<前編のまとめ>
学歴に強いこだわりを持つ親のもとで育った加藤美沙子さん(仮名・40代)。
彼女は医学部に合格するほどの頭脳を持っていました。経済的な理由や「婚期が遅れるかもしれない」という両親の心配によって、結局、入学は断念します。
40代になり、いざ婚活を始めると、両親は結婚相手には医師を要望。美沙子さん自身も医学部に受かるぐらいだから、相手も同じぐらい頭のいい医師がいいのではないかと思い始めます。
●前編:娘は医学部に受かったから、結婚相手も“おなじくらい頭のいい”医者?…足かせとなる親の“学歴フィルター”
難航する医師との交際
美沙子さんは「医師と結婚したい」という希望を抱いて婚活を続けていましたが、現実にはなかなかうまくいきませんでした。
そもそも結婚相談所では、医師の人気は高く、また医師は結婚相手にも同じ医師を求める傾向があります。
さらに、美沙子さんは相手に理想を投影しすぎてしまう部分もありました。自分がなれなかった医師になった人だからさぞ優れているのだろうと期待が高すぎたのです。そのため相手の言動に少しでも品がないと、すぐに幻滅してしまいます。
条件を厳しくすると、紹介そのものが限られてしまうという面もありました。結婚相手を「学歴フィルター」を通して見てしまうと、本来なら相性の良いはずの相手ともすれ違ってしまいます。
母親が結婚相手に注文をつけすぎる
別のケースも紹介します。
慶應義塾大学を卒業し、大手企業に勤める高橋美江さん(仮名・36歳)の結婚相手に対して強くこだわったのは、美江さん本人ではなく母親でした。
父親は高学歴で、大手企業でキャリアを築いてきた人物です。母親は高卒ですが、「学歴のある夫と結婚できた」と感じており、娘にも同じような“成功”を望んでいました。
「東大や京大なら文句なし。少なくとも慶應出身でなければ認めない」
そう母親から言われたそうです。
36歳の美江さんは魅力的な女性ですが、学歴で相手を絞ると対象が一気に少なくなります。本人がこだわっていなくても、親が学歴を重視すると話が進みません。母親にとって、娘は自慢の存在であり、同時に「自分の分身」でもあります。
大学に進学しなかった世代の母親にとって、子どもの学歴は一種の“挽回”手段です。さらに、周囲のママ友からも学歴や職業、結婚相手のスペックを聞く機会があり、静かなマウント合戦が繰り広げられています。
「うちは次女が東大卒の銀行員と結婚してニューヨークに転勤しているの」
「私は医者と結婚して孫が3人。長女の夫は国家公務員」
このような情報の中で、娘が高学歴にもかかわらず、未婚であることは、“負け”と感じられてしまうのです。
親の希望を叶えようとして婚期が遅れることも
筆者の経験では、親御さんのこだわりが強い家庭ほど、子どもの結婚が遅れがちです。
特に子どもが一人っ子だったり、少人数兄弟の場合は親子の関係が密で、子どもは親の希望を叶えることを「親孝行」だと考える傾向があります。
そのため、自分が相手を気に入っても親が反対すればあきらめてしまう――そんなケースも少なくありません。しかも、親が「年収1000万円以上で高学歴」という条件を求めた途端、実際に届く申し込みは、年収500万円台で地方私大卒など、親の“理想スペック”とはかけ離れていることも少なくありません。
一方で、親が「結婚相手にこだわらない」と決めている家庭では、トントン拍子で話が進み、年収3000万円の都内開業医や、会社経営を継ぐ資産家の息子と結ばれるケースもありました。
なぜそのような逆転現象が起こるのか──それは“神のみぞ知る”領域かもしれません。
いずれにしても、婚活において親のこだわりはときに大きな壁となります。その壁を乗り越えるには、親の期待と自分の幸せの間で、どう折り合いをつけるかが鍵になるのです。
佐竹 悦子/株式会社インフィニ 結婚相談所インフィニ・青山結婚予備校 代表
素敵な方とのご縁をつなぐ結婚相談所インフィニ青山結婚予備校を運営し、成婚率№1・顧客満足度№1を獲得。24年以上、婚活最前線で3万人とカウンセリングを行い成婚に導く。 著書に『佐竹悦子先生の「結婚力」養成講座』、メディア実績に『ノンストップ!』『The Japan Times』『週刊ダイヤモンド』などがある。