滞納金は1億円超、管理会社も次々撤退…バブルの夢が崩れたリゾートマンションの現実

2025/05/15 11:00

スキーリゾートとしてかつて脚光を浴びた新潟・湯沢町のリゾートマンション群。しかし、バブルの終焉とともに資産価値は大きく下落しました。 購入当時は「夢のセカンドハウス」だった物件が、いまや処分にお金がかかる“負動産”となり、所有者を苦しめています。 なぜこうした事態に陥ったのでしょうか。現地取材を重ねる吉川祐介氏が、

スキーリゾートとしてかつて脚光を浴びた新潟・湯沢町のリゾートマンション群。しかし、バブルの終焉とともに資産価値は大きく下落しました。

購入当時は「夢のセカンドハウス」だった物件が、いまや処分にお金がかかる“負動産”となり、所有者を苦しめています。

なぜこうした事態に陥ったのでしょうか。現地取材を重ねる吉川祐介氏が、リゾートマンションの今を伝えます。(全3回の1回目)

※本稿は、吉川祐介著『バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮』(角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

湯沢のリゾートマンション特有の問題点

本格的に不動産価格が低迷し始めた2000年代以降は、湯沢にとってまさに冬の時代であった。続出する管理費の滞納問題によって管理組合の財政は悪化し、中には1億円を超える累積滞納額を抱え込むほどの事態に陥ってしまったマンションもある。

バブル期に建築された湯沢のリゾートマンションは、スキー用品のロッカールームやコインランドリーはごく標準的な設備で、共同の温泉大浴場のほか、トレーニングルームや温水プール、レストランやラウンジなど、一般の民間マンションではあまり見られない共用設備を豊富に揃えているが、もちろんその分管理費は高額になる。

では、共用設備が少なくて管理費が安いマンションが有利かと言えば、そんな簡単な話でもない。

豪華な設備が当たり前となった湯沢においては、そうしたマンションはリゾート物件としての魅力が相対的に低い。管理費の負担を切り詰めてまでリゾートマンションを購入し所有しようという人は少ないので、設備の乏しいマンションも在庫が膨れる一方であった。

基本的に外部に広く公開する情報ではないので、各マンションの管理費滞納状況を記録した資料などはないのだが、僕が湯沢で取材したところによれば、管理費の額にかかわらず、多かれ少なかれどこのマンションも滞納の問題には頭を悩ませているという。

管理費滞納は価格にも反映

管理費の納入状況の悪化は、マンションの人気にも直結する。

一般的な不動産会社が仲介業者としてマンション販売に携わる場合、不動産会社は売買契約の締結時に、その物件の資産価値を左右する重要な問題点などについては「重要事項」として購入者に説明する義務がある。マンションの場合、運営に重大な支障を及ぼすほどの多額の未納管理費があれば、もちろん購入者にその旨説明しなくてはならない。

重要事項説明は契約締結時に行われるものだが、いずれ説明しなくてはならない話ということで、マンションの購入希望者の内見の時点で、管理組合の財政事情を明かしてしまう営業マンも存在する。

さすがに億単位の未納額を抱えたマンションの購入には二の足を踏むのが普通の感覚であろうから、管理費の納入状況が悪いマンションは引き合いが弱く成約率も低くなるだろう。その分、価格の下落が激しい。同じ程度の立地条件や築年数でも、それが価格面に明白に反映されてしまっているマンションもある。

管理会社も、マンションが建ったときから変わっていないマンションはあまりないようで、現在では地元の管理会社が管理しているところもある。

バブル期に湯沢町に参入してきたマンションデベロッパーは、首都圏でもその名をよく知られた大手が多かった。

分譲販売後、自社の関連企業でマンションの管理業務を行っていた大手事業者も、冷え込む湯沢のマンション市場と続出する未納問題によって採算性が悪化し、次々と撤退していく。あるデベロッパーの関係者によれば、今や大手管理会社にとって、リゾート部門は左前の事業で、言わば一種の「左遷先」とみなされているとのことだ。

湯沢の場合、その後釡として、地元で業務を行っていた不動産会社の管理部門が引き継いでいるが、大手管理会社の撤退は今も続いている。

こうした管理会社の変更は、リゾートマンションに限らず近年ではよく見られるが、湯沢町においては、以前は管理組合の判断で管理会社が変更されるケースが一般的だったものが、近年はむしろ、管理会社側から契約の解消を申し入れるケースも目立つようになってきた。

湯沢町の地元で営業する管理会社に話を聞いたところ、特に管理組合に熱心に営業を働きかけているというわけでもなく、何かしらの理由で元の管理会社との契約を解消した管理組合から管理契約の依頼が舞い込んだり、すでに管理契約を結んでいる別のマンションのオーナーからの紹介で、新たに管理契約を結ぶケースもあるという。

●第2回は【湯沢=“激安”は誤解? 駅チカと苗場でここまで違う、マンション相場の明暗】です。(5月16日に配信予定)

バブルリゾートの現在地 区分所有という迷宮

著者名 吉川 祐介

発行元  KADOKAWA

価格 1,100円(税込)
 

吉川 祐介/文筆家、YouTuber、ブロガー

1981年、静岡県生まれ。千葉県横芝光町在住。高校卒業後、新聞配達、バス運転手などをしながら暮らす。その後千葉に引っ越し、自身の家探しの過程で、70~90年代に投機目的で購入されたまま開発されていない「限界ニュータウン」の存在に気付く。2017年に始めたブログ「URBANSPRAWL 限界ニュータウン探訪記」が話題となり、22 年には初の著書『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』(太郎次郎社エディタス)を刊行。あわせてYouTubeチャンネル「資産価値ZERO 限界ニュータウン探訪記」も開設した。すでに100か所以上の限界ニュータウンの調査を行い、郊外の別荘地やリゾート地などにも調査範囲を拡大、各紙誌やウェブサイトへ寄稿している。ほかの著書に『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)がある。