「トランプショック」で再認識された株式型インデックスファンドの注意点

2025/04/23 14:00

トランプ米大統領が打ち出す経済政策に世界の金融マーケットが振り回されています。 2024年まで好調に推移してきたグローバル株式マーケットも、米国の関税政策による景気減速懸念から調整しており、今後の政策の不透明感からマーケットの思惑が交錯し、変動率が高まっています。 日本の個人投資家の中にも想定外の株価の下落によって

トランプ米大統領が打ち出す経済政策に世界の金融マーケットが振り回されています。

2024年まで好調に推移してきたグローバル株式マーケットも、米国の関税政策による景気減速懸念から調整しており、今後の政策の不透明感からマーケットの思惑が交錯し、変動率が高まっています。

日本の個人投資家の中にも想定外の株価の下落によって含み損を抱えている人が増えています。

インデックスファンドの中身を確認する

私は金融資産の運用はインデックスファンドを使った投資を基本にすべきと考えています。インデックス運用アクティブ運用に比べコストを低く抑えることができ、運用成果も平均的には上回る可能性が高いと考えているからです。

しかし、どのインデックスに連動した投資を行うかに関しては、それぞれの投資家に合った方法を考えるべきだと思います。インデックス運用を実践しているにも関わらず、今回の株価の下落で想定以上の損失を被っている人は、自分が組み入れているインデックスファンドの中身の確認を行う必要があります。

「全世界株式型」「S&P500連動型」は分散効果が低い

例えば、個人投資家の間で人気となっている「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスへの連動を目指すインデックスファンド(以下、全世界株式型)」があります。1つのファンドで日本を含む先進国と新興国を含む世界中の株式に分散投資ができるのが人気の理由です。しかし、運用レポートでファンドの構成銘柄を見ると6割以上はアメリカ株で占められていることがわかります。

また、「S&P500指数に連動することを目標とするインデックスファンド(以下、S&P500指数連動型)」も2024年まで米国の株式市場が他国に比べて好調だったことから「全世界株式型」以上に人気がありました。こちらは米国の代表的な500銘柄に分散投資できるインデックスファンドです。銘柄分散はされていますが、米国株が100%ですから1つの国に銘柄が偏りすぎという問題があります。

株価下落のリスクオフ時には円高も加速する

さらに「全世界株式型」は約95%が外貨建て、「S&P500指数連動型」になると100%が米ドルへの投資となります。

株式市場が調整局面に入ると、投資家がリスクオフモードに入り、為替に関しては円高が進みやすくなります。つまり、株安と米ドル安・円高の相乗効果によって日本人には投資のダメージが大きくなってしまう問題があるのです。

そのため、これらの人気ファンドを単体で保有して投資をするのはお勧めできません。他のインデックスファンドなどと組み合わせてリスクコントロールを行うべきです。

株式型インデックスファンドは長期投資商品

株式型インデックスファンドには「全世界株式型」や「S&P500指数連動型」だけではなく、日本株、日本株以外の先進国株、新興国株など、それぞれのインデックス(指数)に投資できるインデックスファンドもあります。

どの株式型ファンドにも共通するのは株式市場の変動による価格変動が大きいことです。長期では経済成長からの恩恵で価格上昇するとしても、短期では今回のように思ったような投資成果が得られないことが珍しくありません。

リスクを引き下げるためには、株式型の資産だけではなく債券や不動産のようなインカム型の資産も組み合わせ、分散投資によってポートフォリオ全体の変動率を抑えることが大切です。

シニアになれば株式型資産の比率を引き下げる

個人投資家の中には、50代60代になっても、株式を中心とした資産運用を行っている人が少なくありません。私は年齢が上がるとともに、株式型資産の比率を引き下げ、安定したインカム収入が得られる資産の比率を高めていく運用を行う必要があると考えます。

目安となるのが、株式型資産の比率を「100-年齢」とする方法です。例えば、60歳であれば40%、70歳になれば30%というように引き下げていきます。

インデックス投資は積立で続ける

インデックスファンドによる資産運用のもう一つのポイントは投資のタイミングです。まとまった金額を一気に投資するのではなく、積み立てを使うことによって「ドルコスト平均法」と呼ばれる高値掴みを防ぐ投資が可能になります。

長期分散投資は資産運用の基本です。それにインデックス運用を取り入れ、運用のコストを引き下げる。さらに積み立てによって投資タイミングの分散も行う。このような投資の大原則を抑えた上で、自分に合ったインデックスファンドの組み合わせを考えていくことが、将来後悔しない資産運用につながると思います。

インデックスファンドは優れた投資商品ですが、活用しても思った通りの成果が出ていない人は、その使い方についてもう一度見直しをしてみましょう。

適切なファンドを適切に使ってインデックス投資を続けることが、長期の運用成果につながる。この大原則はこれからもずっと変わりません。

内藤 忍 株式会社資産デザイン研究所 代表取締役