三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投信売れ筋ランキングの2025年5月のトップ5は、「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」をトップに、「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「インベスコ 世界厳選株式オープン為替ヘッジなし(毎月決算型)」、「三菱UFJ インデックス225オープン」だった。日米を代表するインデックスファンドに加え、グローバル株式アクティブファンドがランクインしている。特に、3月まではトップ5に入っていなかった「インベスコ 世界厳選株式オープン為替ヘッジなし(毎月決算型)」が第4位に食い込んでいることが目を引く。

◆日米インデックスファンドの比較
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の売れ筋ランキングでトップに「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」が入り、第5位にも「三菱UFJ インデックス225オープン」が入っているのは、2025年になってからのパフォーマンスが国内株の方が良いためだろう。2024年12月末を起点とすると、2025年5月末時点で「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」はマイナス4.02%の水準にあり、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のマイナス9.55%を上回っている。着地点だけではなく、4月上旬の株価急落時、その後の戻り過程においても一貫して国内株インデックスファンドは米国株インデックスファンドを上回る成績だった。
米国株については2024年までの株価上昇によって「割高」が言われていたことに加え、今回の下落の要因が米国トランプ政権による関税政策であり、米国経済は関税の影響での輸入物価高によるインフレの再燃、金利引き下げ政策の先送りから景気後退に陥るのではないかという見方が強まっている。トランプ政権は大規模な減税政策の実施によって景気後退を回避する狙いだが、肝心の関税策の着地点が定まらないために、先行きが見通せない状況に陥っている。この先行きの不透明さが、米国株が一段の上昇へ向かうことを押しとどめている。ただ、足元で発表される四半期ベースの企業業績は堅調で、その業績が株価を下支えしている状況だ。
一方、国内でも米国の関税策の影響を受ける企業は少なくない。日本は24%の関税上乗せが発表されたままで交渉によって歩み寄ったという気配はなく、特に、例外なく25%の追加関税が発表された自動車や、追加関税が50%に引き上げられた鉄鋼・アルミニウムなどは深刻な影響を受けることになる。企業業績の下方修正等が予測されるような事態では日本株も決して良い投資環境にあるとはいえない。
ただ、米国や欧州の株価に対して日本株の出遅れ感が強いことは事実だ。米「S&P500」は2025年2月19日に付けた史上最高値6144ポイントに対し、5月末時点では5911ポイントとマイナス3.79%の水準にあり、6月6日には6000ポイントを回復した。ドイツ「DAX」は6月5日に史上最高値を更新。英「FTSE100」は2025年3月3日に付けた史上最高値8871ポイントに対し、5月末には8772ポイントとマイナス1.12%の水準にまで迫っている。
ところが、日経平均株価は2024年7月11日に付けた史上最高値4万2224円に対して5月末は3万7965円とマイナス10.09%という水準までしか戻っていない。欧米の株価が2025年になってから史上最高値を更新していることと比較しても大幅に出遅れている。米国の関税策によって企業業績等に不透明感があるとはいえ、最高値から10%ほども距離のある日本の株価は、現状では投資家の期待に十分応えているとは言い難い。今後の日本株には、欧米と同様の史上最高値更新の期待が強まるだろう。

◆分配型ファンドの魅力とは?
「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」は、日本を除く世界の株式上場企業の中から、「真の成長機会を発掘する」という考えのもとで、中小型株式にも積極的に投資する姿勢を持っている。「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース」のトータルリターンは2025年5月末時点の過去1年間で9.37%であり、これは同期間の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の4.77%を上回っている。あらかじめ基準価額の水準によって分配金額を決めている予想分配金は、基準価額が11000円以上12000円未満で1万口あたり200円、12000円以上13000円未満で300円、13000円以上で400円だが、同ファンドでは2025年になって、1月と2月が400円、3月が100円、5月に200円を分配した。合計で1100円の分配金を払い出している。
「インベスコ 世界厳選株式オープン為替ヘッジなし(毎月決算型)」は日本を含む世界の株式市場から「成長」「配当」「割安」の観点で「世界のベスト」といえるような銘柄を厳選して投資している。同ファンドの5月末時点のトータルリターンは過去1年間で6.80%と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の4.77%を上回っている。毎月決算型として安定的な分配金を払い出しており、2025年は毎月1万口当たり150円の分配金を継続している。5月末までに750円を払い出している。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の売れ筋アクティブファンドは、ともに毎月の分配をめざすファンドであり、このためNISA(少額投資非課税制度)の対象外のファンドとなっている。分配頻度が高いファンドについては、「たこ足分配」の批判があり、資産形成にはふさわしくないという理由でNISAの対象から外れているのだが、投資信託を購入する理由は「資産形成」がすべてではない。資産の有効活用を考えて「運用して増やしながら使う」という発想で購入している人もいる。
特に、年金暮らしの高齢者にとって、近年の物価高は日々の生活の圧迫要因となっている。資産から得られる収益金を安定的に取り崩して生活費にあてたいというニーズは小さくないだろう。2026年1月にも導入される計画の高齢者向けの「プラチナNISA」では毎月決算型のファンドも対象商品になる見通しだ。「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドDコース」や「インベスコ 世界厳選株式オープン為替ヘッジなし(毎月決算型)」のように安定した運用成績を残すファンドの需要は一段と高まることになるだろう。

執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。