田口れん太さんのこれまでのご経歴ついて、簡単にご教示いただけますでしょうか。
マーケットストラテジスト、株式市場の水先案内人です。
機関投資家向け日本株営業担当として25年超の経験をもちます。1988年に早稲田大学を卒業しました。1990年より大和証券ジュネーブ支店、UBS証券、メリルリンチ証券、バークレイズ証券などに所属し、
機関投資家や
ヘッジファンドの
ファンドマネージャーから高い評価を得ていました。2006年、アジアマネー誌にて日本株ベストセールス1位となりました。2015年よりみずほ証券に所属し、個人投資家向け株式講演、YouTubeチャンネル出演などに従事。わかりやすい講義が個人投資家より人気を集めています。2023年に独立をし、現在は個人投資家向けに株式講演を行っており、カブの被りものを被って講演するスタイルが人気を博しています。2018年より日本証券新聞にて投資コラム「私の尻馬投資法」を連載中です。
ご講演をされる際にはカブの被りものを被っていらっしゃるとのことですが、こちらの被りものを被ろうと思ったきっかけ・理由は何かございましたか。
株のことを真剣に考えていることをアピールしたかったためです。株になりきろうと思ったのですが、株になりきるのは難しく、野菜のカブに着地しました。講演に参加していただく方に楽しんでいただこうとも考えて、カブをかぶるようになりました。
4月18日にご出版された『投資の超プロが教える! カブ先生の「銘柄選び」の法則』について、書籍の概要や特徴などを簡単に教えていただけますでしょうか。
長年にわたり、欧米の運用会社や
ヘッジファンド、アクティビストなど、まさに「プロ中のプロ」の投資家たちにアドバイスを提供してきました。そんな第一線で培った視点を、誰にでも分かりやすく、すぐに使えるかたちでまとめました。特にフォーカスしているのが、「どの銘柄を」「いつ買うか」という、すべての投資家が悩むテーマです。本書では、株価評価方法の基本である次の4つのバリエーションを軸に、自分で投資判断できる力を身につける方法を丁寧に解説します。
さらには、ネット証券の活用法、(著者が実践している)暴落回避法、
アナリストレポートの読み方、新
NISA攻略法まで、実践に即した内容を幅広くカバーしています。
本書を執筆されることになったきっかけ・経緯などをご教示いただけますでしょうか。
個人投資家向けの株式講演を行うようになってから、多くの個人投資家の方が
PBR、
ROE、株式益
利回りなど基本的な株の評価方法を知らないことに気づきました。私たちは、野菜のカブを1つ100円から200円で買います。決して、野菜のカブを1つ1万円や10万円で買うことはありません。それは常識的な値段を知っているからで、知らず知らずのうちにカブの評価方法を身に着けています。投資の方の株はどうでしょうか? 平気で1株10万円とか100万円とか、法外な値段で、しかも喜んで買ったりします。1株1000円や500円に値下がりすれば、本来ならば「安くなった。うれしい」となるはずが「大暴落」でこの世の終わりのような反応です。そのような反応になるのは一般的な株の評価方法が身についていないからだと考えます。そういった問題点や課題を感じて、この本を書きました。
本書では「ROE」「配当利回り」「益利回り」「PBR」の4指標を軸に解説をされているとのことですが、こちらの4指標を軸に解説・執筆されたのには、何か理由があったのでしょうか。
本当に基礎的な株価評価方法だからです。これらはアメリカならば、高校や大学の授業に組み込まれている内容です。株式投資の九九とか四則計算みたいなものです。日本では九九や四則計算は必ず学びますが、残念ながら株式の評価方法を学校で習うことはありません。基本的な評価方法を知らぬまま、株式投資を始める人があまりにも多くいます。その問題を解決すべきだと考えて、基礎的な4つの指標を取り上げました。そしてこの4つの評価方法を知れば、投資の理解が深まります。例えば東証が上場企業に対して、低
PBRの改善をするように要請しています。その低
PBRを改善するには
ROEを高めることが必要です。さらに
配当金などの株主還元を増やすことが
ROE改善には効果があるので、
配当利回りや、益
利回りに注目した投資はリターンが高くなっています。さらに物価上昇が続いているので、日本の10年債などの
利回りも上昇しています。
利回りが上昇しているので、益
利回りと10年債
利回りとの比較も大切になっています。株式投資の九九や四則計算を学び、それによって株式投資の理解を深めていただくために取り上げました。
本書は「自分で銘柄を選べるようになること」がゴールとして設定されているかと思いますが、銘柄選定において、特に投資初心者が陥りがちな“落とし穴”は何かありますか。また、投資に慣れ始めた方だからこそ陥りがちな“落とし穴”は何かありますか。
バリュエーションを見ずに人気の銘柄に跳びついてしまう。そして幸運にも株価が上がるとすぐに利益を確定してしまう。一方で、下がった場合には、下がった銘柄をストップロスせずに保有し続け、資金の効率を悪化させてしまう。ご自分で判断しない事例も多くあるようです。特に株を持っていない人の意見に左右されてしまう事例も多く、また証券会社の
アナリストの投資判断に従ってしまうのも良くないです。さらに、テレビに出てくる専門家の意見に従うことも良い方法ではありません。そういった投資のコツのようなことも本書で説明しています。
機関投資家・個人投資家と接してこられたご経験から見て、「成功する投資家」「勝てる投資家」に共通する考え方・意識・姿勢にはどのようなものがありましたか。
投資面では合理的な少数意見を持ち、コンセンサスを疑う人が多いです。また長期の視点を持ち、新鮮なトピックに関心を持つ傾向があります。投資以外の側面では楽観的で楽天的な明るいキャラの人が多く、健康意識が高くて、健康診断のデータを気にする方が多いです。年に2回以上健康診断を受ける方を複数知っています。
田口れん太さんにとって「投資」とはどのような存在でしょうか。
最近のSBIレオスの藤野さんがとても良い説明をしていたので、その引用です。藤野さんは「投資とは人を豊かにしてくれるもの」と定義されていました。投資する側も投資される側も豊かになる。そしてとても大切な点は、投資は金銭的に人を豊かにするだけでなくて、心も豊かにしていくものである点です。だから、心を豊かにしない投資は投資じゃない。投資をしていたら、夜も眠れなくなるなんてのは投資じゃない。私はこの意見に大賛成で、投資とは「人を豊かにしてくれるもの」だと思います。
本書を読んで株式投資を始めてみようと考える投資初心者の方も多いかと思います。そんな方々に、エールとして何かメッセージをいただけますでしょうか。
株式投資でサクサク儲けるなんてありません。短期間で1億円も現実的ではないです。本書はそういう本ではないです。でも「読んでみてよかった」と言う内容が満載です。ぜひお手元に一冊。そして本だけでなく、ほぼ毎日、私はXでつぶやいています。一緒に投資をがんばりましょう。