
※本記事は筆者の実体験をもとに制作されています。応急処置や備えの内容はあくまで一例であり、すべてのケースに当てはまるとは限りません。 安全で楽しいキャンプのために、ご自身の体調・環境に合わせた備えと判断をお願いします。
まさかキャンプ中に大怪我するなんて…!
明るく爽やかな朝が暗転

いつものように徒歩ソロキャンプを楽しんでいた筆者。この日、宿泊者は私ひとりだけ。抜けるような青空のもと、広いキャンプ場を独り占めです。
それがのちのち仇となろうとは、このときは何も考えていませんでした。

早朝のキャンプ場。気分よく目覚め、朝食の準備を始めました。
クッカーに湯を沸かし、パックご飯を温めます。せっかくだから、調理シーンを記録しておこうかな。チェアから立ちあがって撮影ポジションを探し、そして……
※このあと怪我の描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
ペグにつまづき転倒→大火傷に

この写真は、家族が撤収時に撮影したものです
ペグに足先が引っかかって前のめりに転倒! 気がつくとキャンプテーブルの上に倒れ込んでいました。
テーブルはひしゃげ、クッカーもバーナーもあちこちに吹っ飛んでいます。急いでバーナーを消火。周囲のものに引火したり、もしガス漏れが起きていたら……と考えると、背筋が凍る思いでした。
あたりを見回して恐ろしさに冷や汗をかいていたところ、次第に首から顔のあたりがヒリヒリと痛み出しました。どうやら顔面にクッカーの熱湯を浴びてしまったようです。

キャンプ歴40年余りで、正直こんな大怪我をしたのは初めてのこと。
自分で応急処置→救急車で病院へ向かう事態になりました。この経験の際に、実施してよかった応急処置、“事前に備えておいてよかった”と思えた道具をご紹介します。
万が一のときのために、普段のキャンプからファーストエイドキットを準備しておくことの大切さを実感してもらえますと幸いです。
すぐに自身で応急処置を
ペグにつまづいて派手に転倒し、沸騰しているお湯を被ってしまった筆者。
倒れたときの記憶が一瞬すっ飛んでいるのですが、まずは怪我をしてから帰宅するまでに行ったことを、時系列に沿ってお話ししましょう。
怪我に気がつき、すぐに実施したのは3つの応急処置です。
※本記事は筆者の実体験に基づくものであり、医学的アドバイスを目的とするものではありません。怪我の程度によっては、自己判断せず速やかに専門医の診察を受けてください。
1.「火傷には水」炊事場で冷やす

かつてガールスカウトで習った救急法を思い出し、熱湯をかぶったと思われる箇所を冷やすため炊事場へ走りました。
確か熱傷の冷却は15分以上が推奨だったはず……。頭、首、肩先にザブザブと水をかけること約30分。
参考:こちら
2.切り傷は「直接圧迫止血法」で止血

転倒したとき、アルミ製のテーブルの縁で指先を切ってしまいました。こちらもかつて教わった「直接圧迫止血法」で出血を抑えます。
「直接圧迫止血法」とは、出血箇所の上にガーゼなどを当てて強めに圧迫し、血管からの出血を抑制するもの。タオルなど厚みのある布だと血液を吸ってしまうため、薄くて平たい布を重ねて行うのが良いとされています。
たまたま首に掛けていた薄手のサウナ用「MOKUタオル」が役に立ちました。
参考:こちら
3.足首の捻挫に鎮痛ゲルを

出典:PIXTA
よくないことは重なるもの。火傷を冷やすため急いで炊事場に向かう途中、焦って地面の穴に足を取られ、ここでも転倒。足首をひどく捻ってしまいました。
本来応急処置としては、患部を冷やして安静にするのがいいとされています。筆者は、ファーストエイドキットに入れていた「鎮痛ゲル」を患部に塗りました。火傷の状態がとくに酷かったので急いで次の対応へ。
参考:こちら
救急車で病院へ
「火傷・出血・捻挫」これは119番だ!

出典:PIXTA
怪我が重なり、素人の応急処置だけではどうにもならんと判断。朝早い時間だったためキャンプ場の管理棟も開いておらず、宿泊者は自分だけの孤立無援。自力で救急車を呼ぶことにしました。
119番のオペレーターは「火事ですか、救急ですか?」と聞いてきます。【救急】であることを告げ、名前、年齢、性別と、怪我の状況、現在地を簡潔に伝えました。
オペレーターが「15分ほどでキャンプ場に到着します、最寄りの病院へ向かえると思います。」と言ってくださり、なんと心強かったことでしょう。
病院へ持って行ったもの
※保険証・マイナンバーカード・お薬手帳は必須

炊事場から一旦テントに戻り、持ち出すものを選びました。
病院に持参したのは、財布、保険証、マイナンバーカード、お薬手帳、スマホ、モバイルバッテリー、ケーブル、タオル、着替えのTシャツです。
お薬手帳に自分の情報を書いておこう

キャンプにはいつもお薬手帳を携行しています。できれば、緊急連絡先・血液型・既往症・アレルギー歴・薬の副作用歴など、自分の情報も記入しておいてください。
もしも意識が不確実の状態で病院に運ばれる際、このメモが代わりにあなたのことを説明してくれます。
残りの貴重品はキャリーケースに入れて施錠

筆者のキャンプスタイルは公共交通機関利用の徒歩ソロがメイン。着替え等はバックパックに、重たい荷物はキャリーケースに入れて運んでいます。
このとき、 愛用している鍵のかかるキャリーケース(上記写真のもの)が威力を発揮。一眼レフカメラやタブレット端末などの貴重品は盗難防止のためキャリーケースに放り込み、施錠しました。
ちょうど出勤してきた管理人さんにキャリーケースごとお預けし、救急車で病院へと向かいました。
救急外来で処置を受ける

出典:PIXTA
搬送された病院で火傷と怪我の手当てを受けました。入院の必要はなく、帰宅して地元のかかりつけ医に通院との指示でした。
家族に迎えにきてもらう

キャンプ場から自宅までは電車を乗り継いで3時間以上かかります。火傷と怪我のうえ、自力で荷物を担いで帰るのはとうてい無理。病院から家族に電話し、クルマで迎えにきてもらいました。
とっ散らかったままのキャンプ道具を車内に放り込み、管理人さんに預かっていただいたキャリーケースを受け取りお礼を言って、キャンプ場をあとにしました。
今回、たまたま家族に連絡がつき迎えに来てもらえましたが、単独行動ではこうした事態も想定しておく必要があります。
ソロキャンプへ向かう場合、管理人さんが24時間常駐のキャンプ場、自宅からそんなに遠方ではない場所を選ぶ……そういった面も「安全なソロキャンプ」を楽しむ上で大切かもしれません。
役に立った「ファーストエイドキット」などの持ち物
怪我をした筆者ですが、その後キャンプは少しお休みし療養期間をもうけ、今では火傷の跡もなくなり完治しています。
今振り返ると、いつも念のためキャンプに携行していた「ファーストエイドキット」が役に立ったと思います。一例として、筆者がいつも持ち歩いているものをご紹介します。
いつものキットはコレ

シートゥーサミットのファーストエイドバッグは容量1L、ロールトップ式の防水タイプです。明るいオレンジ色で、薄暗いところや荷物の中でもよく目立ち、透明な窓があって中が見やすいのが◎。
ファーストエイド ドライバッグ 1Lシートゥーサミット
バッグの中の道具一式

ざっくりご紹介すると①常備薬、②外傷手当て用、③虫刺され用、④湿布薬、⑤裁縫セット、⑥耳栓、これがいつものラインナップです。
今回持っていて助かった3つの道具はコレ
その1|外傷手当て用品

指先の切り傷は、消毒液とアルコール消毒綿で消毒し、絆創膏で保護しました。ハサミは止血用にMOKUタオルを切るときに使用。小型のハサミを救急セットに入れておくと、急なときに切る道具を探し回らなくて済みます。
液体絆創膏の「ぬりバン」は、指先などの小さな傷に塗り、皮膜を作って保護してくれます。絆創膏が貼りにくい場所でも簡単に手当てができて重宝です。
その2|湿布薬

救急車を待つ間、地面の穴にはまって捻挫した足首に急いで鎮痛ゲルを塗りました。応急的に患部の手当てができ、持っていてよかったです。
重たいバックパックを担いでの徒歩ソロ。普段、湿布などの経皮鎮痛消炎剤は、夜寝るときに疲れのたまった足腰に貼っています。関節などには塗りやすいゲル状の鎮痛消炎剤がおすすめ。
その3|MOKUタオル

指先の怪我は、このタオルを切り裂いて傷口を押さえました。
柔らかな風合いの「MOKU」タオルは綿100%製。サウナ用に開発されたものですが、水や汗をサッと拭うのに適しており、薄手なのですぐに乾いて実にキャンプ向きです。
MOKU フェイスタオルコンテックス
念のため持ち歩いているもの
今回役に立ったもの以外に、いつも持ち歩いているものは……
常備薬

鎮痛・解熱剤、下痢止めと整腸剤、風邪薬等の漢方薬は体質に合ったものを選んでいます。
市販薬の使用期限は未開封の場合約3年。チャック袋にはセットした時期を記入し、入れ替えの目安に。
虫刺されの薬

虫刺されの毒を吸い出す「ポイズンリムーバー」、この処置があるかないかで後々の治りが全然違います。
かゆみ止めは効果の高いステロイド剤が含まれているものと、皮膚科で処方してもらった副腎皮質ホルモン剤も持参。
筆者のホームグラウンドの千葉はヤマビルが出没しやすいため、ヒル除けのスプレーも持ち歩いています。
耳栓と裁縫セット

キャンプの夜を快適に過ごすために、ときどき必要になるのが耳栓。ホームセンターで工事用の遮音性の高いものを購入しています。
裁縫セットは衣類の補修のほか、針先を消毒してトゲ抜きに使うことも。
体験を経て、新たにソロキャンプに導入したもの
自分の医療情報を携行するリストバンド

このときの怪我を教訓に導入を決めたのは、「メディカル ID アナログバンド」です。バンドの中に、氏名、生年月日、血液型、緊急連絡先などを記した防水シートを内蔵。
緊急時、お薬手帳等がなくても、自分の情報を医療者に渡すことができます。
腕やバックパックに巻く

使い方は簡単。専用の防水シートに油性のペンで必要な情報を書き込んでバンドの中に差し込み、面ファスナーで腕や足首、バックパックに巻き付けておけばOK。
重量6gと軽量で、素材はポリプロピレン100%のため金属アレルギーの人でも装着可能。カラーも6色あり、ファッションアイテムとしても◎。
メディカルID アナログバンドクレ
書き換え用予備シート

健康状態の推移に合わせ、書き換え用の予備シート(2枚入り)も販売されています。
最近のスマホには緊急時に医療情報を自動で伝える機能がありますが、状況によっては発信が難しいときも。このようなアナログの伝達方法もいざというときに有効な手段です。
※個人情報なので紛失には十分注意してください
メディカルID 予備シートクレ
保険加入も助かりました
損保会社の「傷害保険」、生協の「コープ共済」

出典:PIXTA
最後にファーストエイドに加え、もうひとつ役に立ったのは「保険」です。調べてみると、家族で入っている「傷害保険」と、個人で加入している「コープ共済」から、怪我の通院について保険金・共済金が支払われることがわかりました。
火傷の治療には数ヶ月かかる見込みだったので、金銭的にとても助かりました。
アウトドア保険も

出典:PIXTA
上記以外にも、キャンプに行く前にはその都度、掛け捨ての「アウトドア保険」等に加入するようにしています。
携行品の紛失・破損補償、個人賠償責任保険(1億円〜)が付いているものもあります。強風でテントが煽られ、飛んだペグがもとで他人のテントを傷つけたなどというときのためにも安心ですよ。気になる方は調べてみてください。
「安全」への備えは、ビギナーも経験者も同じ!

今回肝に銘じたのは、「焚き火・調理中など火を使っているときは不用意にその場を動かない」 ことです。立ち歩いたり、写真を撮ろうとして、思わぬ怪我を負ってしまうのを身をもって体験しました。
大昔に習った救急法も、かろうじて思い出せたので何とかなりましたが、こういった知識を日々アップデートすることも大切だと痛感。また、急ぎ治療を受ける必要が生じたとき、連絡先や必要な医療情報をいかに的確に第三者に伝えるか、これも重要なことです。
筆者の手痛い失敗談が、みなさんのキャンプライフの安心に少しでも役立てば幸いです。