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【米国株】ナスダック100は6%超の急伸、移行期に入る米国市場で投資チャンスを再考

2025/04/28 10:50

先週(4月21日週)の米国株式市場は、ここ数週間で最も力強い上昇を見せました。主要指数が大きく反発し、なかでもナスダック100は週間で6.43%上昇、S&P500も4.59%の上昇と、久しぶりに明るいムードが広がる週となりました。株価の反発は、テクノロジー株の好決算、関税政策に対する一部緩和のシグナル、そして政

先週(4月21日週)の米国株式市場は、ここ数週間で最も力強い上昇を見せました。主要指数が大きく反発し、なかでもナスダック100は週間で6.43%上昇、S&P500も4.59%の上昇と、久しぶりに明るいムードが広がる週となりました。株価の反発は、テクノロジー株の好決算、関税政策に対する一部緩和のシグナル、そして政治リスクの後退が複合的に作用した結果といえます。

牽引役はやはり「マグニフィセント・セブン」、テスラ[TSLA]は決算発表後に株価上昇

相場上昇を牽引したのは、やはりアップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、エヌビディア[NVDA]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、アルファベット[GOOGL]、メタ・プラットフォームズ[META]、テスラ[TSLA]といった超大型のテクノロジー銘柄です。

これらはナスダックやS&P500におけるウエイトが非常に大きいため、株価が持ち直すことで指数全体を強く押し上げる構造となっています。

個別では、テスラは2025年第1四半期決算を発表しました。1株当たり利益(EPS)は27セントと、ウォール街予想の36セントを大きく下回る結果となり、成長減速への懸念が再燃しました。一方で、株価は決算発表後の4月22日(火)の引けから25日(金)の引けまでで19.7%上昇し、ナスダックを牽引したのです。

この背景には、CEOであるイーロン・マスク氏が、決算発表後のカンファレンスコールで、5月以降はワシントンD.C.での政治関連業務(いわゆるDOGE=政府効率部門)への関与を減らし、テスラ本業により集中すると述べたことが影響しています。この発言は、近年のマスク氏の「分身経営」に懐疑的だった投資家にとって朗報と受け止められ、市場心理の改善につながりました。

さらに、同社が6月にテキサス州で自動運転型タクシー(ロボタクシー)サービスを開始し、2026年には新型「サイバーキャブ」の量産を予定している点も影響しているでしょう。これにより、テスラは従来の「車を売る」モデルから「移動サービスを提供する」モデルへの転換を進めており、長期的な成長ストーリーを再構築しようとしています。

決算発表ではアルファベット[GOOGL]の大型投資に注目、インテル[INTC]はやや失望感

アルファベットが発表した1~3月期の決算では、広告収入およびクラウド事業の両方が市場予想を上回りました。今回の決算での注目ポイントは、「2025年の設備投資額が750億ドルに達する見込み」と発表したことです。これは前年比で二桁成長となる大型投資であり、特にデータセンター関連銘柄にとってポジティブなシグナルとなります。

エヌビディアは5月末に決算を予定していますが、その売上げ予想はここ数ヶ月でやや下方修正されています。しかし、今回のアルファベットの発表は、エヌビディアにとって「上振れ余地あり」という前向きな見方を後押ししています。

対照的に、インテル[INTC]は今後のガイダンスに弱さが見られ、やや失望を誘いましたが、他の好決算銘柄が相場全体を支えたことで、マクロの地合いに水を差すような展開にはなりませんでした。

さらに、サービスナウ[NOW]やチャーター・コミュニケーションズ[CHTR]といったテクノロジー系や通信セクターの企業にも好決算を受けた買いが集まりました。これにより、テクノロジー株中心に「決算ドリブン」でのリスクオン姿勢が復活した格好です。

政治リスク後退とテクニカル要因も追い風に

先週(4月21日週)の前半は、トランプ米大統領によるパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の交代に関する発言や、中国に対する関税をめぐる強硬姿勢が相次いだことで、一時的にマーケットが動揺する場面も見られました。しかし、その後ホワイトハウスやFRB関係者からの火消しとも取れる発言が相次ぎ、過度な懸念は後退しました。トランプ氏が中国への関税について「交渉が進めば145%の関税にはならない」と発言軟化させたことも、マーケットの安心感につながりました。

また、テクニカル的にも、S&P500が調整局面(直近高値から10%下落)を脱し、ナスダックが50日移動平均線に近づくなど、節目の回復が買いを後押しした格好です。

さらに、Bespokeによると、4月22日にはナスダック100構成銘柄すべてが上昇するという「全面高」状態となり、これは2001年以降わずか8回しか観測されていない稀な現象です。過去の事例では、6ヶ月後にナスダックはすべて10%以上上昇、1年後にはすべて20%以上上昇しており、統計的にはポジティブな兆しと受け取られています。

年初来では依然マイナス圏、今週(4月28日週)は重要イベントが目白押し

このようにテクノロジー株の上昇が全体のリスク選好を後押ししたことで、一時的に安心感が広がりました。しかし、年初来のリターンで見ると、主要指数や多くのファンドは依然としてマイナス圏にあります。市場が完全に回復基調に入ったと判断するのはまだ早計であり、今後発表される企業決算や経済指標次第では再び波乱含みとなる可能性も否めません。

今週は、マイクロソフト、メタ、アマゾン、アップルといった「マグニフィセント・セブン※」のうち4社の決算が控えており、市場全体に与えるインパクトは非常に大きいとみられます。また、米国の1-3月期GDP速報値、PCEインフレ指数、雇用統計など、政策判断に直結する重要なマクロ指標も複数発表されます。

政策面では、関税交渉の進展や、FRBの次回(5月7日)FOMC(米連邦公開市場委員会)をにらんだ発言も注視されており、引き続き地政学・金融政策・企業収益が交錯する「三つ巴」の環境下で、市場は方向感を模索する展開が続きそうです。

現在は株価上昇への「移行期」、時間分散を意識した投資スタンスが有効

現在の米国株市場は、株価上昇への「移行期」にあると考えられます。すなわち、市場が不安定さや混乱を伴った局面を経て、徐々に安定を取り戻しながら、上昇基調へと転じつつある過程に位置しているということです。

そのため、今回の調整局面においても、時間分散を意識した投資スタンスは極めて有効であると再度強調したいと思います。特に、S&P500、ナスダック100、そして「マグニフィセント・セブン」と称される超大型ハイテク銘柄群の長期的な成長は続くと考えています。今週(4月28日週)の決算発表次第では再びボラティリティが高まる可能性もあるものの、今後の成長期待と収益性の観点から、長期的な投資機会として引き続き注目に値します。

(※)マグニフィセント7:アップル[AAPL]、マイクロソフト[MSFT]、アルファベット[GOOGL]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、メタ・プラットフォームズ[META]、エヌビディア[NVDA]、テスラ[TSLA]

岡元 兵八郎 マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー