基本を押さえることの重要性

2025/04/25 07:00

2009年、バートン・G・マルキール氏の講演のメモより 先日、2009年5月に行われた『不透明な時代に勝つための投資術』というセミナーに参加したときのメモを読み返す機会がありました(バンガード・グループ主催)。その時に基調講演をされていたのが『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者で、当時プリンストン大学経済学部長

2009年、バートン・G・マルキール氏の講演のメモより

先日、2009年5月に行われた『不透明な時代に勝つための投資術』というセミナーに参加したときのメモを読み返す機会がありました(バンガード・グループ主催)。その時に基調講演をされていたのが『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者で、当時プリンストン大学経済学部長だった、バートン・G・マルキール氏でした。

講演が行われたのは2008年9月に米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界的に起こった金融危機(リーマン・ショック)の翌年のこと。そのため、講演の前半では金融危機が起きた背景と短期・中期的な経済見通し、そして、後半では投資戦略についてお話をしていました。投資戦略では、コストの重要性やコア・サテライト・アプローチの潜在的な優位性について語ってくれました。具体的には、

・もっとも確信を持って言えるのは投信の手数料が低ければ低いほど、投資家のリターンは高くなる
・コストのもっとも低い四分位とコストのもっとも高い四分位を比較したときのコスト控除後のリターンを比較すると、低コストの第1四分位の年率リターンが高い
・2008年12月31日までの各期間(1年、3年、5年、10年、20年)をみても、3分の2はインデックスファンドの勝ち(米国大型株ファンドの例)

――などを、データを交えながら淡々と説明してくださいました。

その中で、一番印象に残っているのは「(投資資金の)100%をインデックスファンドにする必要はないし、私はそうしていません。でも、少なくともコアはインデックス戦略をとってほしい。そうすることで、個別株やアクティブファンドを買ってもリスクを下げることができるからだ」という点です。

2025年、波乱相場で投資を続けることが不安になってしまった人へ

2025年はトランプ米大統領の関税政策が世界を動揺させています。NISA口座で投資信託の積立を始めたり、上場株式に投資をし始めたり、で不安だという方も多いかもしれません。

当時の金融危機下でも「分散投資をしても無駄である」とか、「長期投資に意味はあるのか」といった様々な意見が錯そうし、投資を続けることが不安になってしまった人も多かったようです。その一方で、相場が回復してくると、一部の地域や銘柄に多額の資金を集中投資してしまう人も見受けられます。

今回、講演メモを見返して、改めて思ったのは、愚直に基本を押さえること、それを実行し続けることの重要性です。

・投資する目的は何か
・投資できる期間はどの程度か

上記を考えた上で、
・金融資産全体のうち、投資に充てている割合・金額は適正か(リスクを取りすぎていないか)
・分散投資はできているか
・コアとサテライトで考えているか(資産形成の中核はインデックスファンドで行い、サテライト部分でより高いリターンをめざす、あるいは相関性が低い資産を組み込む)

当たり前のことで、ついつい忘れがちですが、たまにはこうした基本に立ち戻ることも大切なのだと思います。もちろん、これらの基本を押さえた上で、すべてインデックスファンドで運用する、リスクを理解した上でアクティブ投信・個別株だけに投資することなどは自由です。

竹川 美奈子 LIFE MAP合同会社代表/ファイナンシャル・ジャーナリスト