あんぱん』写真提供=NHK

 女学校を卒業すると結婚するのが当たり前の時代に、学校の先生になるという夢に向かって走り出したのぶ(今田美桜)。その姿に感銘を受けた千尋(中沢元紀)は社会的弱者を救うため、法律家になると家族に宣言する。一方、まだ将来を決めかねている嵩(北村匠海)は、登美子(松嶋菜々子)に柳井医院の後継ぎとして勝手に推薦されてしまうのだった。

 そんな彼らの関係が本格的に複雑化していく中、『あんぱん』(NHK総合)第16話では、のぶに新たな婚約者候補が浮上する。

 学校の先生になるため、女子師範学校への入学を目指すのぶだが、成績が芳しくない。通知表の評価も合格レベルには到底達しておらず、それを見かねた羽多子(江口のりこ)の提案でのぶは夏休みの間、嵩に勉強を教わることになった。

 自分のために登美子に怒ってくれたのぶに対し、「のぶちゃんは母親に捨てられたことないだろ」と突き放してしまった嵩。しかし、2人の関係がギクシャクするようなことはなく、のぶはいつもの調子で嵩に接する。

 なおかつ、嵩はかっこつけてのぶの家庭教師を受けたものの、成績が良かったのは小学校時代までで、今は千代子(戸田菜穂)にたしなめられるレベルだった。特に数学はさっぱりで、のぶの質問に全く答えられない。それでも怒らず、2人で成績を上げる方法を考えるのぶ。後ろを振り返らない、さっぱりとした性格が彼女の魅力だ。

 結局は3学年も下の千尋がのぶに勉強を教えることに。亡き父・結太郎(加瀬亮)が遺した「夢が見つかったら、思いっきり突っ走ればええ。のぶは足が速いき、いつでも間に合う」という言葉を胸にひたすら夢に向かって突き進むのぶと、そんな彼女を支えるだけの力を持った千尋。

 作品が作品なら、今すぐにでも恋が始まってしまいそうなお似合いの2人に、嵩は再びジェラシーを覚える。さらにはその夜、嵩は寛(竹野内豊)が千尋に「嵩のために医者になるがをやめがやないか? 嵩が後継ぎになれば、あいつがこの家で長男として大事にされる、そう思うたがやないか?」と尋ねるのを聞いてしまうのだ。

 幼い頃は体が弱くて大人しい千尋を嵩が守っていた。だが、千尋は文武両道の青年に成長し、周囲から将来を期待されている上にのぶの役にも立っている。ただでさえ、兄としてコンプレックスを感じているのに、弟に気を遣われていることが分かった嵩の心情は容易に想像できる。なおかつ、登美子からは過剰な期待をかけられている嵩。登美子は千尋の育ての母である千代子への対抗心もあるのだろう。そのせいで家の空気も険悪で、嵩はかなり辛い立場だ。

 一方、のぶは釜次(吉田鋼太郎)から豪(細田佳央太)と結婚し、朝田石材店を継ぐことを提案される。すぐに豪がのぶに恥をかかせない言葉で丁重に断り、その場を収めるが、気になるのは蘭子(河合優実)のリアクション。パン食い競争でのシーンと同様、河合が視線の動きや表情だけで明言されていない蘭子の豪に対する恋心を伝えている。羽多子はどうやらその気持ちに気づいているようだが、豪の感情は現時点では読みきれない。ただ、蘭子も含めて姉妹のことを大事に思っているのは確かだろう。無骨だが、真面目で温かな心根が伝わってくる細田の好演も随所に光っている。

 一方通行の矢印ばかりが行き交う若者たちの恋模様。それをこんなにも実力のある若手俳優たちの演技で観られるというのは、なんと贅沢な時間だろう。彼らが体現する甘酸っぱい青春に朝から胸がときめく。だが、肝心のヒロインであるのぶからは全く恋の色が見えない。嵩といずれ夫婦になることは決まっているが、2人の距離が縮まるのはまだまだ先のように思える。
(文=苫とり子)