
2026年度後期(大阪制作)NHK連続テレビ小説『ブラッサム』の制作発表会見が5月29日に開催され、ヒロインを務める石橋静河、脚本の櫻井剛、制作統括の村山峻平が登壇した。
朝ドラ第115作目となる本作は、明治・大正・昭和を舞台に、作家・宇野千代の半生をモデルにした物語。主人公・葉野珠(はの・たま)は、小説を書きたいという幼き日の夢を諦めず、故郷の山口・岩国を飛び出し 魅力的な人々との出会いによって、夢を手繰り寄せ、激動の時代へと突き進んでいく。
主演を務める石橋は、「まさか自分が朝ドラのヒロインをやる日が来るとは思っていなかった」と率直な驚きを語りつつ、「“青天の霹靂”とはこのことかと。いまだに信じられなくて、でもこうしてたくさんの方の前に立って、やっと“これはドッキリじゃないんだな”と思えました」と喜びを明かした。
演じる葉野珠のモデルである宇野千代については、脚本が決まってから本やエッセイを読み漁る日々が続いているという。
「とても読み切れない量の作品を残されていますが、先日読んだ中で印象的だったのは、毎朝『今日の調子はいかがですか』と聞かれて、『最高です!』と答えていたというエピソード。入院中も『最高です』と言っていたそうで、その前向きさに心打たれました」
続けて石橋は、「私も、まずは『最高です!』から始めようかなと思って。毎朝『最高です!』と言ってから準備を始めるようにしています。ちなみに今の調子も、『最高です!』」と発声し、会場を沸かせた。
宇野千代といえば、文学だけでなく恋多き人生でも知られた人物。石橋はその点についても真摯に向き合っている様子を見せた。
「最初は『4回結婚されているんだ』とか、『そんなに恋をしていたんだ』というプロフィールに驚きました。でもエッセイなどを読んでいくうちに、すごくまっすぐな人だったんだとわかってきて。好きなものに一直線で、全力でぶつかっていく。その誠実さが宇野さんの魅力だと思います。人でも物でも、『好き』って思えることは、生きる力になる。それは私がコロナ禍で感じたことでもあります。好きな人がいるとか、猫がかわいいとか、そういう感情が次の日を生きる原動力になるんだと気づいたんです。その感覚は大事にして演じたいです」
長期間に及ぶ大阪での撮影を控え、「不安はいっぱいあります」としながらも、「まずは自分のペースで、自分にできることを丁寧にやっていきたい」と語った石橋。「自分は“座長タイプ”ではない」と自己分析する一方で、「途中から現場に入るのは本当に緊張する。だからこそ、リラックスできる空気を自分が作れたら」と、主演としての自覚ものぞかせた。
また、会見では過去に朝ドラヒロインを経験した役者たちとの交流についても語った。「杉咲花ちゃん(『おちょやん』主演)とはよく連絡を取っています。大阪の美味しいお店をたくさん知ってるので教えてほしいです。有村架純さん(『ひよっこ』主演)とは普段から仲良くさせていただいているので、どうやってこの大きな現場を乗り越えていくのか、根掘り葉掘り聞きたいです」と笑顔で語った。
制作統括の村山は石橋の起用理由について、「良い眼差しと、目が離せなくなる力強さ」が決め手だったと語る。「共感しにくいキャラクターが登場する場面でも、石橋さんならきっとその人を“見捨てない”。それがこの作品にはとても大事だと思いました」と語った。
脚本の櫻井も、「朝ドラのヒロインは一筋縄ではいかない」と語りつつ、「人生の浮き沈みの中で、少しでも“幸せが花咲く”ように、という願いをタイトルに込めました。石橋さんなら、それを丁寧に体現してくださると思います」と信頼を寄せた。
(文=石井達也)