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厚生年金「13万円増える」はウソ⁉ 解説動画を信じて社会保険加入の50歳パート女性、のちに判明した「驚きの年金額」

2025/05/16 12:00

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大も進み、扶養を外れて働くようになる人もいるでしょう。厚生年金に加入すると扶養に入ったままと比べ、どれくらい年金が多くなるか気になるところです。実際に年金を受け取る時期にならないといくら増えたかは分かりませんが、将来の見込額の計算方法は注意深く見たほうが良いかもしれません。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大も進み、扶養を外れて働くようになる人もいるでしょう。厚生年金に加入すると扶養に入ったままと比べ、どれくらい年金が多くなるか気になるところです。実際に年金を受け取る時期にならないといくら増えたかは分かりませんが、将来の見込額の計算方法は注意深く見たほうが良いかもしれません。

厚生年金に加入することになったパート女性

間もなく50歳を迎える智美さん(仮名)は、結婚して以降、夫・敦さん(57歳)の扶養に入ってパート勤務を続けていましたが、勤務先よりフルタイムに近い勤務への転換と社会保険の加入を打診されていました。

今の勤務先でとりあえず60歳まで働こうと考えている智美さん。勤務条件が変わると、月給は交通費込みで20万円程度、厚生年金保険料は月額1万8300円となりそうで、扶養に入っていた場合と比べ、将来の年金がいくら多くなりそうか気になっています。

そんな中、ネットで年金に関する動画や記事を探しているうちに、ちょうど「標準報酬月額(月給)20万円で10年勤務すれば、20万円×5.481/1000×120月ですので、将来老齢厚生年金が13万1544円増えます!」という解説動画を見かけます。

「厚生年金に入ると、老齢厚生年金が13万円ちょっと増えるのか。厚生年金の保険料を掛けてもあまり増えないようだと入る気もなくしてしまうけど、まぁまぁかな」と考えた智美さんは、ちょうど50歳になったのを機に厚生年金に加入しました。

年金事務所で判明した「想定外」の計算結果

智美さんの厚生年金加入直後、智美さんより先に65歳を迎える敦さんは年金事務所に将来の年金の相談に行ってみたいとのことでした。これを聞いた智美さんは「私も50歳。せっかく年金に興味を持ったから年金事務所にも早めに相談してみよう」と、一緒に話を聞きに行くことになりました。

年金事務所の窓口で案内を受けた2人。まず、敦さんは自身の年金や、おおよその見込額についても確認することができました。一方、智美さんも「私、厚生年金に入ったばかりです。とりあえず10年間勤務しますけど、扶養に入っていた場合と比べて厚生年金が増えるはず」と職員に伝えます。これを聞いた職員は60歳になるまでの10年間・月給20万円で厚生年金に入った場合と入らなかった場合の見込額を試算しました。

すると両者の差から、厚生年金加入で12万2671円多くなる計算となりました。智美さん「あれ? 13万円以上は増えると聞いてたけど、年間9000円くらい少ないな……何で?」と思います。年間9000円の違いとなると、65歳から85歳まで年金を受けたとして、20年で合計18万円少ない計算になると悟ります。「18万円もあれば夫婦で1回国内旅行も行けるくらいの額なのに。どうして少ないの? ネットの動画で見た内容が間違いだったのかな……」と疑問に思います。

職員は「試算した額はこちらの通りとしか言えないのですが……」と、その金額の差についてよくは分からないようです。

ネットで見た条件と全く同じ条件なのに、なぜ金額に差が生じたのでしょうか。

●当初の想定していた金額よりも下がってしまった理由とは? 年金額を詳しく知る方法とともに、後編【「年金が思ったより少ない」50歳パート主婦が落胆…ネット情報を信じて厚生年金加入も、想定より年金額が下がったワケ】で詳しく解説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。

五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー

よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。